築地の魚屋さんが始めた新感覚の仮想鮮魚店

キーワードは文太風に「時代はバーチャル!」

 総務部に一通の投稿が届いた。

「ヘイラッシャイ! 魚屋が魚をただ売っていればいい時代はとうの昔に過ぎ去ったんだラッシャイ! 菅原文太兄ィが数年前冷蔵庫のCMで宣言していたように『時代はバーチャル!』なんだラッシャイ! この道40年の俺もついにバーチャル魚屋業の営業を開始したので業界最先端の現場を見にいらっしゃいラッシャイ!」

 バーチャルとパーシャルを混同しているらしい無理矢理性とブタゴリラの父(「キテレツ大百科」より)を彷彿とさせるラッシャイ語尾多用文体に興味を覚えた我々は、結末を薄々感じてはいたが他に投稿がないこともあり、早朝の築地に投稿主北海さんを訪ねた。

総務部●早速ですが、バーチャル魚屋は、やっぱりウェブ上の仮想店舗によるオンラインショッピングということになるわけですか?

北海●(だから素人は困るんだよなという顔で風船を取り出しながら)これだよラッシャイ!

総務部●あ、おもちゃ屋で売ってる魚の風船ですか。ヘリウムガスをエサとして補給してやると部屋の中をぷかぷか漂うんですよね。しかしこれがなにか…?

北海●だからバーチャル魚の販売なんだラッシャイ。オンラインショップだとブツを手に取れないけど、これなら店先で実際に触れてから買うことができるからお客さんも大喜びだよなラッシャイ!

総務部●…はあ、やっぱり…。

北海●オンラインカード決済とかってまだ不安なとこあるからよー、うちはやらないんだラッシャイ! そのかわりこの「Kキャッシュ」の導入を検討中なんだラッシャイ!

総務部●…ああ、こども銀行のKなんすね。

北海●今はこのクロダイ1種類しか扱ってないけど徐々に魚の種類を増やすんだテヤンデエ! 極秘だけど来月からくじらも扱うんだラッシャイ! 今じゃくじらは全然入ってこないからなチクショウメ! バーチャルであることの利点を十分に活かすわけだラッシャイ! 時代はバーチャルだよなラッシャイ!

−−おそらく読者諸君の目には「店先で風船を持つよう頼まれて持ってくれている普通の魚屋のおじさん」にしか見えないだろう。しかし北海さんの目は、遠くオホーツクの海の向こうにある、我々には決して見えない虚空を見据えているのだ。(総務部)

↑本物の鮭に囲まれる北海さん。「オホーツク産だラッシャイ!」


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