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吐瀉物好きをも満足させる
韓式ラブ茶番感激コメディ長編!

猟奇的な彼女 
MY SASSY GIRL

●発売元/アミューズピクチャーズ●124分●発売中●監督・脚本/クァク・ジェヨン●出演/チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン、キム・イル

「ぶっ殺す」が口癖の女子大生と気弱な男子大生の恋を描く韓式ラブコメ。韓国では500万人を動員、スピルバーグの会社がリメイク権を獲得したことでも話題のヒット作だ。「猟奇」(ヨッキ)は、韓国では「クレヨンしんちゃん」などにも使われる語で、「かわいいのに突拍子もない」という意味。ちなみに香港での題名は「我的野蠻女友」(私の野蛮な女友達)だ。

 主演女優は黒谷友香featuring市川実和子withおニャン子クラブで高島忠夫の真似していた女、といった面持ち。少々ギスギス系だが美人。生意気で凶暴で正義感が強いヒロインを、松たか子ほどあざとくなく好演。最も印象的なのは二人が出会う電車の泥酔芝居。逆流したゲロを口内でもごもご弄びつつ嚥下するも堪えきれず爆射する一連の嘔吐表現が出色。ゲロ自体も色、つや、粘り、半端な消化感に至るまで実に写実的。これは明らかに嘔吐表現の金字塔。美人女優にここまでやらせるとは日本語でも十分に猟奇的と言えよう。

 全体は三部構成。嘔吐も含めて鈍いドタバタ喜劇然とした一・二部と、突如抒情的な様相を呈する三部の対比が効果的だ。韓映には必要以上の辛辣を心がける筆者ではあるが、男を山の向こうまで行くよう命令し、女が本心の叫びを発露する場面では、はるか彼方で手を振る男の間抜けなシルエットを眺めながら、茶番が感動へと昇華する小奇跡を感じた。(高)2003.07

▲生意気な女も父には弱い…儒教!

私的オススメ度
☆☆☆☆
男子大生の名・キョヌは漢字で書けば「牽牛」。七夕ですな。


台所の水切りネットを使う集団自殺を追った物語
……だったらいいのに

集団自殺ネット
SYUDAN JISATSU NET

●発売/ブロードウェイ●85分●発売中●構成・演出/白石晃士●演出助手/栗林忍、磯田修一

 インターネットを通して知り合った自殺志願者たちの「ネット心中」をテーマにしたフェイク・ドキュメンタリー。それを見た者は強く引き込まれて自殺願望が増すという謎のネット映像を取材班が追う構成で、「ブレアウィッチ・プロジェクト」を「リング」で味付けした感じ。潜入取材担当の中年男が醸し出すやさぐれ感が妙に心地よいし、追跡班の女性が童顔で微妙にキュートだし、自殺志願者のリーダーの東北方言が絶妙に癒し系だし、チャームポイントを探し出すのはそれほど苦でもない。が、それにしても、最後に披露される謎の映像の表現はあまりに稚拙&安易。暗さの中で点滅する光に吸い込まれるのは、虫ぐらいでしょうよ。あんなのが「ネット心中」多発の誘因と言い張れる制作者サイドの心中や、いかに。(高)2003.07

▲ネット自殺はマスコミを賑わせるが、この作品は…

私的オススメ度
☆☆
カメラの前で手首をかっ切るシーンは迫真。少しヒキました。


革命的におもしろい、とは言えない、
カリスマ革命家の記録映画。ちぇ…

チェ・ゲバラ 人々のために 
CHE,UN HOMBRE DE ESTE MUNDO

●発売元/アップリンク●89分●税抜15800円●発売中●監督・脚本/マルセロ・シャプセス●撮影/ウンベルト・ヴァレラ●音楽/ルイス・マリア・セルラ

 キューバ革命に大きく貢献した伝説の革命家、エルネスト・チェ・ゲバラ。本作は、キューバのみならず世界各地でいまも英雄視されるカリスマの人間像を、ゲリラ戦をともにした退役軍人や実の娘など、彼を知る人物のインタビューで綴った長編ドキュメンタリーだ。ちなみに「チェ」は本名でなく愛称で、母国では「オイッ」と呼びかけるのに使う言葉らしい。

