今日のできごとは
「infoseek ニュース」


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独特のブルーモノトーンで描かれる
雨中の全裸仁王立ちオナニーに消沈

六月の蛇 
A SNAKE OF JUNE

●発売元/ハピネット・ピクチャーズ●77分●DVD/4700円●発売中●監督・出演/塚本晋也●出演/黒沢あすか、神足祐司、寺島進、田口トモロヲ、鈴木卓爾ほか

 山本晋也監督と一字違いの塚本晋也監督が描く、ベネチア国際映画祭審査員特別大賞受賞作。貞淑な人妻が自慰姿を盗撮され、それをネタに恥辱を強要され、それを夫が盗み見て興奮し、都市型セックスレス夫婦に新関係が生じるという一作。電話悩み相談室の相談員である妻が相談者の男に盗撮され、携帯電話を介して辱められる設定が愉快。潔癖性の夫・神足祐司の白ブリーフ姿も白眉。川俣軍司の後、長く不在だった白ブリーフ王の玉座に着いた感あり。何度か挿入される、殻から抜け出たカタツムリの映像は、人妻の肉欲が蛇のように脱皮するのを暗示するようで趣深い。黒沢あすかは自慰中の横顔が美しく、雨中の全裸仁王立ちオナニーを始めとして、女性の恍惚状態が傍目には怖いだけであることをまざまざと伝える。だが致命的に残念なのは、顔の造作に根岸季衣が入っていること。禁断の官能を目指す一作とは到底そぐわない(高)

黒沢あすか Asuka Kurosawa
なぜか写真限定のエロス。写真では結構エロいのに、動く映像だと意外なほどエロくない。短髪&メガネが好きな人向きonly。

私的オススメ度
☆☆☆
塚本の声質といかにもアフレコ然とした神足のセリフに好感。

▲全編ブルーモノトーン&大雨。


ニセ・ジャッキーの勇姿もみられます〜

ジャッキー・チェンDVD-BOX ファイティングボックス
JACKIE CHAN FIGHTING BOX

●発売/ラインコミュニケーションズ●全5巻●465分●発売中●税抜18000円●出演/ジャッキー・チェンほか

「蛇拳」「酔拳」「笑拳」と続く「○拳」シリーズの最後を飾るのが当BOX収録の「醒拳」。当時のコピーは「酔っても強けりゃ醒めればもっと強くなる!」。「酔拳」と対をなす名拳かと思いきや、実は視聴者を興醒めにさせる駄拳。撮影中にジャッキーが二重契約問題で逃げ、残された側が前作の未使用カットをつなげて無理矢理完成させた曰く付きの物件なのだ。案の定展開が不自然だし、途中から出てくるジャッキーは少々太めのそっくりさん。本人も出演作と認めてないそうで…。ま、そんな出自がコアなジャッキー好きにはむしろ貴重に思えるはず(?)。他には「ドラゴンファイター」「ファイティング・マスター」「ドラゴン特攻隊」「ファイナルドラゴン」を収録。(高)

私的オススメ度
☆☆
主役不在で作品を仕上げる香港マジックを学ぶには最高かも。


上戸彩の白い太股とオダギリジョーの
白塗り変態フェイスが真っ向から激突!

あずみ AZUMI

●発売元/小学館●142分●DVD4080円amazon●発売中●監督/北村龍平●出演/上戸彩、オダギリジョー、原田芳雄、北村一輝、岡本綾、金子貴俊ほか

 松浦亜弥とセットで「ダブルあや」と呼ばれることもあるらしい上戸彩。売れっ子の割に視聴率が取れないところがまた不憫でそそる彼女が映画初主演作に選んだのは、小山ゆうの「あずみ」。親と死別、同年代の仲間と一緒に最強の刺客として育てられた少女の生き様を描いた人気時代劇コミックだ。親代わりの爺が10年かけて養成したのは、人を斬る精鋭テロ集団。厳しい修業を積んできた彼らにある日、爺が下した命令は、仲間同士で殺し合うこと。平和のためのテロという矛盾を抱えた彼らは果たして使命を全うすることができるのか…。

 映画としては、凛々しくも可憐なヒロインが白い太股をチラ見せしながら縦横無尽の殺陣を展開するアクション時代劇。「映画史上初」と銘打たれた怒濤の200人斬り、垂直方向に360度回転するカメラを使うために挿入された櫓上の戦闘場面はそれなりに壮観。ハッハッハと低音で高笑いしながら去る同じ芝居を何度も繰り返した竹中直人、あずみにかわいーかわいーと連呼しながら「あー斬られちゃったよ」とあっさり死ぬ遠藤憲一、美人だがどうも人工的な口元が気になる岡本綾と、脇役陣もたのもしい。

 が、最大の収穫は、あずみと戦うオカマの刺客、オダギリジョーだ。非日常的な白装束にパサパサのロンゲ、白塗り顔の目の一帯はいやらしい朱塗り、手元or口元には常に薔薇の花一輪という悪趣味ぶり。ひと目見てヤバいんだけど、場合によっては美しく見えないこともなく、でもやっぱり最終的には不気味、という異色キャラを確立した。端的に言えば、高見沢俊彦in時代劇。そのままアルフィーに加入できそうな佇まいが、いたぶり殺しで興奮する変態殺人狂にドンピシャ。やっぱ原作の方がいいでしょと信ずる人も、ジョーだけは見ておくべき。何人いるか不明だが高見沢派のあなたも。(高)2003.12
 

上戸彩 Aya Ueto
本作で女優としての評価はアガール?サガール?

 あまたのアヒル口女優の中でも、上唇のアウトラインの美しさでは右に出る者がいないでしょう。左目だけ二重まぶたなのもなんとなく好感。ただし、意外に目力は弱い。本作では岡本綾と二人で「ダブルあや」。

私的オススメ度
☆☆☆☆
オダギリの殺陣には常人とは少し違う独特なリズムが漂った。

▲空飛ぶキアヌを髣髴させる彩の飛行シーンあり。
▲金子、石垣とウォーターボーイズボーイも出演。
▲剣を構えた彩には機関銃を構えた薬師丸にも負けぬ凛々しさあり。


仲間同士の殺し合いの興奮が醒め、
単なる戦争ごっこ映画となりました

バトル・ロワイアル� 鎮魂歌
BATTLE ROYALL II

●発売/東映ビデオ●133分●12月21日発売●DVD3760円amazon●監督/深作欣二、深作健太●出演/藤原竜也ほか

 中学生が最後の一人になるまで殺し合った前作の続編。「今日はみんなにちょっと殺しあいをしてもらいます」が、今回は「戦争してもらいます」に。前回生き残った主人公がテロ集団を組織して世界に宣戦布告、彼を殺すために1クラスが派兵される。ペア制度が導入され、相棒が死ねば自分も死ぬという設定となり、仲間同士が殺し合わねばならないという本質的な面白みは雲散霧消。前作では一応あった生徒個々の人格描写が今回はまるでなく、未知の人が出てきてただ次々に死んでいく単なる戦争ごっこ映画となった。敗因は主人公の藤原にもあり。顔に凹凸が少なく、テロリストのリーダーにふさわしい緊張感やメリハリに欠けるし、声をムリして低くしゃべるのも、劣悪な環境下で無精ひげの一つもないのも、興醒めの一環。衣装も一人だけのほほんとしたポンチョ風で緊迫感ゼロ。ニセ「魔界転生」テイスト。原作、前作、今作と見るにつれ、どんどん興が醒めていく感じ。架空の世界の妄想に浸ってないで目を覚まして現実に向かえっていうことなんでしょか。なんだかな。(高)2003.12

▲竹内力(=ニセ安岡力也)はラグビーシャツ&短パンで熱演。

私的オススメ度

テロ賛美、米国批判の姿勢を鮮明に出したのは珍しいかも。


アイフル系子犬と「ガン=カタ」の
魅力は恐怖の感情抑制剤にも勝る!

リベリオン -反逆者-
EQUILIBRIUM

●発売元/アミューズ●107分●DVD3040円amazon●発売中●監督/カート・ウィマー●出演/クリスチャン・ベール

 第三次大戦後の世界。戦争の根源が人の感情にあると考えた指導者は、国民に感情抑制剤の服用を義務づけ、感情を喚起する全ての活動を禁止する絶対社会を確立していた。主人公はそんな国家に忠誠を尽くす敏腕取締官だったが、ある女性の逮捕を機に疑問を抱き、ついに国家へ反逆する。と、目新しくもない話の割に見飽きないのは、アクションのユニークさゆえ。銃(gun)のテクに東洋武術の型を融合した新武道、その名も「ガン=カタ」がかっちょいい。銃撃戦の統計学的分析をもとに死角に身を置いて敵を秒殺という理論は、説得力の次元をゆうに超越済だが面白力の次元にはしっかり着地。クールそのものの主人公をかわゆさでメロメロにしたアイフルもどきの子犬と同様、感情に訴えることの大事さを教えてくれる。(高)2003.11

私的オススメ度
☆☆☆☆
「顔の輪切り」と、感情発露バリバリの同僚黒人も見逃せない。

▲「マトリックス」とは別のアクション地平を開拓!


飛ぶ鳥を近くで見る快感を伝える
「ニルスの不思議な旅」実写版

WATARIDORI/THE TRAVELLING BIRDS
LE PEUPLE MIGRATEUR

●発売/日本ヘラルド●119分●発売中●DVD3760円amazon●製作・監督/ジャック・ペラン●出演/渡り鳥

 「ミクロコスモス」で昆虫の世界を至近距離で捉えたジャック・ペランが、同じように渡り鳥の生態を描いたドキュメント。3年間で20億円かけて100種類超の鳥を撮影し、飛ぶ鳥を近くから撮ることに全力集中。ヒナから育てて慣れさせ、間近に飛行機がいても気にしなくさせる仕込みにより、翼の動きと反対に小刻みに上下する首などを超アップで長々と見られるという奇跡を実現。「ニルスの不思議な旅」みたいに小人になって鳥の背中に乗らないと不可能なアングルもあり。海、山、街、どこの上を飛んでいても、なんだか異常に壮観。いいなあ、鳥。この世で一番えらいのは空の支配者たる鳥様だぜ、とロマンチックに感激しちゃいそうだが、なんのなんの。翼が折れてカニの大群に食われる鳥、工場の油土に足を取られて動けなくなる鳥、人間に打ち落とされる鳥、親にせっつかれて飛び立つも海に墜落するひな鳥など、ロマンチックと言えない姿も収録。さすがに単調で眠くなる視聴者をほどよく刺激する演出も忘れない。観賞後、焼鳥を食う手が少し鈍りそうな一作。(高)2003.11

▲日本版のナレーターは日本の渡り鳥・小林旭。ではなく安田成美。

私的オススメ度
☆☆☆☆
ヤラセ(演出)と事実の境を考えさせられる一作でもあり。


オー・ド・ヴィの直訳は「命の水」
だけど命の源=精液とは関係なし!

オー・ド・ヴィ  EAU DE VIE

●発売元/アミューズ●124分●税抜16000円●発売中●監督/篠原哲雄●出演/,,岸谷五朗、小山田サユリ他

 オール函館ロケの映像は、幻想的とまではいかずとも空想的で美しいが、感想的には「大規模なスタイリッシュ気取りごっこ」。観るより一緒に遊んだ方が楽しそうだなと思わせる。酒を飲み、笑みを浮かべて死ぬ全裸女性が続出、という設定のため、ヌードが多いのは魅力。ただ、藤田舞、小山田サユリ他の裸体は魅力に乏しい。若いだけ。バーテンの主人公・岸谷も夜の海に全裸で突入する場面以外は魅力を醸さず。一方、熟成された蒸留酒の如き琥珀色の鈍光を放ったのが鰐淵晴子、58歳。トレビアン! 特に乳房。年齢別「世界肉上」があれば、織田裕二が嬉々として金メダルを煽るはず。跪いてのフェラ場面では、熟女の手練と執念と限界、義理の息子(岸谷)の息子の嘆息と絶望を存分に表現。酔うよりは醒める一本。(高)2003.10.19

私的オススメ度
☆☆☆
鰐淵様はドイツ人とのハーフ。かつての天才バイオリニスト。


迫真すぎて笑える点までオスメント君に匹敵の子役、
その名はウン・ソウ!

ボイス Phone

●発売/ブエナ・ビスタHE●102分●10月16日発売●DVD/amazon/3230円●監督/アン・ビョンギ●出演/ハ・ジウォン、キム・ユミ、チェ・ジヨン、ウン・ソウ他

 携帯電話が題材の韓国製ホラー。主人公の女性記者がストーカーの脅迫に悩んで携帯番号を変えたら、不気味なノイズを発する電話がかかり始め、たまたまこの携帯に出た幼女に悪魔が憑依した状態に。調べると、その番号の前契約者2人が謎の死を遂げ、1人は行方不明になっていた…。 社会派ストーカーものを思わせる序盤から、男女の怨恨仕立ての火曜サスペンス、そして最後は伝統的な化け物映画へ移行する印象。視聴後は着信音だけでも十分怖くなるし、幼女役の子が美少女とは言えない天性の容貌を自覚した好演技
で怖さを体現しているが、勢い余って面白さを感じるひとときも。出演者が謎の失踪、配給会社がお祓いを実施、公開時のCMが怖すぎて苦情が殺到で差し替えなど、怖さを演出する話題が豊富でかえって勘繰りたくなるが、筆者がサンプルを視聴中に途中で不気味なノイズが発生、視聴不能に陥ったのは事実である。(高)2003.10.19

キム・ユミ kim youmi

23歳に見えない年上感!
主人公の親友の主婦役。鷲尾いさ子と木村佳乃の混血風美人。MBCの「ロマンス」にも出演。

▲携帯番号が6644の人は必見!

