マウスのクリック音や押し込み式百円ライターの音やアメリカンクラッカーの音などなど、「カチッ」とくる音は耳心地がいい。湿気がなく歯切れがよい。曖昧さがなくて明瞭とも言えるだろう。

 この「カチッ」を菓子パッケージに求めるなら、可能性があるのはフタの開閉音だ。この場合、容器にはある程度硬さが必要となる。その点、チョコベビーやミンティアのようなプラスチック系素材は「カチッ」感を出しやすいが、紙ではそうはいかない。軟らかい紙同士が接触しても、通常は曖昧な音がするだけだ。

 しかし森永キャンディー「パスティーユ」は違う。全身紙製だが完璧な「カチッ」を実現している。勝因はボディーについたストッパー。フタを閉める際、初めは紙の弾力でこらえているがついにフタ内側の留め紙の軍門に下る。その瞬間、紙の断面同士が強く引っかかり「カチッ」が発せられる。紙の端の強さに着目した見事なアイディアである。

 折り返しの存在でフタを固定する従来の紙箱構造では、この感触は絶対に味わえなかったものだ。グミとアメの中間的性質の品のため箱のコピーには「新食感!」とあるが、ここは「新触感!」や「新音感!」とも言ってほしかった。(この項おわり)




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