 革命後、大臣になっても労働奉仕に励む姿など、当時の貴重な映像がふんだんに挿入されており、彼の功績を理解している人にとっては資料的な価値が高い。祖国アルゼンチンに複雑な思いを持っていた、離婚して一月で再婚した、喘息に生涯苦しめられたなど、生身の人間としての彼を理解するのにもいい資料だろう。

 だが、Tシャツのプリントや、マラドーナの入れ墨や、浦和レッズサポーターのフラッグなど、ベレー帽にヒゲヅラで遠くを見据える印象的なビジュアルでしか彼を知らない者にとっては、非常に退屈な一作。断片的コメントの連続だけではゲバラが結局なにをした人なのかさっぱりわからない。ジョン・レノンが「あのころ世界で一番かっこいいのがゲバラだった」と語った意味などは全然伝わらない。別の言い方をすれば、「オイッ、おまえら、ちっとは歴史の勉強しろよな」と責められている感じがする一本。ちぇ。(高)

私的オススメ度
☆☆
南米の男の顔って実に強力。ゲバラって名前も強力ですね。

▲ベレー帽界の帝王(漫画家除く)



性器がもげる両性具有者を吉本多香美が熱演した
失笑ファン待望の一作

樹の上の草魚
KI NO UENO SOUGYO

●発売/ベンテンエンタテインメント●86分●発売中●税抜16000円●出演/吉本多香美、西川忠志、筒井康隆他

 両性具有者の恋愛という真剣で難しいテーマなのに、この腹の底からわき出る失笑感はなんだ。全シーンがいちいち芝居がかっちゃってます。各々の役者が、相手のセリフが終わるのをいまかいまかと常に待ち受けている感じの緊迫感。さびれた場末の小劇場にいるみたいで鑑賞者側は含み笑いの連続、また連続。特に失笑好きを捉えて離さないのは、ペニスがとれて女性の服・髪・メイク姿になった主人公を見て、道行く人々が入れ替わり立ち替わり「オオッ」とわざとらしく振り返るシーン。小学校低学年時代に描くマンガを髣髴とさせ、実に笑えてナイスです。他にも、時間が止まったような立ち回りを見せる多香美、もげたペニスの箱を大事に抱えて逃げまどう多香美、樹上で枝に全裸で寄り添う多香美など、見逃せない名場面には事欠かず。ただ、諸手を挙げて推薦できないのは、もげそうな陰茎や膨らんできた乳房に触るという、このテーマには絶対必須と思える場面がないから。必然性のない樹上ヌードはOKで必然性十分の性器タッチはなしなんて野暮だぜ、多香美! (高)

▲萩原朔太郎の詩を思い出させる樹上ヌードは見逃すわけにいかないぜ!
▲失笑性の高さでは菊池則江の熱演も見逃すわけにはいかないぜ!

私的オススメ度
☆☆☆
失笑エンタテイメントの新次元に挑んだ意欲作。公開は97年。



「少林サッカー」や「マトリックス」他を
混ぜたビビンバ学園アクション作!

火山高 
VOLCANO HIGH

●発売元/アミューズ●108分●税抜16000円●発売中●監督/キム・テギュン●出演/チャン・ヒョク、シン・ミナ、キム・スロ、クォン・サンウ他

 まず、タイトルのロゴにホレた。学ランの金ボタンに彫られたかのような字形が実に素敵。「高」の字はどう書いてもカッコよくない、というのが、「高」を含む名字を持つ筆者の幼少時からの持論だったが、このロゴによってそれは見事に覆された。「そっか、なべぶたはこう書きゃいいんだ」と、個人的感激もひとしお。韓国様の力を否応なく再確認。

 韓国様のスゴさは内容的にも再確認。ここまで臆面なく、むしろ威風堂々とヒット映画をパクれるのは才能といえるだろう。主な元ネタは「少林サッカー」と「マトリックス」。漫画っぽい話を漫画っぽく仕上げるテイストと、ワイヤーワークを多用したアクション表現の組み合わせ。「ドラゴンボール」や日本の不良番長ドラマの影響も受けているはず。なんでもすぐ混ぜたがるビビンバ気風が感じられる。