私的オススメ度
☆☆☆☆
不吉な携帯電話に抜擢されたのはSKテレコム。理解あるのね。


嗚呼! モニカ様のポッチ美は
すべての映画的努力を破壊する!

アレックス IRREVERSIBLE  
●発売元/パイオニアLDC●98分●DVD3995円amazon.co.jp●9月5日発売●監督/ギャスパー・ノエ●出演/モニカ・ベルッチ、ヴァンサン・カッセル、アルベール・デュポン

 モニカ・ベルッチは天才だ!正確にいえば、モニカの乳首が天才だ! ←ジャケ写を見よ!服の下に豆でも入れてるみたいだよ! 服を着ているのにナマ肌みたいだよ!この充実感みなぎるポッチの美しさは尋常じゃないよ! ポッチ・オブ・ザ・イヤーだよ! とこんなに素晴らしい乳首だが、一度このポッチを意識してしまうと、もうそこから目が離せず、他はどうでもよくなるという弊害が発生。復讐→犯人探し→レイプと時間を逆にたどってみせる構成。不安定な手持ちカメラ映像の飽き飽きする連続による不安感の増大。9分にも及ぶ壮絶アナルレイプを定点で撮り切った長回し。どれも映画的には素敵な工夫であることが確かだが、そんな小細工など、網膜に焼き付いたポッチ美にはこれっぽっちもかなわない。「時はすべてを破壊する」が本作のテーマだが、すべての映画的努力を破壊するのは間違いなくモニカ様の乳首だ。(高)2003.09

モニカ・ベルッチMonica Bellucci

「リローデッド」にも出演
ペルージャ出身の「イタリアの宝石」。どことなくオバQのU子を思い出させる34歳。完熟!

▲恋人をヤられた男の復讐話です。

私的オススメ度
☆☆☆☆
レイプ犯役の男優は「レイプ美」のようなものを完遂。敬意。


潜水艦アクションと超常現象ホラーを
融合したら海底に沈んで浮上せず

ビロウ BELOW

●発売/東宝●105分●9月5日発売●dvd5100円amazon●監督/デビッド・トゥーヒー●出演/マシュー・デイビス

 第二次大戦中、ドイツに撃沈されたという民間船を救助した米潜水艦。が、生存者の一人は、潜水艦に乗ると災いを招くと言い伝えられる、女だった。疫病神乗船を機に、艦内では不気味な現象が次々発生。乗組員の恐怖が広がる中、鑑は操縦不能と空気不足に陥り、そして、呪われた鑑の秘密が明るみに…。一人放り込まれた美女をめぐって男どものいやらしくもけがらわしい欲望が渦巻き、話は下ネタ方向へ展開、そうか、これがbelow(下へ)で尾籠(けがらわしい)ってことか! といかないのは当然だが、逃げ場のない空間で窒息寸前の割に、息詰まる緊張感がないのは不思議。一人しかいない女としておいしい役回りのはずのヒロインも、結構勝手な行動ばかりで応援する気にならず。潜水艦ホラーの魅力、浮上せず。(高)2003.09

▲紅一点オリビア・ウィリアムズはなんだか冷たそう。

私的オススメ度
☆☆
機雷が甲板上をスローモーに転がる場面は嫌いじゃないっす。


チン長を3倍にしてくれるのなら飲んでやってもいいけど

東京爆弾 Neo Tokyo Twilight Zone

●発売元/KSS●111分●8月11日発売●カラー●税抜16000円●監督/鈴木浩介

 東京を出てはいけない、感極まってはならない、という二つの条件を守りさえすれば全ての能力と寿命が3倍になるという薬があったら、どうしますか。ちなみに薬をくれるのは偶然出会った怪しい黒コート姿の竹中直人で、薬は宇宙人の顔を描きこんだ作りものの石としか思えない代物で、前出の条件を破った場合は即爆発というオマケつき。

 一生東京にいるつもりがなく、すぐに感極まるタイプで、3倍してもたかが知れている能力の持ち主で、雪印牛乳を飲むことも避けがちな小心者の筆者ならば絶対飲みませんが、3話オムニバス形式で綴られたこのドラマの主人公たちは飲んでしまいます。結果、全能力が3倍になるとのうたい文句とは裏腹に、末期癌患者は妻の気持ちを推し量る能力が落ち、マイホームパパは家族関係維持能力が落ち、そこから悲劇が始まって結局皆さん大爆発。これでは薬の信頼性が著しく低いと言わざるを得ず、薬は回収されてしかるべきです。

 設定は十分興味深いものの、作品自体への興味は浅いまま終了します。芝居を熱演すればするほど痛々しく見えてしまう役者が少し不憫です。特に、第1話の医者と看護婦にはその傾向が顕著。さすがの竹中直人もこの傾向から逃れることはできませんでした。(高)


コネリー様の股間に大好感! 

007/ゴールドフィンガー GOLD FINGER

●発売元/フォックスHE●110分●8月4日発売●税抜00000円/DVD2500円●監督/ガイ・ハミルトン●出演/ショーン・コネリーほか

 いやー、改めて感心したけど、007って出てくる女がいちいちセクシーだなあ。もう、体臭キツくても許しちゃう。全身金粉まみれの女体という無比なゴージャス概念を世に送り出したことで有名な本作では、登場するブスはたった一人。しかもほんの数秒。もう素晴らしいの一言です。セクシーエンジェルたちと奔放にからむコネリーも勿論セクシーそのもの。なんつったってあの胸毛だし、金塊の上に縛られてレーザー光線で金玉を焼かれそうになるシーンなんて、男もキュンと惚れちゃうこと必至。海パン姿を見る限り、彼のモッコリが結構小さいのは意外だけど、それはご愛嬌。タイヤ粉砕カッターなどの秘密兵器を装備したアストン・マーチン、殺人シルクハットを操るハロルド坂田との死闘、コブシの効いた名主題歌などなど、全編これ見どころ聞きどころと言って過言ではない感じで。ただ一つ気になるのは、悪党ゴールドフィンガーの無能な下っ端たちは皆アジア人だってこと。所詮我々アジア人男子はショッカー程度の役割しか与えられない矮小な存在なのよね…。(高)


デヴィ夫人を偏執狂と断じた学園ホラー!?

パラノイア・デビー 血塗られた学園 DEARLY DEVOTED

●発売元/日活●92分●発売中●税抜16000円●監督/スティーブ・コーエン●製作/カート・アンダーソン、リチャード・ブランディス●出演/ローズ・マッゴーワン、アレックス・マッカーサーほか

 あのデヴィ夫人を「偏執狂」と言い切った挑発的なタイトルが印象的な本作は、その名の通り妄想に囚われたデヴィ・スカルノが無謀にもバリバリの女子高生に扮し、学園中を恐怖のどん底に陥れる話題のサスペンス・ホラー。

 ……だったらかなり怖いのだが、残念ながら主役は『スクリーム』のローズ・マッゴーワン。素晴らしいプロポーションなのに全く股間に訴求しない、珍しいタイプの女優だ。教師に一目惚れして色気で気を引こうとするが失敗してストーカー殺人鬼・デビーになる役だが、この魅力のなさでは教師がその気にならなかったのも当然と思える。

 作品のトーンがライトな学園コメディとシリアスな殺人鬼物語の間で行ったり来たりすれ違いなため、どういう心持ちで鑑賞すればいいのかピンとこない。しかも展開に整合性がない。最後にデビーは教師の恋人を襲うのだが、その数分前に彼女は教師の説得も虚しく猟銃自殺を成し遂げているのだ。見間違えではない。確かに堂々と死体として登場していたんだから、どういう心持ちで鑑賞すればいいのか全くわからない。監督には偏執質でなく分裂質のケがあったと考えれば合点がいくが。

 その点わかりやすかったのはデビーが邪魔者として殺す祖母役にデヴィ夫人のそっくりさんが抜擢されていたこと。眉とアゴをいっぱいに上げて高圧的な口調で怒鳴りつける様子が、まるで殺されるために生まれてきたと言わんばかりの憎まれっぷりを演出。これは名キャスティング。(高)

▼迫る男を拒絶・殺害後の言。「勃起中は英語がわからないの?」
▼体がよくても色気がないとね
▼モテる教師はつらいんですか


映像的魅力を省いた『マトリックス』か!

13F  THE THIRTEENTH FLOOR

●発売元/SPE●132分●7月13日発売●税抜15800円/DVD3800円●監督/ジョセフ・ラスナック●出演/クレイグ・ビアーコ、グレッチェン・モルほか

 自分の存在なんていくらでも疑える。デカルトは「コギト-エルゴ-スム」(我思う、ゆえに我在り)で満足したようだが、疑う働き、意識そのもの、意識する我の存在だって、疑おうとすれば十分疑えるはずだ。真に理性に忠実な人なら、意識的自我の存在を明晰に直感することで満足せずに、死ぬまでずっと疑いを続けねばならない。

 が、眠くなったりオナニーしたくなったりして途中で疑問を中断するのが今を生きる人間である。有限の存在である自分が疑いをある程度続けていると無限に少し近づいたように感じられて嬉しいためか、バーチャル・リアリティー、パラレル・ワールドといった概念はいつの時代も魅力的だ。人間はもともとマトリョーシカのような「入れ子構造」が大好きな生き物なのだ。

 そんな生き物の一人と目されるローランド・エメリッヒが製作を担当した本作は、主人公がコンピュータ上に再現した精巧な仮想世界と現実との間を行き来するうちに、緑色のワイヤーでできたいかにも作り物な「この世の果て」を見てしまい、自分が暮らす世界も実は上位の世界の住人によって作り出された仮想空間だと気づいて愕然とする話。『マトリックス』目当てでビデオ屋に行ったら全部貸出中、というときにしかたなく隣の棚に手をのばしたらきっとそこにあるだろうと思われる作品。ただし、話題となったワイヤースタントやカンフーやブレット・アクションはない。そして、魅力もない。(高)


キリスト教圏に在住の皆さん、死体は火葬がオススメですよ

ポゼスト/狂血 POSSESSED

●発売元/オンリー・ハーツ●99分●発売中●税抜16000円/DVD4800円●出演/ウド・キアーほか

 エボラ熱の症状に似た未知の殺人ウィルスの正体を突き止めんと熱血漢の医師が奔走する病院系ホラー・パニック・ムービーfromデンマーク。今回ウィルスに割り当てられたのは、感染者を殺して人間ではない何かとして蘇生し他の人間を襲うという『パラサイト・イブ』っぽい役柄。画面に姿を現すのは医師から顕微鏡で覗かれた場面一回のみなものの、元気よく動き回って十分な存在感を示したので、一応好演と言っておく。ウィルス以外の役者で目につくのは、ウィルスの正体を悪魔と断定し、感染者の完全焼却を企む景山民夫似の狂信的神父ぐらい。ゾンビ映画と同じで、火葬が一般的な国に暮らす人間には他人事としか思えない。結局「狂血」に取りつかれていたのは、わざわざ異国の墓場まで赴き、邪魔な遺族を殺し、深夜の墓場で感染者の死体を掘り起こしてウィルスを採取した医師その人。熱血漢というより狂血漢だったというわけだ。(高)

▲画面全体に必要以上の暗さが漂う。


気絶するまで潜水フェラしてくれる美人妻を殺しちゃダメ

歯科医 SHIKAI

●発売元/GAGA●71分●発売中●税抜00000円/DVD3800円●監督/中原俊●出演/遠藤憲一ほか

 歯科医の夫がインポになったが、たまたま妻の尻を叩いてみたらビンビンになっちゃって、夫妻ともズブズブとSM世界に浸っていって、最後は全視聴者の予感通り妻を殺してしまう話。当事者二人が好きでやってんだから他人が文句をつける筋合いはねーわなという以外、ストーリーに特筆すべき点はない。だが、筆者もインポ系なので感情移入がしやすかったという事実を差し引いても、この映画が与える刺激は小さくない。妻役の女優(金谷亜未子)が非常によいのだ。尻が小さすぎて肉感に欠けるきらいがあるが、「こんなに貞淑な妻いるわけねーだろ!」と悪態をつきたくなるほどの貞淑ぶり。特に、温泉の湯船に潜水してのフェラチオでは、自分が気絶することをも厭わないロングタイム奉仕を進んで実行。うーん、いい女だ。そんないい妻を失う恐怖と、妻を己の手で殺して愛を証明したい気持ちが戦ったら、普通は前者が圧勝するんだが。(高)

▲主人公のまぶた下のふくらみに好感。



いくら公開が先でもダメなものはダメ…

ジャージー・デビル・プロジェクト THE LAST BROADCAST

●発売元/日本ヘラルド●87分●発売中●税抜16000円●監督・脚本・出演・製作/ステファン・アヴァロス、ランス・ウィーラー

 撮影で森へ入ったフィルム・メーカーたちがミステリアスな殺人事件に巻き込まれた。彼らが残したフィルムが物語るのは伝説の怪物による殺戮か? 伝説を利用した人間による策略か?

