「では、この呪文のような文字群は何と説明されるおつもりか?」

 問題の核心に触れる質問に対し、グリコ広報の笛吹氏は答えた。

「はい。これは商品名の短縮記号で、社内では『電略』と呼んでいます。電報用の略号で『電略』です。昔はメーカーと問屋との商品発注に電報を利用していました。電報だと文字数が多いとその分料金が高くなりますから、略号を用いてなるべく文字数を少なくしていたんです。今はもう電報で発注することはないですが、社内の日常業務の中では今もこの略号が活用されています。菓子だけでなく、食品でも冷菓でも当社の製品全部についてますよ。パッケージに表示してあるとは限りませんが。冷菓などではそれほどでもないですが、菓子の場合はこの『電略』の付け方に規則性が顕著に見られます。最初の文字が商品のグループを、真ん中の文字がアイテム名を、末尾の文字が価格帯を示すというように。例えばいちごポッキーは『ホイヤ』ですが、ポッキーグループだから『ホ』、いちごだから『イ』、価格が80円だから『ヤ』となります。末尾の文字は語呂合わせみたいなものですね。200円だったら2を『ふたつ』として『フ』とか、300円だったら『ミ』とか。まあ社内で通じればいいという種類のものですからそれほど厳密ではありませんよ」

 完璧な回答を前にした私に「中山美穂を誘拐して(略)犯罪者が社内にいますよ」と言う力がもはや残っていなかったのは当然である。(この項おわり)


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