 と、問題なく楽しく観られる一本だが、韓国様のパワーもそこまで。観終わった後はどうも物足りない。「学園鎮圧教師五人衆」とか「氷の宝石」とかキャラ設定の妙は認めるが、いかんせん出てくるだけ。それが物語と有効にはからまない。五人衆のリーダー(ホ・ジュノ)なんか、実にイイ顔してるのに、主人公との過去のいきさつが省かれているので引き立たず。学校一の力を持つ番長(クォン・サンウ)も、せっかくの松岡修造顔が生殺し。アクション的にも終始「カメハメ波」的な攻撃ばかりだから途中で食傷。暴力が支配する荒廃した学園で生徒と教師が覇権争いを繰り広げるという破天荒でワイルドなイメージとは裏腹に、エロもグロもないし誰も死なないし、結構穏健。あれだけ超人揃いなのに、生徒が退学を異常に恐れているのは、日本より壮絶な受験戦争の副産物? なんて同情も可能なほど。また一つ韓国様の弱みを握れたってことでは喜ばしい一作だ。(高)2003.05.27

私的オススメ度
☆☆☆
シン・ミナ嬢の学ラン姿は凛々しい。でも少しベトナム顔か。

▲ラブシーンはシャワー室での一回だけ。淋しい
▲主人公は幼少時に落雷で超強大パワーを獲得
▲怪力の無情組長は野人・岡野のパクリ。違うか
▲女子剣道部副部長の顔はNOKKOのパクリ。違うか

チャン・ヒョク Jang Hyuck
ズッコケフェイスの多用が少し気になるかも…
1976年生まれ。韓国の若手人気青春スター。「T.J Project」名義でCDデビュー済み。強大なパワーで激烈な学内闘争を終結させる武道マンを演じた本作では、ラフでがさつな容貌に甘んじているが、実際はもっと軟弱な優男系�


あの顔でトップ・ストリッパー?
東洋の神秘!or西洋人の悪趣味!

ブルー・イグアナの夜
DANCING AT THE BLUE IGUANA

●発売/パイオニアLDC●124分●5月30日発売●税抜16000円●出演/ダリル・ハンナ、シーラ・ケリーほか

 カリフォルニアのストリップ・クラブの日常を描いた本作。期待に反して官能とは無縁の、気怠さだけが強調された一本。特筆事項は3点。一つ目は全編即興で撮られたこと。ストリッパーの希望レスな感じをリアルっぽく見せるのには奏功。二つ目はダリル・ハンナ。1960年生まれの高齢ながら、頭が弱くて可愛いトップダンサー役を、無理な姿勢をとった際に年輩ならではの筋張りをさらす以外はどう見ても20代の裸体で、熱演。三つ目は東洋系のサンドラ・オー。ちんちくりんの目と低い鼻を備えるのっぺりした顔立ちは一種中村俊輔入り。主役級なのに宣伝パンフにソロ写真が一人だけ載ってない点からもヤバさは推して知るべし。この人だけ日本の温泉街の場末のストリップ小屋っぽいが、のっぺりした本編の象徴的存在ではあり。(高)2003.05.27

▲「フェラはいくらだ?」を繰り返すおっさんに好感

私的オススメ度
☆☆
☆一つは意味なく登場のロシア人殺し屋役に進呈。いい顔!


ムーンウォークと爆笑問題の太田がポイントの「人形劇」

The AURORA〜海のオーロラ〜 The AURORA

●発売元/バップ●91分●発売中●カラー●税抜15800円/DVD4800円●監督/菅野嘉則

 いしだ壱成・石田純一親子や奥菜恵が声優として参加した日本初の3DフルCGアニメ35mm作品。日本のCGアニメもここまで来たか、もう『トイ・ストーリー』の時代は終わったぜ…と言いたいところではありますが、実際は熱意と金をかけた割に出来のよくない人形劇といった印象です。人形劇だったら『紅孔雀』とか『プリンプリン物語』を観たかったです。メカ関係はいいですね。象の鼻っぽいアームをつけたロボットなんか、ナウシカの巨神兵を思い出させる造形美があるし。その辺は実際の人形劇には表現できない世界でしょう。ですけど、人間が。なんかこう、どいつもこいつも爆笑問題・太田の表情の下に3DCG描画用のワイヤーが詰まっているような顔つきで、感情移入もくそもない。動きがやけにスローモーなのに加え、なぜかみんな歩くときムーンウォークになるし。筆者が基本的に3DCGには何の魅力も感じない(寺井ユキを除く)というのもありましょうが、他の人が観てもそんなに印象は変わらないでしょうな。深海で地下資源を掘削中にオーロラのような未知のバクテリア群が流出し人類に危機を与えるというのは、それなりに面白い状況設定だと思うので、今度は3DCGでなく人形劇で作り直してみてはどうでしょう。(高)