 とくれば、「ああ、ブレア・ウィッチね。低予算なのにインターネットを活用して大ヒット。やっぱネットってスゲーよなぁ」と言い放つのが、情報に敏感な現代人として当然の態度だ。

 が、情報により敏感な現代人を目指すならば、「ああ、ジャージー・デビルね。アメリカじゃブレア・ウィッチより先に公開されて、しかも衛星配信、インターネット放送と独創的な配給スタイルを実現。やっぱデジタルってスゲーよなぁ」と言い放つのが望ましい。

 ストーリー以外にも、無名俳優の起用、ニセ・ドキュメンタリー・スタイルの採用、上映時間、虚構か真実かという問いかけに至るまで、共通点の多い両作だが、なんと恐るべきことに、非常につまらないという点まで共通している。視聴開始後30分で意識を失ってしまったのは、筆者が酔っていたせいだけではないと断言できる。

 両作品の最大の違いは、ブレアは大ヒットしたがジャージーはヒットしなかったという動かしがたい事実。最後に反則っぽいオチがついてる分、ジャージーの方が完成度が高いと言ってもよいが、視聴者がなんやかや推理して言い合うブレアのような楽しみはないとも言える。映画の問いに答えれば、その点は虚構でなく紛うことなき真実だ。(高)


ナオミの正体はウーピーだった! 

プリズナー・オブ・ラブ PRISONER OF LOVE

●販売元/シネマファスト●93分●5月2日発売●税抜16000円●出演/ナオミ・キャンベル、エリック・タール他

 スーパーモデルとして全盛だった頃でさえ、ナオミ・キャンベルのことをかわいいと思っていた男性は、少なくとも日本にはいなかったはずだ。ましてや、全盛期がとうに過ぎ去った今の彼女を見てグッとくる男性など、天然記念物より貴重な存在だと言わざるを得ない。最大限によく見積もっても、おげれつ発言で一時人気を得たちんころねーちゃん・SILVAと同レベル。普通に見積もれば、ウーピー・ゴールドバーグと同レベルの顔品質と思われる。筆者の持論では、ブラック女性は額を出すとどうしてもウーピーになっちゃう宿命を背負っているのである。

 そんな彼女が堂々主演を張った本作。殺人事件を目撃したナオミを拉致した男が、監禁を続けるうちに女の魅力に翻弄されて落ちていく様子を描こうとしたようだが、主演女優のショボさとごく手ぬるい脚本とが相まって、その意図は1000%達成されていない。魅力がないのに魅力ある女然とした立ち振る舞いを続けるナオミを見るのは痛々しく、また滑稽。茶番劇という言葉が非常に似合う一本である。(高)



男根より固そうな乳房って好き?

ノックアウト KNOCK OUT

●発売元/日本コロムビア●100分●発売中●税抜16000円●監督/ロレンゾ・ドゥマーニ●出演/ソフィア・ヘルナンデス

 女子ボクサーが男子ボクサーに勝ったり、モハメド・アリの娘がプロ・デビューしたりして流行の兆しが見られるらしい、女子ボクシングの映画である。描かれるのは、元ボクサーの父と鋭角の鼻穴を持つ筋肉質なメキシコ女性が、親友を再起不能にした強敵を倒して王者になるまで。「女子暴走族」とは違う意味でのレディース・ファイト・ムービーである。

 とくれば、 「やっぱりチャーミングな魅力で観衆を一発KO?」「男と違い致命的打撃にはならないからローブローもOK?」「乳房がパンチの衝撃を吸収してくれるはずだから巨乳の方が有利?」 「ラウンドガールじゃなくてラウンドボーイ?」 などという些細な疑問を持つのが健康な男子だが、最後の一つを除きその辺には触れられないので期待は禁物。

 登場人物たちがこぞって「美人」と誉めそやすだけあり、主人公はパッケージ写真に限れば確かに美人。「ターミネーター」と称される無敵の黒人王者よりも絶対美人。が、作中で美人ぶりを拝めるのは父の葬式で純黒の涙を流す一瞬だけ。注目点はそこに尽きる。(高)

 


「美女主演作」としか言えない

悪いオンナ「地獄へのカクテル」

●発売元/TBSビデオ●103分●発売中●税抜9800円●監督/伊佐野英樹●脚本/相内美生●出演/柴咲コウ、堀真樹他

 TBSの深夜ドラマ枠で高視聴率を記録した30分×4話完結シリーズの一編であり、美白系化粧品・ポンズダブルホワイトのCMで一躍注目を浴びた美女・柴咲コウの顔を拝むためだけに生まれたと自信を持って言える一編。オッパイポロリは勿論、水着姿も交合シーンもキスシーンすらもないが、立川宣子と中谷美紀と中山美穂をシャープに混在させた顔立ちから繰り出される棒読みが、数十本のロウソクを立てた自室で飼うフクロウに生きたヒヨコを食わせるミステリアスな女バーテンダー役に妙にフィットしている感じ。わかりやすいサービスカットといえば風俗に売り飛ばされてセーラー服を着せられるシーンのみで、妄念を喚起させるのは「ライジングアップ」というカクテルを調合する際に発せられた「ちゃんと立たない人にはもう用はないの…」というセリフ一つのみという潔さ。柴咲のクールな美貌に賭けた制作サイドの意図がひしひしと伝わるものの、残念ながら男を翻弄する悪い女という感じは全く伝わらなかった。だって、どこから見てもイイ女なんだもん!(高)



イタリア男はシャイでもデカチンなのか

踊れトスカーナ! IL CICLONE 

●発売元/ブエナビスタ●95分●発売中●税抜16000円/DVD2500円●監督・出演/レオナルド・ピエラッチョーニ●出演/ロレーナ・フォルテーザ他

 「踊れトスカーナ!」といってもトスカーナという人に踊れと命じる映画ではない。伊版「Shall weダンス?」とも違う。かの国で最も風光明媚とされるトスカーナ地方が舞台のラブコメだ。

 雑学豆知識的に書くなら、トスカーナ地方の中心都市といえばフィレンツェで、フィレンツェのサッカーチームといえばセリエAのフィオレンティーナ(今季低迷中)で、フィオレンティーナといえば、ヴィットリオ・チェッキ・ゴーリ会長。何を隠そう、この映画の製作者だ。チームの監督には口を出す会長だが、映画の監督には「バティストゥータを出せ」などとゴリ押しはしなかったようだ。それが功を奏したのか、この作品は公開時にイタリアでNO.1ヒットを記録、監督もブレイクして「ピエラッチョーニ現象」を引き起こしたそうな。よかったよかった。

 それはいいが、内容は単なるラブラブ話。田舎農場で退屈な日常を送る主人公のもとにスペインのフラメンコ一座が迷い込み、美人ダンサーと恋に落ちるだけ。

「好きな人がいれば人生は楽しい」という当たり前のことを当たり前に認識したい人のための当たり前の映画なのだ。

 シャイなイタリア男と情熱的なスペイン女の対比が肝のはずだが、これがあまり効果的じゃない。イタリア人的にはシャイなのかもしらんが、日本人の筆者から見れば主人公は全然シャイじゃない。寝ている女のところに出向いて誘うし。うまいこと口説くし。女の名前を大声で叫び回ったりもするし。堂々としたもんさ。日本の真のシャイ男児からすれば、彼はむしろ「ジゴロ」。

 相手のスペイン女も、それほど情熱的には見えない。ジュリア・ロバーツの顔を平坦にした感じでかわいいが、顔もボディも洗練が入りすぎ。むしろ、主人公の昔の女の方が、情熱的という点では適役か。グラス満載のテーブルの上で酔っ払って踊りまくりながら一つのグラスも割らない技術も、情熱的かつハイテクニックのフラメンコ・ダンサーっぽいのでは。そんな感じでどうですかーなトスカーナ。CHAO!(高)

注目! ロレーナ・フォルテーザ Lorena Forteza

ジュリア・ロバーツの顔を少々平坦化すればロレーナ!

コロンビア生まれのマジョルカ島育ち。資料によれば、スーパーモデルとのこと。十分キュートだが、田舎町に IL CICLONE(竜巻)を巻き起こすヒロインとしては線が細すぎる感じ。推定カップ=B。


多様な怖さを含んだゾンビ映画の金字塔!

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド NIGHT OF THE LIVING DEAD

●発売元/徳間ジャパン●96分●発売中●白黒●税抜16000円 /DVD3800円●監督/ジョージ・A・ロメロ●SFX/ヴィンセント・ガスティーニ●出演/デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オディア、カール・ハードマン、マリリン・イーストマン 他

 「マスター・オブ・ホラー」の異名をとる監督が、製作30周年を機に全編をリマスター・リミックス、ゾンビシリーズの第1作を完全復活させた。つまり、それ自体ゾンビ的な性格を持つとも言えるホラーファン必見の一作だ。

 ホラーファンでも何でもない筆者が一見して感じたのは、30年前の作品でもやはり怖いものは怖いということ。 まず否応なく気づかされたのは、ゾンビ連中の動きが非常にスピーディーだったという事実。こんなにキビキビしてていいんだっけ、と感嘆せざるを得なかった。特に冒頭から登場するゾンビ第1号がジョニーとバーバラの兄妹を襲う際に見せる敏捷性は特筆もの。故ジャイアント馬場の生前の動きよりも明らかに速い。これは怖い。

 東海村の事故が記憶に新しいことを思えば、放射能の影響で死者の脳が再活動を始めたという設定も怖い。特に該当地域在住の人が見たらかなりの怖さを感じて当然だ。他にも、黒人−白人の人種対立、生きた人間が一番怖いという皮肉、親を食う子、狂った神父の顔が去年のドラマ「隣人は秘かに笑う」のモックンに似ているなどなど、ツボをわきまえた恐怖が目白押しだ。

 そんな中、ゾンビの群衆シーンでどう見ても普通に歩いている奴が数人確認できたときには、ポッと心があたたまる気がした。高い緊張が漂う本作に咲いた一瞬の徒花とでも言うべきか。最後になるが、口直しにアル・ヤンコビックのビデオを見直したくなったことは強調しておきたい。(高)



和泉雅子って若い頃はかなりイケてたのに…

マイ・ネーム・イズ・ジョー MY NAME IS JOE 

●発売元/シネカノン●104分●発売中●税抜15000円●監督/ケン・ローチ●出演/ピーター・ミュラン、ルイーズ・グッドール、ゲイリー・ルイス他

 マイ・ネーム・イズ・ジョー。誇らしげに直訳すれば「私の名前はジョーです」。中1の英語教科書巻頭に出てきそうなタイトルだが、勿論主人公は城彰二でも矢吹丈でも宍戸錠でもない。といってビッグ錠でもない。本作の主役は、スコットランドはグラスゴー在住のジョー・カバナーさん(37歳)だ。

 声も顔も渋くて宍戸錠より断然モテそうな彼は若い頃からアル中だったが、断酒会への参加で改心し、現在は断酒中。加えて失業中。失業者仲間で作っ

た弱小サッカーチームの監督でもある。そんな彼が、健康管理センターでソーシャルワーカーとして働く中年女・セーラと甘くせつないラブストーリーを繰り広げる。…繰り広げてしまう。

 ジョーはその渋さでまだ許せるが、1ミリたりとも許せないのは、極点冒険旅行で皮下脂肪を目一杯蓄えた和泉雅子の目の下に濃く深いくまを加えたような顔のセーラ。「膣に入ってしまうから女の子にパウダーは使わない方がいい」「睾丸の調子はどう?」といった勤務時のセリフは買えるが、恋に溺れた時の彼女を見るのはかなり辛い。食事を運んでいる最中に下半身の情熱を抑えきれなくなりサラダを持ったまま燃え上がってしまう場面や、ジョー宅に泊まりにいくことになって放った「(恥ずかしげに)…何もしない?」というセリフには辟易間違いなし。老いた者同士のラブ・アフェアがビジュアル的に優れたものにはなり得ないことを身をもって教えてくれる。

 行き場のない下層社会で法に触れることもやってきたジョーと、真っ当に育ったセーラ。通じ合った二人の間に価値観の相違が表面化し、盲目の恋物語は悲劇へとシフト。その容貌通りに無能なジョーの甥がことごとく足を引っ張り、陰惨かつあっけない幕切れが訪れる。名匠と言われる監督が、失業問題が根深い英国社会の暗い現実を、その辺に鋭く表現しているらしいが、事情に疎い筆者からすれば、甥は単なる自業自得。ジョーとセーラは気にしないでいちゃついてりゃいいだろう。ただし他人に見えないところで。(高)

▲甥役はかなり無能顔。好演だ。

▲全体に暗〜いトーン。英国だ。
▲登場する女性は揃いも揃って魅力ゼロ。スコットランドの現実はこれほどまで厳しいのか。

注目! ピーター・ミュランPeter Mullan

キルト・スカートも似合うスコティッシュな健さん?

