総務部に1通の投稿が届いた。
「バブー、まろたんでしゅ。まろたんね、巷では『練馬のデジタルベイビー』と呼ばれてるんでしゅ。ああ勿論あだ名に決まってまっしゅ。バラの花くちにして踊っているイメージがあると言われましゅ。そんなまろたんが今度デジカメを発明ちたので、取材に来てね〜。おみやげにアンパンマンカーを買ってきてほしいでしゅ。Yours sincerly まろたん」
「巷」「Yours sincerly」といった大人の言い回しを駆使し、しかもピンクレディーの往年のヒット曲をさりげなく引用。とても2歳とは思えない文面に興味を覚えた我々は、珍しく今回は他に投稿があったにもかかわらず、あえて練馬区に赴いた。
「いらしゃいましぇ〜」。
どうせ親バカの母親がこどものフリして書いたのだろうとタカをくくっていた我々を出迎えたのは、予想に反してまろたん本人だった。
「散らかしちゃってて恐縮でしゅ。ママが二日酔いで寝てるもんで」
しっかりした手つきで茶を出してくれるまろたん。これはついに本物のスクープかも。俄然色めきたつ我々は意気込んで本題に切り込んだ。
総務部●では、発明したデジカメを早速見せてもらえませんか。
まろたん●ウン! よいしょよいしょ。これなんでしゅよ。
総務部●これは……ミドリガメ?
まろたん●(嬉しそうに) まろたんが書いたの! かわいいでしょっ!
総務部●書いた? ああ、カメの背中に白で「01」と書いてあります。
まろたん●やっぱデジタルを表すには「01」が最適と思ったんでしゅ。
総務部●デジタルなカメでデジカメ…。「01」と書いてデジタルというだけでも相当無理矢理ですが…。
まろたん●(取材者の落胆の色を感じとって)ほんとは甲羅の一つ一つに「01」と書きたかったけど、さすがにそれは2歳のこどもには難しくって…クスン…おにーちゃんたちを喜ばそうと…ヒック…思って…ヒック…まろたんがんばって書いたのにクスングスンウワワワーン!」
総務部●そ、そっかー。よくがんばったねー。おりこうさんだったねー、頭ナデナデしてあげようねー!
まろたん●わーい、おにーちゃんだぁいしゅき〜。なにしてあそぶー?
おうまさんごっこ、むすんでひらいて、あがりめさがりめニャンコの目…。途中から心を保父モードに切り替えた我々は、この後まろたんと思う存分遊んだ。遊び疲れたあげく膝で眠ってしまったまろたんの寝顔を見ていると、これはこれでよかったのではないかと思えた、春雨そぼ降る練馬での一夜であった。(総務部)
→右がデジカメ。父親が亀戸で買ってきたものだという。左の普通のカメに見えるものは普通のカメ。