「運命の恋」と「恋は盲目」の美しき融合

ミュージック・フロム・アナザー・ルーム  MUSIC FROM ANOTHER ROOM

●発売元/M3●105分●2月23日発売●税抜16000円/DVD4700円●監督/チャーリー・ピーターズ●出演/ジュード・ロウ、ジェニファー・ティリー他

 物語は衝撃的な1シーンから始まる。いたいけな5歳の少年が、年増の妊婦の膣深くへ小さな手を挿入、胎児の首に巻き付いたへその緒をほどいて誕生を導くのだ。しかもこの妊婦、ハッハッと息みながら少年の瞳を見据え、ニヤニヤ不気味に微笑みかけるのである。

 普通ならこれがトラウマとなり、人格形成に暗い影を落とすところだが、この少年・ダニーは強かった。アンナと命名された赤子との結婚を誓った彼はその後成人となり、美しく成長した彼女と偶然再会し求愛。彼に惹かれながらもなかなか踏み出せないアンナ。20年越しの「運命の恋」は実るのか…。

 「運命の恋」は、表が出れば恋人に、裏が出れば他人に、というコイントスに形を変える。「恋って、隣の部屋からふと聞こえてきた音楽を、いつの間にか一緒に口ずさんでしまうようなもの」(ダニー/ロウのセリフ)という由来を持つタイトルと同様、思わせぶりなだけでどうでもいい展開が続く。

 そしてこの後、最も印象的なシーンがやってくる。盲目の姉とその恋人が熱く抱擁するのをアンナが覗くのだが、このとき、彼氏は盲目の身を体験しようと自分に目隠しをしていたのだ。決して見つからないという、禁断の果実ともいうべき覗き状況に触発され、アンナはダニーとの関係を一気に燃え上がる。二人の恋を実らせたのは運命などではなく、盲目の姉だったわけ。「運命の恋」よりもむしろ「恋は盲目」という言葉がしっくりくる映画だと見た。(高)


無理矢理『暴走特急』っぽく見せかけてなくていいのに…

逃走特急 インターシティ・エクスプレス TRAINS'N'ROSES

●発売元/K2●87分●発売中●カラー●税抜16000円/DVD4800円●出演/ヨアヒム・クロル他

 『暴走特急』然とした邦題がバリバリの鉄道アクション映画を思わせるが、実態はドイツの鉄ちゃん映画。鉄道オタクも様々だが、ここで扱われるのは時刻表マニア。指定された出発駅と目的駅から最速経路を素早く割り出すのが生き甲斐の人々だ。主人公の鉄ちゃん・ハンネスは、イタリアならACミランのザッケローニ監督、日本なら爆笑問題の田中と同列の、冴えない中年運転手。フィンランドで行われる「第1回時刻表国際競技大会」に燃える彼は、自分を一方的に解雇した上司を殴り、自ら設定の最速ルートで一路目的地へ。上司殴殺犯として刑事に追われる身とは知らずに…。オタクらしからぬ社交力で女と懇意になったり、偽札事件に巻き込まれたり、道中の諸事件を経て刑事はついにハンネスを逮捕。だが、追跡の過程で自らも時刻表の魅力にはまった刑事は粋な計らいで大会出場を許可。見事決勝に進んだハンネスだが、「最速のルートが最上とは限らない」という件の女の言葉を思い出し…。人生を満喫するには時間なんかに縛られてちゃダメなのよ的な新しくもないテーマではあるが、常に早朝のような光が漂ういかにも北欧な風景と、例外なくイイ顔をした役者の顔を眺めているうち、そうなんだよなぁと思えたりして。(高)


エリートくんたちの幸せな童貞喪失物語

アメリカン・パイ AMERICAN PIE

●発売元/ポニーキャニオン●96分●1月17日発売●税抜16000円/DVD4700円●監督/ポール・ウェイツ●出演/ジェイソン・ビッグス、クリス・クレイン他

 インターネットが好きでドジで若いのにビール腹というしか特徴がないジム、ラクロスの花形選手だが大人ぶって突然女に「しゃぶれ」と言って顰蹙を買う幼稚な一面を持つオズ、長い交際ながらまだセックスはさせてくれない恋人がいるケビン、学校の便所で一度もクソしてないのが自慢でMr.ビーンの若い頃を思わせる風貌のフィンチ。