『トレインスポッティング』や『フェアリーテイル』にも出演。イギリス労働者階級の不器用な中年男を体いっぱいに演じた今作で1998年カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。でも渋すぎて37歳には見えなかった。サッカー選手だとアラン・シアラー(ニューキャッスル)が近い印象。イングランドだけど。本人ももっと若くていい女と共演したかっただろうて。


ミルキーはパパの味…な〜んつってな

スーパーミルクちゃん

●発売元/パイオニアLDC● 分●発売中●税抜3500円/DVD4800円●監督・原案・デザイン/田中秀幸●脚本/椎名基樹

 監督がウゴルーの人だとか脚本がバカサイの人だとかフジ「flyer TV」で放送されてたとかの事前情報を知らず、タイトルだけ見て精液チックな内容を妄想した私をあざ笑うかのように、画面内のミルクちゃんのタテに切れ長なオメメはピコピコ瞬いていました。新種のロリコン? 不条理界の新時代旗手? これってビザール? マキバオー? 癒し系? …ビデオを再生してしばらく、これがどういうタイプに属す作品なのかまるで判断できず、頭内を不明瞭な言葉が去来しました。それは今も同じです。ただ、ミルクちゃんのキュートな声は、私の中で確固たる居場所を確保しました。ほっとくとこまごましたことに夢中になってるようなおとなしくてジミ〜で「いとらうたし」な幼女感がぷんぷんで、陰毛が茂った女には到底出せないミルキーヴォイス。むべなるかな、声優は子供らしいです。ミッキー安川、戸塚ヨットスクール、どおくまんといったけれんみたっぷりなセリフを喜ぶのは口惜しいのでやめますが、この声にはひれ伏すのが当然の助動詞べし。な〜んつってな。



床の下に棲む嘘つき人面寄生虫活躍物語

ボロワーズ THE BORROWERS 

●発売元/エキスプレス●87分●発売中●税抜16000円●監督/ピーター・ヒューイット●出演/ジョン・グッドマン、ジム・ブロードベンド他

 床下にいる生き物といえば、日本ではシロアリかネズミと相場が決まっている。が、アメリカはさすがに次元が違う。人間の顔を持つ体長15cmの生き物が巣くっているのだ。という設定の、お子様限定ファンタジー・ムービー。

 この生き物には、顔だけでなく、手も胴体も足も知能もある。450年ほど時代遅れな中世風パーマヘアではあるが、髪の毛もある。子供もいることから類推すると、生殖器も持っているようだ。

 人間様の持ち物を内緒で持ち去ってひっそりと生計を立てる彼らだが、ある日人間の子供に見つかり、家を乗っ取ろうとする悪徳弁護士(人間)に、人間とともに立ち向かう。それだけ。

 人間側のヒーローに「鮫肌男と桃尻女」の山田役で俄然再評価の機運高まる若人あきら改め我修院達也を思わせる子役を抜擢したキャスティングは光るが、ボロワーズ側のヒロインがそろそろ本格的なフェイドアウト状態にさしかかりつつある篠原ともえにそっくりな女というのは頭が痛いところ。

 「ボロワーズ」とは「借りる人」の意。「盗んでるわけじゃない。俺たちはボロワーズだ!」なんて見栄を切るが、借りたものを返す場面は結局一度も出てこなかった。嘘つきは泥棒の始まり。つーか、こいつらは最初から泥棒だ。なんの生産手段ももたず、人間様のおこぼれにしがみつくだけの低能寄生虫は「ボロワーズ」というよりはむしろ「バーローズ」。目黒寄生虫館にでも展示すれば人気を博すことだろう。(高)


へなちょこヒーロー界の巨星! 

遊星王子

●発売元/セブンエイト●74分●発売中●税抜3800円●監督/藤田潤一●出演/三村俊夫、早ミチ子、武藤英司 他

 昔の作品をバカにするのは人として卑怯だと思いながらもそうせざるを得ない作品としては白眉のユ58年制作のTVシリーズ(梅宮辰夫主演の映画も有名)。

 志村けんがやるババアの真似を真似ているのかと思わせる腰がひけた中腰姿勢、片足を一歩前に出した妙なキメポーズ、デッキの回転数を確かめたくなるスローな動き、腹が出た元スピードスケーターを思わせるピッタリ全身スーツ(宇津井健のスーパージャイアンツよりモッコリ度は低い)、相手との間に40cm以上の空間が常に確認できる牧歌的な戦闘、一抹の気合いも確認できない「ダァ」というヌケたかけ声…。不憫な要素は枚挙に暇がない。特に、平坦な道を走っていた王子が単にズッコケて大事なトランクを敵にとられてしまう場面では、男でも母性本能をくすぐられること必至。

 自分を宇宙連邦から派遣された王子と信じる妄想癖の中年男を不憫に思った周りの優しい人々が息子を思いやる老母のたっての頼みで口裏を合わせて芝居を全うする様子を克明に捉えたドキュメンタリー作。それが最も客観的な判断かも。(高)


こんなのこんなの、グウィネスじゃないやい!

恋におちたシェイクスピア SHAKESPEARE IN LOVE 

●発売元/CICビクター●124分●税抜16000円/DVD3800円●監督/ジョン・ン・マッデン●出演/グウィネス・パルトロウ、ジョセフ・ファインズ他

 前にグウィネス・パルトロウ主演の「スライディングドア」を観賞した時、筆者は女優の美しさに打ちのめされた。鼻の穴デザインの完璧さ。アメリカ人なのに「北欧」感を醸し出しす雰囲気。クールなスリムビューティー感。「白人女性以外は人にあらず」という誤った差別意識すら芽生えたものだった。

 当然、「ロミオとジュリエット」創作の裏を想像で描き、第71回アカデミー賞で主演女優賞を獲得したという今回の話題作にかける期待感にはかなり高いものがあった。同居人を実家に帰してから臨むのは久しぶりだった。

 それなのに。ああ、それなのに。作品を見届けた今、心に吹き抜けるのは冷たい北風。違う意味で打ちのめされた。こんなの、こんなの、グウィネスじゃないやい…。もし筆者が幼児なら、辺りをはばからず泣きじゃくっているところだ。

 敗因は明らかだ。髪型である。不自然なカール。中央の分け目。前髪と横髪を全て上から後ろへ引っ張った額フルオープンスタイル。加えて、眉毛が見えないほどの白塗りメイク。これらが相まって気持ち悪いと言っていい容貌を作り上げてしまった。せっかくの瑞々しいヌードも、髪型により必要以上に強調されたエラ張りで台無しだ。

 勿論16世紀のロンドンという設定のせいではある。公開時のCMを目にしたときから一抹の不安があったのも事実だ。俺のグウィネスはそんなハンデに屈するタマじゃないと信じていたが…。

 そんな中でも魅力を指摘せねばならぬなら、彼女が男に変装した場面をしぶしぶ提出する。女が芝居をやるのは禁止だったため、役者志望の彼女が男のふりをするのだ。短髪のヅラをつけ、つけちょびヒゲを装着した彼女はなかなか美男子。シェイクスピア役の男優が結構ホモっぽい容貌のため、男装したグウィネスとのラブシーンでは妖しい同性愛を覗く感じを楽しめるかも。

 別に特筆すべき演技ではないと思われ、なぜ今作品の彼女がアカデミー賞に値するのか筆者には解せない。審査員がつけヒゲ女の愛好者だったとしか思えない。重ね重ね、残念だ。(高)

▲16世紀英国の衣装はゴージャス。ビジュアル系やコスプレ好きにはたまらないものなのか。

▼元プリンス似の天才劇作家
▼それほど貧乳でもなかった

●グウィネス・パルトロウ GWYNETH PALTROW
ウィノナ・ライダーから役を横取りしたとの噂もあり!

 アカデミー賞受賞式ではウソ泣きスピーチで失笑を買ったグウィネス。ブラピとの婚約破棄後、ブラピの友達のベン・アフレック、ポール・マッカートニーの甥、ジェリー・サインフェルド、マドンナのレコード会社の社長…と数々の噂を提供中。さすがに「彼がいなかった最長期間は半年」と豪語するだけある。美人だからね。ま、しょうがないっすよ。


「SPEEDならやっぱヒトエ!」という人向けスプラッタホラー

アイドル・ハンズ IDLE HANDS

●発売元/SPE●91分●税抜15300円/DVD3800円●監督/ロッドマン・フレンダー

 マリファナ吸ってTVをみるだけの怠惰な生活を送る高校生男子の右手が突然制御不能になり、勝手に殺人を繰り返す話。首がもげたり、猫が目玉にかぶりついたり、手首を切り落としたり、切り落とした手をレンジでチンしたりとグロな場面が満載なためかR指定付きだが、描写にリアルさも陰惨さもないチープでライトでコミカルなテイストなので安心の観賞が可能。主演男優のオーバーな右手動かし芝居、殺されても甦って友を手伝うデブとチビの友情、手作りオモチャ感覚満載の特撮と見どころ探しには苦労しないが、最注目は主人公が恋するヒロイン役の女優。かなりイケてる。たとえて言うなら、SPEEDのヒトエを最も上質な方向にアレンジしたらこうなるに違いないという上玉。特に尻は近年稀に見る逸品。パーティー場面で見せるヘンな踊りも、HITOE'S 57 MOVEを彷彿とさせて好感。なお、観賞時のBGMにはブルーハーツの「僕の右手」を大推薦。(高)

▲ぼくのみぎてを知りませんかー!


美しすぎてテレること必至…少女の純真ファンタジー小編

フェアリーテイル FAIRY TALE A TRUE STORY

●発売元/LDC●98分●税抜16000円/DVD3800円●監督/チャールズ・スターリッジ

 もし妖精が飛んでるのを見たらどうしますか。きっと、ハエとか蚊だと思って殺虫剤を噴射するでしょうね。でも、第一次大戦下、英国の美しい田舎に住む少女二人は違いました。妖精の存在を信じる心が長じて、彼女らは写真を撮ったのです。そしたら、それが本物の妖精写真だと認められ、ホームズで有名なコナン・ドイルも出てきて本に載せたもんだから、静かだった田舎は大騒ぎ。金儲けを企む大人が大挙して押し寄せ、妖精の森は荒らされて…。とくれば、妖精は騒ぎの元凶たる少女を恨んで当然。ところがそこは優しい妖精さん。怒らなかったばかりか、行方不明だった少女の父親が帰ってくる手助けもしてくれたみたい。妖精さんも結構ミーハーな出たがり野郎だったってことかな。それとも単なるロリコンかな。どっちも違いますね。わかってます。でも妖精さん、「子どもの頃の純真な夢をいつまでも忘れないで」なんて書けない大人も許して下さいね。じゃ、来世で。(高)

▲美しい小川には蚊なんていなさそう。


白黒人vsカラー人の色っぽい新次元対決

カラー・オブ・ハート PLEASANTVILLE

●販売元/アミューズ●124分●発売中●税抜16000円/DVD4800円●監督/ゲイリー・ロス●出演/トビー・マガイア、リース・ウィザースプーン、ジョアン・アレン、ウィリアム・H・メイシー 他

 天気は常に快晴。気温は常に温暖。争いはなし。差別もなし。火事なんて起こらないから消防隊員の職務はもっぱら木から下りられない猫の救出。仕事に精を出す父親と、家庭を守る母親。子供は素直に親に従い、異性と手をつなぐだけでドッキドキのウブウブ…。

 そんな古きよき、半面退屈なテレビドラマの世界に入り込んだ高校生兄妹が、なんだかんだと騒動を起こすファンタジードラマ。付け加えれば、妹はあまりうるさくない濱田マリで、兄はより端正になったカビラ・ジェイと考えれば当たらずとも遠からず。こんな予定調和な「サザエさん」的世界観ではあまり興味がわかなくて当然だが、どっこい大作、これがかなりの意欲作。

 白黒テレビの世界が、カラー世界から来た兄妹の影響によって徐々に色づいていく設定が何よりいい。バラの花びら、車のテールランプ、女の舌、チェリー…。灰色だった一つ一つの物体がカラーになっていく様が実に鮮烈。色は溢れる生命の息吹であり、アダムとイブのリンゴの比喩。枯れ木に花を咲かせる花咲かじいさん的マジックを具現化。目が見えなかった人が視力を取り戻した時の感動よりは小さかろうが、恐らくそれと同種と思われる生の歓喜をひしひしと伝えてくる。そこらの何の変哲もない風景をこれほどまでいきいきと見せた作品はないと思われる。

 話は、白黒世界の秩序を保とうとする保守派とカラー化を進めようとする革新派の闘いを軸に展開。情けない番組オタクだった兄が途中からヒーローになってしまうのには少々閉口だが、白黒人VSカラー人という図式は、例えば『マトリックス』の描くコンピュータ対人間という一時代前の設定に比べると実に新鮮に映る。

 特筆すべきは、入浴中に風呂場が少しずつ色づいていくのを見た兄妹の母親が恍惚の吐息を漏らす場面だ。カラー化した顔を夫に気づかれまいと白黒の化粧を施す場面と相まって、単なるババア女優があれほど色っぽく見えたシーンを筆者は知らない。(高)


殴りたい顔No.1は聖人に決定!

CURE  キュア

●発売元/大映ビデオ●111分●発売中●税抜16800円/DVD4800円●監督・脚本/黒沢清●出演/役所広司、萩原聖人、中川安奈 他

 遺体に×の字が切り刻まれる連続惨殺事件。主演の役所(刑事)が問いつめても被疑者・萩原はのらりくらりかわすばかり。おうちを聞いてもわからない、名前を聞いてもわからない…。犬のおまわりさんの子猫ちゃんかテメーは! と萩原に対する憎悪がたぎってくるのがわかった。役柄だと頭ではわかっているが、別に和久井映見など興味ないが、顔を見ると無性に殴りたくなる。結局それは好演ってことなのだが、そう書くのさえなんか口惜しい感じ。

 心を病んだ妻が空の洗濯機を回し続ける場面、日常風景で淡々と繰り返される殺人場面など、確かに怖い。が、どこかヌケた印象も漂う。催眠術に筆者が胡散臭さを覚えるせいもあるが、より問題なのは

うじきつよし(心理学者)だろう。風貌がもろ健康的で知的さに欠ける。緊迫感を保持するにはもう少し体を絞る必要があったか。筆者が最も緊迫したのは、男根にコンプレックスを持つ女医の殺人場面。当然、男根の×の字切り裂きが期待されたのだが、残念ながら切ったのは喉元。サービスカット不足は深刻だ。(高)


全く同じ演技を繰り返した驚異の出演者たち

ER緊急救命室LIVE EAST&WEST

●販売元/ワーナー・ホームビデオ●EAST82分、WEST94分●発売中●税抜3980円(2本組)●監督/トーマス・シュラーム●出演/ジョージ・クルーニー、アンソニー・エドワーズ、ジュリアナ・マルグリーズ他

 4thの第1話「待ち伏せ」を収録。ERにTVの取材が入り、各セクションにカメラを設置、クルーにインタビューをしたり、治療の様子を追ったりする。

 手持ちカメラの多用で、次々と患者が担ぎこまれるERのエマージェンシーぶりが、車酔いしやすい筆者がオエッときたほど強調された以外、素人目にはこれといった特筆事項はないと思うが、中で目立ったのはTV取材班の傍若無人ぶり。邪魔なくせに権利ばっか主張するし、取材の口調がいちいちぞんざいでとげとげしいし、一般患者より内部職員を優先して処置していると言いがかりをつけるし、と、忙しいERクルーの神経を逆なでする行為を連発。ストレートな米国人気質を表してるんだろうが、命を左右する現場であれはいくらなんでもないんじゃねーか。まあ、「自分は職業柄感情をガードしてるから簡単には崩せない」と見得を切ったDr.グリーンが、暴行事件を問われた途端逆上するいい映像が撮れたわけだから、優秀な取材者だとも言えるが。

 一方、取材陣の失礼ぶりよりすごいのはこの第1話が生放送だったこと。東部と西部で2時間の時差があるお国柄ゆえ、出演者たちは東部(EAST版)と西部(WEST版)用に2度同じ演技を繰り返したらしい。一応目を開いて2本とも見た筆者が「全く同じ映像を2本に入れるなんて、セコい」と勘違いしたぐらいだから、出演者の演技の安定ぶりはかなり高い。特に、電気ショックで何度も蘇生を施される老人役には深いリスペクトを進呈だ。(高)

▲インタビュー他特典映像付き。▲むこうの現場ってラフだなぁ。▲4thでは2人の女医が新加入。


画面に青がはびこる「面白そうな」女性作

女と女と井戸の中 THE WELL

●発売元/アスミック・エース●98分●発売中●税抜16000円/DVD4700円●監督/サマンサ・ラング●出演/パメラ・レイブ、ミランダ・オットー他

 なんだかとても面白そうな映画なんですよ。 第50回カンヌ映画祭コンペ部門で絶賛を浴びてるし、主演のパメラ・レイブが豪アカデミー賞で主演女優賞を獲得してるし、公開時は恵比寿ガーデンシネマ2で劇場動員記録を樹立してるし、TVスポットのナレーションを岸田今日子が担当して「のぞいてごらんなさい」なんて言ってますから。

 そうんな資料掲載情報を離れても、古井戸、死体、消えた大金、中年女と少女の同性愛的関係、と面白そうな要素は多々あり。全編通して画面全体が濃い青で覆われているのもスタイリッシュ。「この『ブリーチ・バイパス』という技法が作品に不思議な魅力を与えた」なんて言いたい評論家とか、「ピカソの青の時代にも似た不安定さに好感」なんて言いたい芸術肌のカルチャー野郎は喜ぶんじゃないすかね。

 ですが、「面白そう」と「面白い」は違う、というのが観賞後の率直な印象ですな。確かに面白さの潜在能力を含んだ種子ではあったものの、発芽しただけで枯れてしまった植物、もしくは発芽できずに腐ってしまった植物、その名も「面白草」なんつって。

 この草が育たなかった最大の要因は、キャスティングにあると思います。ちょっとシュテフィ・グラフを思わせる中年女の方はバッチリです。田舎の農家で頑迷固陋な父に育てられたドン暗い女感たっぷり。問題なのは奔放な少女の方。「シン・レッド・ライン」にも出ていたというこのミランダ・オットー女優がすげー老け顔なので、少女って感じが全然しないんですね。役年齢35歳って言っても通用しますよ。資料がなかったら、中年女同士の話かと思ってたかも。この作品では二人の女の対比が効果的でないと魅力半減のはず。監督はこれがデビュー作だっただけに、その辺に青さが出たのかも…。ま、勿論この女優が筆者のタイプでなかっただけとも言えますけどね。(高)

▲ブルーといってもキタノブルーとは違います。


ブラピが初キッスでオロオロ…キュン!

ジョー・ブラックをよろしく MEET JOE BLACK

●発売元/CICビクター●181分●発売中●税抜16000円/DVD3800円●監督/マーティン・ブレスト●出演/ブラッド・ピット、アンソニー・ホプキンス他

 孤独な死神が一人の大富豪を迎えにくる仕事のついでに、交通事故で死んだ青年の体に乗り移って人間社会を体験。そこで富豪の娘に恋をしてしまうが、所詮二人は違う世界の人間(と死神)で…というお話。死神が乗り移った青年と娘は交通事故の直前に出会って互いに好意を抱いていた者同士で、その辺が「僕って何?」系のアイデンティティ問題にもからんでいく。

 あのブラッド・ピットが初めて本格的なラブ・ストーリーに挑戦! というだけでもう一般女子はウットリなこと間違いなしで、それは反面、一般男子は「ケッ」と斜に構えること間違いなしということだが、斜に構えたのが実は感動の涙を隠すためだったなんてことになりかねない一編。むしろ全体のトーンでいえば、男子ウケの方が強くてもおかしくないと言えるかも。

 まず、富豪の娘・スーザン(クレア・フォラーニ)の美人ぶりが抜群。全てが初体験のためオロオロしまくりの死神を導いてキスへと持ち込むくだりでは「やっぱ勃起してんのかな、ブラピも」と余計な心配をさせてくれるほど。

 富豪(アンソニー・ホプキンス)が死を悟ってから見せる人生への執着と諦観も、男子により響きそうな要素だ。出産という人生上の大きな記念品がない男は、人生に何を残せばいいのか悩みがちで、だからこそ仕事や肩書きにこだわるもの。本作で「ジョー・ブラック」という名前だけでは満足できず、死神にどこの誰かを問いつめる男の存在は示唆的。そんな中、死神との約束を守って正体を明かさず己の会社を追われた富豪と、見事な偽りの正体明かしを見せて富豪の名誉を回復させる死神。豪気な花火をバックに、愛する娘と恋人を置いて去ってゆく二人には、男のダンディズムを感じざるを得ない。

 そこいくと、ヒロインのスーザンは男性から見れば身勝手。運命的に出会った爽やかな青年だろうが、人前でピーナツバターをなめなめしてにやける死神だろうが、結局キミ、顔がブラピでありさえすればどっちでもよかったのねといじけざるを得ないのだ。(高)

 ▲フォラーニは伊と英のハーフ。▲死神博士とは大違いの死神だ。


罠にはめられた男の脱獄復讐ストーリー

14日 14 TAGE (英語題は 14 Days)

●発売元/オンリー・ハーツ●105分●発売中●税抜16000円●監督/ロランド・リヒター●出演/カイ・ヴィージンガー、ミハエル・メンドル他

 タダでメシ食えるし、独房ならタダで個室がもらえるし、泥棒が入ることもないし、実は刑務所っていいよなぁ、人権意識の発達で昔に比べて刑務所環境は格段にUPしているらしいし、1〜2週間ならむしろシャバより楽しいかもな、やっぱ阪神は落ちてきたし…。失業風が強い昨今、そう考えてしまうたわけ者は筆者を筆頭に多いはず。

 微罪を重ねて14日間の拘留刑をゲットした本作主人公の弁護士もおそらくそう考えた(阪神の件を除く)。ムショ暮らしを体験したスター弁護士としてマスコミの注目を集めるはずだった。しかし。14日目の朝、彼の独房からコカインが押収される。当然出所は不可能。彼は何者かの罠にはまったのだ…。 結局は詰めの甘い脱獄&復讐物語になってしまうものの、この設定は興味深い。リチャード・ギア主演でハリウッド版リメイクが決定したのも頷ける。ただ、主演のカイ・ビージンガーは、ブルース・ウィリスとハリソン・フォードとミッキー・ロークとおまけに関根勤にさえ似ているという強者。ギアも心して臨まないといけないだろう。

 そのビージンガーがほんの50ピストンでイッてしまうほど魅力フルだったのに彼を裏切るにつれ単なるブスに変貌する婚約者と、最初はシガニー・ウィーバーみたいで魅力のカケラもなかったのに脱走を手伝うにつれ美人に見えてくる女性心理学者。この二人の効果的な対比も興味深い。演出したのはどいつだ?と問いたいドイツ映画である。(高)↑99年9月号掲載分


ビデオをCD-ROMに変えると「リング」より怖くなるか!?

キラー・ネット 殺人ゲームへようこそ KILLER NET

●販売元/SPO●113分●8月6日発売●税抜00000円●出演/ダム・ウィリアムズ他

 呪いのビデオが謎の殺人事件を巻き起こすのは「リング」だが、これは呪いのCD-ROMが巻き起こす殺人事件のお話。殺人をシミュレートするオンラインゲームにハマッた大学生が、己を短小とバカにした女のデータを入力してプレイしたら、実際にその女が死亡。当然容疑者にされるが、真犯人は果たして…。まだアナログ的なテープからデジタルなCD-ROMに題材が進化したわけだし、さらに日本でも急増するネット犯罪ともリンクするわけで、話題性はたっぷりと言えるが、「リング」より怖さが進化したかというとそうは言えない。二重三重のどんでん返しに監督が気をとられたせいか、なんか散漫な印象強し。殺される女が異常に男顔(サッカーでいうとバティストゥータ)なのも大きな要因。同性愛志向まで視野に捉えていると考えれば、「リング」より進化したと言えなくもないのだが。(高)↑99年9月号掲載分


アジアと西欧の断絶を味わうのにいい戦争カメラマン映画

ウエルカム・トゥ・サイゴン  FRANKEY'S HOUSE

●発売元/HRSフナイ●108分●8月6日発売●税抜15800円●出演/イエイン・グレン他

 ベトナム戦争を描いた映画をみると、いや〜な気持ちになってしまいます。戦争ってヤだな〜という人類として当然の実感とは別に、「小さくて貧相なアジア人とデカくてたくましい欧米人」という構図が否が応でも目に飛び込んでくるからです。あなたもアジア人ならわかると思いますが、とりわけ筆者のボディはベトナム人の中に入っても貧相度では負けないぐらいなので、余計にガックリきてしまうんです。欧米人以外は人間とは言えないんじゃないか。そんな誤った差別主義が心にもたげてくるのです。戦場に飛び込む報道写真家たちの姿を描いたこの作品も、当然のように筆者をガックリさせてあまりあるものでした。ジェフ・ベックが音楽を担当していることも、マット・ディロンの弟が出ていることも、何の慰めにもなりません。その他もろもろの意味も含めまして、ガックリ。(高)↑99年9月号掲載分


少年のような目と心を持った人ならきっと大丈夫のはず…

なぞの転校生 THE DIMENSION TRAVELERS

●発売元/バンダイビジュアル●98分●発売中●税抜16000円/DVD3800円●原作/眉村卓

 新山千春って、真顔はいいけど笑うと頬がタコヤキすぎて辛い…との認識を新たにするには絶好の一編、兼、ウルトラマンティガ&ダイナ&ガイアで知られる監督が昔刺激を受けたNHK少年ドラマに捧げたオマージュ。会話の裏の本心を瞬間的に映像化、声尻のスピードを低速化、と随所に表現上の工夫が入っているとは思うが、転校生が核戦争で崩壊したパラレル世界から次元ジャンプしてきてなんちゃらという話は、20世紀末に生きる20代以上にはいかんせん食傷。10代でもどうか、ヒトケタ世代でなんとかって感じ。新山は迷わずタコヤキ大賞として、転校生役の佐藤康恵は肩幅大賞。観月ありさの後継者に任命。次元旅行者の男子役はにせジャッキーチェン大賞。伝統の棒読み大賞は主人公の幼なじみ役の男子に決定。全ての台詞は勿論、全ての動きまで棒読みという次元を超えた演技に注目だ。さすが次元旅行者。って、奴は普通の高校生役だ。(高) 