 高校卒業を目前に控えたチェリーボーイ4人組が、夢の童貞喪失に向かって邁進する青春物語ですよ。甘酸っぱくておバカでイカくさいあの頃を描いたこの王道ハイスクール・コメディは公開時大ヒット。『スター・ウォーズ エピソード1』や『オースティン・パワーズ デラックス』を押さえて全米初登場1位をマークしたとのこと。

 誰もが通り過ぎることですからね。童貞喪失は万人が好むキラー・コンテンツでしょう。「ウン、わかるわかる、俺もあの頃こんな感じだったなぁ」なんてしばし思い出モードに突入して甘美な気持ちを味わったりして。スケベだけじゃないセンチメンタルな要素を読み取ったりして。

 でも筆者はそうはいきませんでしたわ。なんつーか、これは童貞の中でも階級が上の人たちのお話ですよ。エリート童貞。車なんて乗っちゃって。クラスメートの豪華別荘でパーティーだって。プールサイドやビリヤードルームで初セックスだって。なんだ、それ。結局4人とも無事にやっちゃうし。それもみんな相手は美人じゃん。いや、わかってますよ。映画だからね。でもなんか解せない。真の童貞、童貞の中の童貞はこうはいかないですよ。記念に学校の便所でオナニーするぐらいが関の山ですよ。もし百歩譲って万が一チャンスがきたとしても、真の童貞は緊張しすぎて勃起なんかできないんです! あと、こいつら性器に関するコンプレックスがまるでないみたいなの。どうせきっとデカいんでしょうよ。

 幸せ者のこの4人より、見栄張ってセックスしたって威張ってたんだけど最後みんなの前で事実をバラされて小便漏らすシャーマンってヤツの方が共感持てましたね。こいつは俺だ。(高)


ミーナ・スバーリMena Suvari

スバーリさんは、ズバリ言っておじさん好みなの

 『アメリカン・ビューティー』でケビン・スペーシーが惚れる美少女だった次世代スター候補のスバーリさんは、本作ではちょっとした紆余曲折の後にめでたくスポーツマンのオズと結ばれるコーラス部のヘザー。本作のようにエラを露出するヘアスタイルだと、ちょっと輪郭が横広な印象が。実生活では17歳も年上のカメラマンと結婚したそうな。ほぉ〜。

▲ジム君は、女のアソコはアップルパイのような感触と聞いてパイに己のアソコを押しつけたりします。
▲精液入りビールは勘弁〜。
▲若いって恥ずかしい…。
▲ジム君は早漏のようです。


文字通り目玉が飛び出すアメフト映画!

エニイ ギブン サンデーANY GIVEN SUNDAY

●発売元/日本ヘラルド●151分●発売中●カラー●税抜16000円/DVD4800円●監督/オリバー・ストーン●出演/アル・パチーノ、キャメロン・ディアス

 毎週日曜日のお楽しみといえば、日本人にとっては「サザエさん」と相場が決まっているが、アメリカ人にとってのそれは絶対にアメフトの試合でなければならんのですたい! という気概を伝えたいはずの一編。

 アル・パチーノはプロアメフトチームのベテランヘッドコーチ。チームを亡父から譲り受けた美人オーナーにキャメロン・ディアス。「無駄に生きるな、熱く死ね。それがフットボールだ」とかすれ声で熱弁を振るう昔気質なコーチと、金のためにチーム売却も厭わないビジネス至上主義のオーナーの対立を軸に、おいぼれ名選手と無名の新人選手、コーチと選手、母と子など、対立の構図はたくさんあるが、スポーツを舞台にした人間ドラマと捉えるならばどれも中途半端な描写に終始した感じ。2時間半の臨場感溢れるMTVといった雰囲気が強い。まぁ、オリバー・ストーンとしてはそれで本望なんだろうが、だったら実際のアメフトの試合を見てた方がよかったなぁ、という気がしないでもない。というか、する。