▲本作にコンビニは登場しないみたい ▲図書館の本に花を挟む場面には感銘

↑99年8月号掲載分


サンタフェの扉片手に観たい中年男とギャルの夢ロマンス

ルル・オン・ザ・ブリッジ LULU ON THE BRIDGE

●発売元/日本ヘラルド●104分●発売中●税抜16000円/DVD4700円●監督・脚本/ポール・オースター●出演/ハーベイ・カイテル、ミラ・ソルビーノ、ウィレム・デフォー、ジーナ・ガーション他

 45秒という非常にロングな尿シーンで始まる印象的な映画。自分の放尿時間がたかだか15秒と知る筆者としては、西洋人って陰茎だけでなく膀胱もデカイのね、と感嘆せざるを得ないが、これは糞尿譚では勿論なく、渋面の中年男と駆け出しヤング女優が繰り広げるファンタスティック・ラブロマンス。

 特筆すべきはヒロインのソルビーノ。横から見た鼻ラインが真に完全。に加えて、数年ぶりにサンタフェの扉を思い出す男子が続出の予感も漂う。上目遣いに笑う表情が、全盛時の宮沢りえを彷彿とさせるのだ。そんなナイスな女子が、イイ顔のしわオヤジと人目を忍ばずいちゃいちゃするわけで、羨ましくもズルくもある夢のようなお話だ。

 あらすじ。元サックス奏者が死体を発見。傍らの箱の中には蒼い光を放つ不思議な石が。一緒にあった紙には女優の卵の電話番号。石の力ですぐに二人はフォーリンラブ。女は運が向いて映画の主役をつかみ、男は謎の一味に監禁される。一味の手が女にも迫り、男から預かった石を川に捨てた彼女は、自らも川に身を投じるのだった…。

 女が大事なら素直に白状して石渡せば? 女も女でなんで石捨ててなお飛び込む? 監禁時に暴かれた男の過去はなんなの? と、解せない要素は目白押し。が、そんなこと気にする方がバカらしくなるラストが控えているので、拘泥せず漫然と見守る姿勢が大切。やはり中年男とギャルのいちゃいちゃラブなんて一瞬の夢でしかあり得ないのか…。(高)

↑99年8月号掲載分


井上順もどきと超男顔中年女二人のエレベーター脱出物語

ダウンタイム DOWNTIME

●発売元/アミューズビデオ●91分●発売中●税抜16000円●

 24階から息子を背負って飛び降りようとする女を、元警官の心理学者が一応説得に成功。翌日はエレベーター内に閉じこめられた彼女をその元警官が助け出そうと奮闘。ギスギスしていた二人の間にいつしか愛が…。極限状況からの脱出を描いたアクションとしては物足りないが、その中で進行する愛の物語としてもやはり物足りない。というか、登場人物全員に好感が持てないので辛い。目と心の健康によくない。子供までかわいくないときている。

 「マダガスカルの割礼を知ってるかい」が口癖の主人公(ポール・マッギャン)は、顔が井上順に似ていることだけが取り柄。「ファックオフ」が口癖のヒロイン(スーザン・リンチ)は、男と考えれば上の部類に入れてもいい顔の中年女。ビルの管理人は四六時中なんか食ってTVみてるデブ無能。エレベーター事故を拡大させる不良少年は、クロマニョン人というよりネアンデルタール人に近い顔のボスを筆頭に精液然としたまるだしバカ。ライフルでひと悶着起こすのはドアの音で壁の写真が傾くのを直すのが日課の神経過敏男。おおヤダ。このオエオエキャラの集結ぶりは、もしかしてイギリスの深刻な社会情勢を表現してたりすんのか? そりゃ表現は勿論自由っすけどもね。(高)

↑99年8月号掲載分


へぇキミ、ミシェルっていうんだ…ってな感じの伝記映画

ノストラダムス NOSTRADAMUS

●発売元/パイオニアLDC●120分●発売中●税抜16000円●カラー

 7月の恐怖の大王本番に向け、フーゾク店の名前やAVの題名などにもその影響が期待される昨今だが、本作はまじめなノストラダムス映画。予言をなぞるのではなく、暗黒の中世を生きた予言者の生涯を伝記風に描いている。フランス革命やヒトラーや原爆まで予言に含めたことは有名でも、人となりは有名じゃないわけで、この取り組みは非常に意欲的。非常に「知ってるつもり?!」的なだけとも言えるが。ミシェルというファーストネームともに意外だったのは、奴のモテモテぶり。世話になった学者の女助手や自分が診た患者に手をつけ、兄の妻から抱いてと何度も迫られ、王妃の心もしっかりゲット。ペストで人がボコボコ死んでいく中、結構やることやってた感じ。世界滅亡の幻視に悩まされながらも「楽園を見た。人類は生き延びる」と言えたのはそんなモテモテぶりのせいだろう。7月に降るのは奴が500年前にまき散らした精液なのか?(高)

▲ミシェル役はチェッキー・カリョ。

↑99年7月号掲載分


熱血漢は着ぐるみがお似合い

踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル

●発売元/フジテレビ●130分●発売中●税抜12000円/DVD3980円●出演/織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、稲垣吾郎、筧利夫他

 TVシリーズで派出所勤務にさせられた青島が湾岸署に復帰した後を描いた、97年12月放映のスペシャル版。刑事課から外され、部署をたらい回しにされる青島が、それでも持ち前の前向きさで事件に首をつっこむうちに結局活躍するお話だ。とはいうものの、本作の青島=織田にはほとんど派手な活躍シーンがない。売り物の熱き刑事魂を発揮する見せ場もない。事無かれ主義の権化・スリーアミーゴス、スッチーのふりで無理なハイトーンボイスを多用して見せた深津、髪のセットに3時間かける犯人像に本人イメージがダブッた稲垣、特別出演の広末などに活躍のチャンスを潔く譲った印象が強い。いいとこどりに汲々としない様子には、人気シリーズの主役を張る者の余裕が感じられた。唯一青島がグッと前に出たのは、同様に不遇をかこっていた室井=柳葉と、薄汚れたピーポくんの着ぐるみ姿で街中に佇んだシーン。冷遇された者同士の悲哀を醸し出すにはこれ以上ない名演出だ。ただ、ピーポくんの両目が明らかにロンパリだったのは、余計な事情を考えさせすぎ。(高)

↑99年7月号掲載分



切られるならナイフと歯とどっちがいい?

鬼畜大宴会

●販売元/ブロードウェイ●106分●発売中●税抜15800円/DVD4700円●監督・脚本・編集/熊切和嘉●出演/三上純未子、澤田俊輔、木田茂、杉原敏行他

 連合赤軍を思わせる学生運動組織が内ゲバで崩壊していく様を残虐描写満載で描いた実に不快な一編。ぴあのPFFアワードで準グランプリ、タオルミナ国際映画祭ではグランプリと、各所から高い評価を受けたが、ダイエット中の人からも高い評価を受けるのは確実。観賞後の食欲減退が必至なのだ。

 フォーク、ぼろアパート、今とは明らかに質の違うロンゲ、ビキニではない白ブリーフ(しみ付き)…。70年代を味わう余裕のある前半に比べ、後半は残虐リンチの目白押し。というかそれだけ。死亡は7。日本刀で切断される首2。ナイフで切断される陰茎1。歯で切断される陰茎1。猟銃で撃ち抜かれる頭1。猟銃で撃ち抜かれる膣1…。しかも飛び散る内蔵類の描写がなんだかリアル。もうわかったから許してと頼まない正常鑑賞者はいないはず。殴打と陰茎切断で単なる黒い物体と化した先輩を後輩が気持ち悪がって撲殺する場面では、「命の尊厳」を超えた圧倒的なおぞましさを確認した。子供に見せたくない映像としては秀逸だ。

 だが、残虐描写だけの映画ではない。当時の学生運動の閉塞感をしっかり伝えるのに成功している。例えばそれは、典型的な東アジアのブス女像を地でいくリーダー代行女を、麻原彰晃似のデブやパンヤオ・チューヤン似のメガネなど複数の男メンバーが喜んで抱いてしまうところに顕著。平和な現代日本の男性ならば絶対にやりたがらないはずの顔なのだ。にいさんたち、よっぽど煮詰まってたんだねぇと思わせる優れたキャステングと言えよう。でもヤだ。(高)



ネクロフィリアを題材にした少女のおとぎ話でしたとさ

キスト KISSED

●発売元/日本ヘラルド●78分●発売中●税抜16000円/DVD4700円●出演/モリー・パーカー他

 死姦嗜好もの。といえば、女の死体に射精してグヘヘと喜ぶヘンタイ男性が相場だが、ここでは端正な顔のスリム女性が主人公。死んだ小動物をなめたり体になすりつけたりして恍惚となっていた少女・サンドラが、成長して葬儀屋に就職。職権濫用で男性死体にキスして乗ってイッちゃうという設定だ。勃起しない陰茎でどうやって…という点が気になるが、彼女のセックスは非常にスピリチュアル。死体の周りを自転しながらぐるぐる回って裸で乗っかるだけで頭の中にぱーっと光が見えてイッてくれるから、男性側は楽チンそのもの。バイアグラも不要だ。

 ヘンタイには変わりないが、死姦ものにつきものの気持ち悪さはない。むしろ印象は爽やか純愛メルヘン。白馬の王子様が現れるのを待つ少女のメンタリティーと近いかも。光を多用して幻想的なエクスタシーを演出している感じ。肉感がなく、半開き目の作り方が巧みなモリー・パーカーの起用もツボにはまっている。

 ただ、死姦でないと感じないサンドラの愛を得ようと恋人が自殺を選ぶシーンは滑稽。陰茎丸だしで首をロープで結び、彼女の到着を待つ間約30分(推定)。普通の男なら途中で空しくなって止めてしまいそうなところをよくがんばった。王子様はたいへんだ。(高)

↑99年6月号掲載分


アイドル品定めカタログとしてはいいかも

ときめきメモリアル

●発売元/フジテレビジョン●90分●税抜15、800円/DVD3800円●2月4日発売●カラー●監督/菅原浩志●出演/榎本加奈子 中山エミリ 矢田亜希子 吹石一恵 他

 大ヒット恋愛シミュレーションゲーム「ときメモ」の実写版映画であり、人気ヤング女子が競演するアイドル映画であり、高3の夏休みに海の家でバイトする若者たちを描いた青春映画である。登場アイドルは5人。おれの高校にこんないい女は一人もいなかったぜバーローと自嘲しながらも、どれがいいかなと夢見がちに妄想しながらみるのがこの映画の正しい鑑賞法だろう。ってことで考える。

 榎本加奈子はミポリンをもうちょっと二流にした感じ。アステルのCMで見せた大股開きは魅力的だったが、いかんせん痩せすぎ。腰骨が当たって痛そうなので却下。その点中山エミリは重心が低くてどっしりしており、安心感ではピカ一。だがなんとなくバクを思い出させるし、「おっかさん」イメージすらあり、落選。「ピピン」ではただの美少女だった矢田亜希子は順調に成長して今や「キラパツ」。夜の女方面でもいけること確実だが、この映画をみて有田気恵と同じ面影があることに気づいたので涙をのんで見送り。山口紗弥加はほんとはかわいいのにこの映画では外れ役。髪をしばりあげてギャーギャー騒ぐ様はマルシアみたいでゲンメツ。で、残るは吹石一恵。声が格段に低く太いことを除けば言うことなし。フジ97ビジュアルクィーンの顔見せ興行的な印象は否めないが、ま、かわいいからいいじゃん、と思わせる輝きあり。

 と、こういう美女たちと一夏を過ごすうち、女子更衣室に隠れて覗きをするような情けない主人公(元スマップ・森似)が男らしく成長するわけ。この都合のよさはまさにゲームの「ときメモ」ゆずり。「仲間がバイクで死んだのさ」的な背景もあるし、台風という共通の敵にみんなで立ち向かうイベントもあるし、毎日悶々とズリこいて何かいいことが起こるのを待ってる年代の男子には甘く感じられる映画だ。でも、卒業式を終えた主人公たちが車に乗って颯爽と去っていくラストを見て「高校生6人、死の暴走!」なんて新聞の見出しを期待しちゃうような疲れ気味の30代には結構厳しい。(高)

▲もう一人の男子高校生役・池内博之はジャン・レノ似(もしくはたまのドラムス似)。音楽は「アルペン」広瀬香美。

↑98年1月号掲載分


アホの坂田の声をバックに酒を飲みたい

OSAKAビッグリバーブルース〜平成名探偵 阪田京介2〜

●発売元/シネロケット●85分●税抜16、000円/DVD3800円●発売中●カラー●監督/小出肇●音楽/内田勘太郎●出演/坂田利夫 秋本祐希 白鳥智香子 角田信朗 他

 アホの坂田の声はなんだかいい。富士通・タッチおじさんもそうだが、聞いていて耳に心地よい。周波数が波の人間と違うんじゃないか。α波も出てたりして。知らんけど。飲み屋で隣に居合わせた坂田の喋りを聞くともなしに聞きながら飲む日本酒はうまそうである。関西弁が嫌いな人でも彼の声なら大丈夫だろう。などと一部ライター(つまりおれ)が太鼓判を押す坂田利夫が人情もろい私立探偵を演じるシリーズの2作目である。

 久々に再会した刑事時代の先輩が数日後に殺されてしまう事件を坂田が解決するという内容自体は、はっきり言って気にしなくていい。この先輩が殺された理由に説得力を持たせてないところから考えて、あんまりストーリーを追って見る映画じゃないと判断した。ただ心を預けて坂田のセリフ回しと内田勘太郎の音楽に耳を傾けるのがいいと思うね。目も勿論とじちゃダメ。坂田の顔から王監督の顔を連想するのもまた一興。ハゲを小道具に使う大人の会話シーンもまた一興。

 一興といえば、今回盲目のヒロインを演じるのが「ビーチボーイズ」で竹野内の恋人役を務めた秋本祐希だというのもその一つ。ちなみに、以前ディズニーランドに一緒に行って遊んだ個人的な思い出があるのだが(といっても勿論取材だったけど)、当時に比べて彼女の鷲鼻が少しマイルドになったようだと一人ごつのも、個人的にはまた一興だ。(高)


↑98年1月号掲載分


邦題のつけ方が全てを物語るんだニャン!

誘拐騒動 ニャンタッチャブル THAT DARN CAT

●発売元/ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメント●○分●税抜00、000円●12月17日レンタル開始●カラー●監督/ボブ・スプアーズ●出演/エルビス君他

 田舎町の退屈な生活にうんざりしている女子高生の飼い猫が誘拐事件の犯人を追いつめるという動物大活躍ものコメディー。同じ動物でも犬は低能な存在として描かれ、鼠は猫の獲物として描かれ、牛や豚は死体を切り刻まれて食べられる存在として描かれるので、猫派以外の動物好きにはあまりお奨めできない。

 猫の名は発音が問われる「DC」。日本の中高年ならつい「デーシー」と言ってしまうところだが、本編では出演者が全員外人というだけあり、全て完璧に「ディースィー」と発音される。特に主演クリスティーナ・リッチの発音はこれぞ「ディースィー・オブ・ディースィーズ」と呼ぶにふさわしい。肉屋のデブ女が愛する男の会社の前に毎晩違う上質肉(リボン付)を置くという不気味な求愛表現とともに、本編の数少ない見どころの一つだ。

 勿論「この年末年始を気楽に愉快に過ごしたい日本全国の老若男女すべてにアピールするイチ押しのアクションコメディ」というリリース文句は嘘ではない。思想性が皆無なので脳神経を弛緩させて観る以外ないし、老人が重要な役だから老人は喜ぶだろうし、女子高生が出てるだけでほとんどの男は喜ぶだろうし、動物が出てるだけで女こどもは喜ぶだろうから。ただ「愉快に」と「イチ押し」という言葉が本当かどうかは保証しかねる。というか、間違っても保証しない。(高)

↑97年12月号掲載分 


気になる設定を出すだけ出して果てた?

ヘモグロビン HEMOGLOBIN

●発売元/アスキー ビジュアル エンタテイメント●93分●税抜16、000円●1月1日発売●カラー●監督/ピーター・スヴァテク●脚本/ダン・オバノン

 原因不明の敗血症に悩む色白で気持ち悪い男とその妻が訪れたのは、男の生地と目された孤島。そこは以前オランダ貴族の一家が移住した地で、男はその末裔だった。75年前に滅んだと思われていた一家の子孫は地下道で密かに生き延びていた。彼らは近親相姦のせいで変異した奇形人。島民勢との戦闘の末、男は奇形一家へ戻っていく。

 DNA、近親相姦、奇形人間と、扱っているのは魅力的なものばかりだが、どうも観た後わだかまりが。おっこれが伏線か、と思わせるものが全てそのまま触れられずに終わってしまうのだ。こつこつ集めたロータスクーポンなのに「ああ、これはもう使えないね」とそっけなく言われた感じ。おれがバカなのかと思って2回観たけどその感じは依然ぬぐえず。

 例えば、島民に男はほとんど見当たらず、いるのは女とこどもだけである。貴族の肖像に描かれたのと同じペンダントを持っていた女の突然死。島の住民が全員妙に色白である。島の実力者の娘が主人公夫婦を見て「あの人たち、かわいそう」とつぶやく。いかにも何かストーリーと重要にからんでいそうだなと思ってしまうのが人情だと思うが、全て空振り。もしや意図的なひっかけか、でもそりゃないぜオバノンのん、と愚痴りたくもなるってもんだ。

 安置所が併存されていて一般客が死体を間近に見られるホテル、弱々しかった男が胎児のホルマリン漬けを食べて急に元気になりつい妻(意外に好感)と激しく一発キメる場面、両性具有の死体食い奇形人間など、好事家どもを喜ばせそうな小道具が多いだけに、もう少しがんばって欲しかった気もちでいっぱい。(高)

▲変異体よりも不気味な主人公役はロイ・デュピュイス。ただでさえ白いのに化粧するシーンがあるのも不思議だ

↑97年12月号掲載分 


警備システムと連動した陰茎サックなんです!

ヴァージンスナイパー 美少女妖魔伝 VIRGIN SNIPER

●発売元/グランドスラムインターナショナル●80分●税抜15、800円●発売中●カラー●監督・原案/渡邊元嗣●出演/樋口みつき 蛍雪次朗 林由美香他

 白状すると私、女が精液をありがたがるっていう設定が大好きです。三度のメシよりは好きじゃありませんが。例えば、金持ちの美人が自らの美貌を維持するには精液を塗るのがベストと信じていて、美少年を何人も監禁して毎日新鮮な精液を採集して大事そうに毎晩顔に塗っている、みたいな場面をよく妄想していました。また、インポの男を女が手練手管を労して立たせようとする設定にも多大なエロスを感じてしまうタイプです。この作品は、そんな自分を再確認させてくれた点では評価できます。誰かに奨めなければならないとしたら、しょうがないからしぶしぶ自分には奨めることでしょう。

 インポで高齢な徳川19代当主・虎長の子種を豊臣家の末裔・ねね子がくノ一軍団(林由美香を含む)を使って何とか奪い取ろうというお話です。憎むべき宿敵の精液がなぜ必要なのかさっぱりわからないところに意味なく惹かれるべきです。さらにステキなのは、虎長がダイヤルロックのついた葵の御紋入りの金属サックをちんぽにはめていることです。警備のためです。不審者が開けると非常ベルが鳴り響くんです。セコムでしょうか。マヌケで美しいですね。樋口みつきより全然美しいです。苦戦の末に虎長がおったてたものの造型も安っぽくてそそられますよ。欲しい。あ、書いててまたじわっときたのでこの辺で失礼します。(高)

↑97年12月号掲載分 


違う線のコワさを狙ったマフィア映画なのか

フューネラル〜流血の街〜 THE FUNERAL

●発売元/タキコーポレーション●99分●税抜16、000円/DVD3800円●発売中●カラー●監督/アベル・フェラーラ●出演/クリストファー・ウォーケン クリス・ペン他

 マフィア3兄弟の三男が何者かに射殺され、一家を仕切る長男が、対立関係にあった男と真犯人を殺すが、精神病の次男が発狂して銃を乱射し長男は死亡、次男も自分の口中に一発ぶちこんで死亡、妻たち泣く、というお話。こう書くとたわいないマフィア映画みたいだが、実際のところ実にたわいないマフィア映画だ。 

 一家の誇りを維持するために無為な復讐に燃えざるを得ないマフィアというものの空しさを、精神を病んだ次男という存在を通して見事に語り上げた作品ということも可能だが、無理にそう積極的に言ったとしてもたわいなさは全く揺るがない。だってそんなマフィアの空しさなんて誰もがとっくに了解済の筈だ。了解済のことを今さら飽きずにやるならやるで、圧倒的な完成度とか美学とかこだわりとかを見せてくれりゃあいいと思うが、そうもなってないので嘆息。

 なんつっても役者の顔に凄みがないのが致命的。こわくないんだもん。全員和田アキ子にも負けている。次男役のクリス・ペンなど、誤解を恐れつつ言えば松村邦洋にしか見えず。勿論、ベネチア映画祭助演男優賞受賞のキレっぷりだから、違った意味では十分こわいけど。

 それでいうと、淫売系の女が性交後に自分の陰部に指をあてて射精された精液の具合を確かめる何気ないシーンが、リアルすぎて一番こわかった。以上。(高)

↑97年11月号掲載分 


ビー・バップ・ハイスクール 武闘派番長・血闘篇 BE−BOP HIGHSCHOOL

不良のパンツはジョギング型トランクス

●発売元/東映ビデオ●監督/成田裕介●原作/きうちかずひろ●出演/三国一夫 天野浩成 つぐみ他

 三代目トオルは、ちょっと前の五木ひろし(「長良川艶歌」あたり)と最近の三浦友和(今年の夏競馬CMあたり)を足してみて一の位だけ計算間違いしたような顔つき。三代目ヒロシは髪質が柔らかいのか、髪型が少しペシャッとなりがちな19歳。なんとなく両者とも、顔の中に初代(中村トオル&清水宏次朗)の面影を引きずっている部分が確かにあるところが、シリーズものとしては美しい。

 そんな二人の三代目襲名記念お披露目対決の相手は城東工業(「城東? 上等じゃねーか!」という期待されたダジャレは一回も登場せず)。城東のナンバー2がそろそろ自分の名前を売ろうと街中で派手にボンタン狩りを開始、そのうちトオルも不意打ちで捕まってボコボコにされてしまうが、結局はトオルが気合いを入れ直して勝つ。めでたしめでたし。人気シリーズらしくストーリー展開は安心感大。仮に音声なしの早送りでも話の流れは十分理解できるに違いない。

 でもせっかくだから「エアマックス狩り」「たまごっち狩り」などの「○○狩り」の元祖ともいえるボンタン狩りを標準速度で楽しみたい。作品中では8本のボンタンが奪われる。ということは8本のパンツが現れるわけ。これは男子不良高校生の下着事情に興味津々の一部好事家には堪えられないサービスカットだ。  簡単に要約すれば、近所のスーパーで購入したっぽいジョギングタイプの柄物トランクス4人、無地トランクス2人、ビキニではない黒ブリーフ1人(もう1枚は目視不能)。グンゼYG白と横チンは確認できず。もしおれだったらパンツも絶対脱がすけどな、陰毛も剃ってやるけどな、結構すぐ泣いたりしてクク、と考えるのも楽しい。そうはいってもお年頃だし、脱がしたらすげーのが出てきて自信なくすかもしれないのが恐くてできないのかなムフ、などと的外れな推測をするのも自由。不良のち○ぽって結構興味ないですか。そうですか。(高)

▲ヒロシは応募者1000人を越えた3代目ヒロシオーディション出身。トオルはNHKの朝ドラ「走らんか」出身

↑97年11月号掲載分 


連続殺人犯の母親が一番恐いサイコ・スリラー

アグリ THE UGLY

●発売元/エスピーオー●91分●税抜15、800円●発売中●カラー●監督・脚本/スコット・レイノルズ●出演/パオロ・ロトンド レベッカ・ホッブス他

 NHKの「あぐり」や鈴木亜久里のイメージに引きずられてこの映画を観るのは得策でない(当たり前)。
 粗暴な警備員と暗い照明が印象的な精神病院に監禁されている連続殺人者のもとに、薄い唇と発達したエラと先鋭的なアゴが印象的な女性精神分析医がやってきて、深層心理を聞き出していく。その過程で明らかになる殺人者の醜い分身「アグリ」は彼に殺人を強要する存在だ。
 そういう存在が棲みついたのは不幸な家庭環境で育った少年時代が原因という設定は相場通りで、特に大量殺人者の心理に関する新しい発見や提示があるわけではないが、映像的には結構ひきこまれる。出てくる血が全て黒かったり、瞬間ズームやピントぼかしを多用したり、フレームを左右に小刻みに動かしたり、今襲われるかもしれないと分析医が想像した虚構を現実にしつこく挿入してみたり。なんとなく全体の色合いには「ツインピークス」、画面の動きには汁がハートになって終わる今のカップヌードルCMが感じられる。
 もっとも心に焼き付くのは、群を抜いていやぁな感じを残す母親役の風貌と演技。特に、些細な失敗をした幼少の殺人者に「ドゥユアンダスタン? ドゥユアンダスタン?」とクレッシェンドで詰め寄る場面には心底からオエッ。だからといって大量殺人もやむなしと思ってしまわぬよう思考を抑制する意図こそが、現代人には必要かもしれない。必要じゃないかもしれない。(高)

↑97年11月号掲載分


30代既婚男向けの切ない『バケルくん

クローンズ  MULTIPLICITY

●発売元/SPE●117分●税抜15,800円/DVD3800円●10月22日発売●カラー●監督/ハロルド・ライミス●出演/マイケル・キートン アンディ・マクドウェル他

 クローン羊のドリーもびっくりのクローン人間譚。でも遺伝子遺伝子した最先端科学技術感は皆無。自分の身代わりがいたらなぁという誰もが持つ虫のいい願望ワールドだ。藤子不二雄『バケルくん』と近いかも。内容的には邦題より原題の方が的を得ている。まあ「MULTIPLICITY」(=多様性の意)って言われても日本人としては困るもんな。
 話は、仕事が忙しすぎて家庭をかえりみないモーレツ社員である主人公が仕事も家庭も趣味も満喫しようと自分のクローンを作るが様々な問題が…というわかりやすいもの。残業続きで家にたまにしか帰れず、愛児から「パパ今度いつ来るの?」と言われて胸を痛めてる編集者などには特にお薦めだ。  細かい細工もぐっとくるもの多し。オリジナルとクローンが小便しながらちんぽを気にしあったり(←男だねぇ)。コピーのコピーを続けていくと線がかすれてくるのと同じで、クローンから作ったクローンの質が劣化したり。監督わかってるじゃんって感じで小気味よい。更迭されたサッカーの監督とは大違いだ。
 結局生活はうまくいかず、妻子は実家に帰り仕事もクビになるのだが、原因は情報共有の不徹底にあった。クローンとオリジナルの各々が妻に対して言ったことなどを報告しあっていないために主人公の人格同一性が揺らぎ、周りが不審に思ってしまったのだ。作品ではそれが欠かせない展開だからいいが、そこさえおさえとけば身代わりをたててもうまくいっちゃいそうだということが結構恐い気がする。記憶が連続していさえすればコピーだって全く一個の人格でありうるってことだから…。
 そんな「おれって何」的な存在論上の問題提起(?)も含みながら、最終的には幸せな家庭と本当にやりたい仕事を手にするし、気になるクローンたちのその後もしっかり語られるし、はっきり言って涙が☆キラリ。おれが高校野球の入場行進だけで泣くような涙腺軟弱野郎だってことを割り引く必要はあるが。(高)

▲マイケル・キートンの1人4役は完璧。特に質の劣化したクローン4号のキレぶりは出色。爽やかでさえある

↑97年10月号掲載分


女体派タレントの苦笑イメージクリッ

SASORI IN U.S.A. ロサンゼルス刑務所 女囚701号"さそり"

●発売元/ポニー・キャニオン●86分●税抜15,800円●10月17日発売●カラー●監督/後藤大輔 ●出演/斎藤陽子 杉本哲太 越智静香 菊池隆則他

 長野朝日放送からトゥナイト�の司会に抜擢されその豊満ボディーで名を馳せた斎藤の映画初主演作。25年前梶芽衣子主演で公開された、劇画界の巨匠・篠原とおるの名シリーズが復活、ってことはさておき、さ、この映画の見どころは?
 �杉本哲太と女性上位でまぐわうシーン。公称93cmの巨峰を鉛直方向にぶらさげてるのが横から見える(乳首露出なし)。�恋人との思い出の記念写真に写っているオレンジのビキニ姿。全編を通じ正面から谷間をはっきり確認できるのはこれぐらい。�刑務所で先輩女囚からむんずと胸をつかまれるシーン。白人女性囚人が鉄格子ごしに、歩いてきた斎藤の左胸をわしづかみ。特に表情の変化は楽しめない。
 以上。読者諸君はこの3点のみに留意して鑑賞すべし。おしまい。  ……と投げやりに原稿を終わらせたくなるほど、斎藤のボディーを観る以外にこのビデオの楽しみは発見できなかった。いや、まあ、斎藤をムチ打ちの刑に処すムチのスピードが馬場の十六文よりも遅いとか、女囚をレイプする刑務所長の額にVの字型に浮き上がる見事な血管とか、帰国子女の割に下手な斎藤の英語発音とか、明星麺屋佐吉のCMよりはまだマシに映っている杉本哲太とか、盲目の素人女が敵を一発で射殺するミラクルさとか、苦笑いの道の通(ツウ)ならば結構楽しめるのかも。
 これは「究極のエロティック&バイオレンスのエンターテイメントムービー」(パッケージより)というよりは、「アナウンサー出身セクシータレントの壮大なイメージビデオクリップ」と考えた方がいいのかもしれない。ただ、そう考えると(そう考えても)余計なシーンが多すぎというか、肝心なシーンが少なすぎというか…。痛しかゆしである(少し違うか)。確かに体当たりの演技には見えた来年30歳の彼女に次回作が回ってくることを祈りたい。(高)
▲ここの刑務所では囚人服が全員ミニ。パンツ的には、越智静香はもろ見えだが斎藤陽子は1カットも見えず。

↑97年10月号掲載分


日本劇すら難解…いわんや中国時代劇を

スウォーズマン 剣士列伝 SWORDSMAN

●発売元/東和ビデオ●117分●税抜16,000円/DVD4800円●11月7日発売●カラー●監督/キン・フー●出演/サミュエル・ホイ イップ・トン ジャッキー・チョン ラウ・シュン他

 舞台は明の時代の中国。と書いても何も浮かばない自分が情けないが、とにかく古来より受け継がれた武術の秘伝書が盗まれ、それをめぐっていろんな剣士が争う「スーパー・アクション時代劇」。
 しかし、日本の時代劇すらよくわからんのにいわんや中国の時代劇をや(=まして中国の時代劇ならなおさらよくわからんのはいうまでもない)。だが、もう一つの要素の「アクション」もまたわからない。闘いの最中、どっちが勝ってるのか負けてるのかがわからん。どっちも布地量の多い重そうな服だし色合いも差がないし。みんなヒゲ面で天地逆さにしてもやっぱり顔に見える、みたいな奴ばっかだし。終わってどっちかが死んでやっと「あ、そっか」とわかる感じ。
 決まり手もわからん。どの攻撃がどんだけダメージを与えてんのかっていうのが伝わらない。「振風拳」とか「打破拳」とか口に出してる場合もあるが、それらの違いもわからん。「酔拳」ならわかったんだがな。ウルトラセブンの「アイスラッガー」は理屈がわかるけど、キカイダーの「チェンジエンド」はどうもよくわからない、みたいなものか。
 そんな見方しかできない低能なおれには「ワン・チャイ」シリーズのツイ・ハークも世界五大巨匠のキン・フーも猫に小判であり豚に真珠であった。ただ、宮中で権力を握っている宦官が岸田今日子と酷似していたことは有意義な発見だったと言って過言ではないだろう。(高)

↑97年10月号掲載分


やったぜミスター「カロヤンアポジカ」

うなぎ U・NA・GI

●発売元/ケイエスエス●117分●税抜16,000円/DVD4800円●カラー●監督/今村昌平●出演/役所広司 清水美砂 倍賞美津子 柄本明 市原悦子 他

 単なる地味俳優だったと思われる役所が一躍脚光を浴びることとなった一作。一般には「ああ、カロヤンCMの人」ぐらいしか認識されてなかったのでは。正解だったなカロヤン。関係ないが、役所と古谷一行なら迷わず役所だ。古谷だと鼻の穴が気になって話に集中できない…。
 不貞を犯した妻を殺した男(役所)が仮出所して床屋を開業→人間不信で気を許せるのはうなぎだけ→自殺未遂の女(清水)を助けたのが縁で一緒に働くことに→次第に周りに心を許し始める男→が、過去を知る男が現れて…。赤道まで行って産卵、千キロ以上泳いで日本の川までたどりつくといううなぎの壮大なライフサイクルとダブらせた見事なストーリー構成だ。なんちってさ。
 それもそうだが、妻を殺したての男が朝自転車で駐在所に向かう妙に日常的なシーンとか、整列して走る青年団の列に反射的についていってしまうところとか、市原悦子の錯乱ダンスとか、柄本明の堂に入った前科男姿とか、一つ一つの場面をほほうと眺めるのが楽しい。腐り始め(?)のいい感じが出ている清水の濡れ場も巻き戻して観たいものの一つ。
 作中役所がうなぎをいとも簡単につかむシーンがあるが、これはすごいことだ。最近撮影でうなぎを一匹熱湯責めで殺すという経験をしたのだが、生きうなぎはマジでつかめないのだ。さすがはカンヌ映画祭グランプリ作品主演男優。

↑97年9月号掲載分


十人もいりゃ一人は…といかないのが人生?

素人天国SECRET秘密の花園

●発売元/スリーヴィ・ジャパン●70分●税抜15,800円●カラー●監督/天野しゅうけい 干支独歩●監修/藩平太郎●出演/素人現代ギャル

 「本人出演再現ドラマ10人10話オムニバス第3弾! 今回は多数の応募の中から人にいえない私の秘密をテーマに厳選! そこまでやるか−−素人だからこその衝撃波!」と、忠実にリリース資料を抜粋すればわかるように、これは素人のエッチな体験を素人本人が出演して再現してみせたという「現代ギャルのSEX FILE」。露出狂、投稿マニア、覗き、不倫などなど気になるテーマ満載。既婚者のおれとしても、気合い入れて妻子実家に返しましたよ、ええ。仕事の邪魔するなとバシッと言い放ってね。# で、観ました。……フェラがない。アラ〜ッ。なんでどうしてなぜですか。ダメなんすよおれ、フェラがないと。一応一瞬あるにはあったんですがね、5秒ぐらい…。ま、フェラなどなくてもよく、とにかく素人という設定がありさえすればよく、「彼にロケット花火をあててケガさせた私、結局彼のロケット花火を入れられちゃいました」的なノリが好きな男性なら喜んで観られること請け合い。# 出演者の顔ぶれは、チャラくずれ、マイラバのアッコくずれ、女子プロレスラーくずれなど多彩。中でもおれのイチ押しは「あ・お・か・ん」という話のヒロインである池島多香子さん20歳M学院大学2年。なんといってもアルフィーの高見沢を彷彿とさせる風貌が魅力です…。 ↑97年9月号掲載分


# #観てるとたまきんがキリキリくる冤罪映画

判決 CRIME OF THE CENTURY

●発売元/エムズピクチャーズ●115分●税抜15,800円●9月19日発売●カラー●監督/マーク・ライデル●出演/スティーブン・レイ イザベラ・ロッセリーニ �/FONT>

 誘拐ものであり法廷ものであり冤罪ものであり死刑ものという重い映画。ドイツ移民の主人公が、警察・検察の手によってリンドバーグの息子の誘拐殺人犯人に仕立てられ、ついに電気椅子へ…。# 実際の事件が題材なので覚悟を持って観ないときつい。陪審制、人種差別、マスコミ報道、死刑制度など、この映画が提示する問題は多くまたどれも重要だ。# その辺は難しいので抜きにして、おれとしてはたった一度の嘘が死を招いたという事実にがっくりきた。主人公はそうとは知らずに身代金の包みを預かってしまい、その中の紙幣1枚を街で使ったことを契機に逮捕されるのだが、尋問で他には持ってないと言ってしまうのだ。実は大金を壁に隠していたにもかかわらず。当然嘘はばれ、後は警察の謀略のなすがまま…。そんなの嘘つく方が悪い、とは少なくともおれには言えない。そこまでキッチリしないと生きる資格がないってのは人間に対する神のいじめだと思う。そう思うと金玉がキリキリくる。# 個人的に琴線に触れたのは、妻が監禁中の夫に投げかけた「あなたは不器用なくせに、うまく立ち回ろうと思ったのね」という一言。ちょっと聖母マリアの姿を思い浮かべたね。よく知らないけど。妻というのはこういうことを言える人であってほしいと思ったんですが。 ↑97年9月号掲載分


##あいだももにつられて観るとガッカリ度

陽炎3 KAGERO3 ●発売元/バンダイビジュアル●86分●税抜16,000円●監督/吉田啓一郎●出演/高島礼子 深水三章 火野正平 長門裕之 あいだもも 赤座美代子 他

 女胴師・おりん(高島)が、ヤクザ同士の抗争に巻き込まれつつ最後は敵の組を痛快にやっつける、全くもって安心して見ていられる世界なんす。まあ、こういう伝統の様式美に文句をつけるのはお門違いでしょうけどもね、長門裕之にヤクザの親分はもう無理じゃないすか。貫禄なし凄みゼロ威圧感皆無。いくら老いぼれ組長とはいっても少しは鋭い眼光を見せないとねぇ。あの下まぶたのふくらみで怒鳴りつけても滑稽なだけ。きんさんぎんさんのXデー的なコワさはあるが。

 まあそれはいい。長門はそういうものだと思えばよいだけ。しかし。あいだももは何のためにいるのさ?からみはたった40秒、かつて美乳と騒がれた乳房登場は15秒弱、乳首登場時間に至っては0・2秒ですぜ。これが五社仕込みの「妖艶なエロチシズム」なの? 違うよなぁ。

 他にもおりんを助ける侠気派の博徒(深水)が財津和夫に似ているためかやけに気弱な感じに見えたり、昭和6年の設定だが火野正平のセリフ回しだけ妙に現代的だったり、死闘で傷ついたおりんが海に流されるラストがいかにも続編作れそうにしとこ的だったりと、ひねくれヤングには見どころ豊富。

 でも高島礼子はいいよぉ。日本酒で一緒にやりたい女ナンバー1との思いを強くすること確実。無論酒は黄桜で。

↑97年8月号掲載�/FONT>


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