 主食=生肉と推測される大男たちの肉と肉が激しくぶつかり合い、血と汗が飛び交うのは当然としても、あまりの激しさに選手の目玉さえ飛び出してしまうとはさすがに推測できず。顔から離れた目玉が地面にぺちゃっと落ちちゃって。落ちた目玉をポリ袋にしまう医療チームの仕事ぶりは実に手際がよく、「ヘイ、別にこんなの珍しくもないぜジャップ」とでも言わんばかり。いやぁ、さすがにアメリカですなぁ。

 もっと如実にアメリカが感じられたのが、オーナーが試合後のロッカールームを訪れるシーン。選手が着替えているのに平気でキャメロンが入室するのだが、ここでモロに映る全裸の黒人選手のイチモツが実にアメリカなのだ。つまりは巨大。当然弛緩しているのだが、残念ながら筆者の勃起時よりも格段に巨大。しかもキャメロン、その選手に接近して腹のすぐ前で握手するわけ。そんで堂々とイチモツを一瞥して「ワ〜オ」って感じでニヤッとするわけ。い、いやらしいよ、キミ〜! (高)

元アメフト選手という設定にしては小さすぎだけど…

アル・パチーノAL PACINO 

長年存在感で勝負してきたオッサンの前にはさすがのキャメロンも歯が立たなかった模様。あの顔と声で「死を恐れずに一歩を進め」と言われたらやっぱ進んじゃうかも…と思わせる気配濃厚だが、少し目の下がふくらみすぎなのはマイナスか。そこがセクシーという声もあるが、率直に言えばまぶたが二つあるよう。ふと井上順に似てきたと思う瞬間もあり。

▲アメフトのルールを知らなくても楽しめる。反面、ルールを知っててもそれほど楽しさは増えなさそう。

▼新人QBはゲロで有名に。
▼キャメロンは永作博美似?
▼現役プロ選手も多数出演。


「ヴァイラス」って言った方がちょっとかっこいいもんね…

ヴァイラスX THIRTS

●発売元/マクザム●86分●12月6日発売●税抜16000円/DVD4700円●監督/ビル・ノートン

 水道水を飲んだ市民が異常なノドの乾きを訴えてはどんどん死んでいくという非常事態が勃発するも、浄水場職員の活躍で救われるというお話。水というのは生命体なら誰もが摂取する命の母なわけで、その水に危険な寄生虫が紛れ込んだりしたらヤバいことになるぞっていうのはまさにその通り。蛇口をひねれば安全な水が出てくる環境に慣れた人類に警鐘を鳴らす社会派テイストの一編にも、やりようによってはできそうなところだが、監督はあえてその道を選ばず。浄水場の不備という問題となかなか死なない新種の寄生虫の相関関係が今一つ見えにくい展開のせいもあるが、一番の敗因はもさもさっとした主演男優。あまりに緊迫感のない容貌のおかげで全体に実に他愛のないのほほん感が漂ってしまいましたとさ。なお、一部B級ファンに話題を呼んだ、電磁波が人を襲う映画『ヴァイラス』とはまるで無関係。邦題決定時の苦労がしのばれる。(高)

▼リリースには細菌兵器とあるけど…。


元美人女優松坂慶子、妖怪として大復活!

さくや 妖怪伝  SAKUYA YOUKAI-DEN

●発売元/WHV●88分●11月10日発売●カラー●税抜00000円/DVD1500円●監督/原口智生●出演/安藤希、松坂慶子、藤岡弘、嶋田久作、丹波哲郎ほか

 一時期のチャイドルブームを牽引した安藤希が、妖怪討伐士・さくやとして、化け猫、女郎蜘蛛、怨霊武者、大河童といった妖怪を退治してゆく時代劇。刀が妖怪を斬るごとにさくやの命の残量が減るという悲劇的な設定、さくや自身が倒した大河童の子を弟として随行させるという人間ドラマ、多彩なキャスト陣、洋ものとは一線を画す醤油味ベースの和風特撮と、それなりに魅力を備えていることは認めたい。

 が、肝心のヒロイン・安藤が今一つチャーミングさに欠ける。キリッとした顔立ちは役に合っているが、表情にバリエーションがない。目に精気がない。無理してるけど売れないハードロック系女性ボーカルのイメージ。もっとこう、滅法強いけどたまにふっと女のサガとか艶とか業が垣間みえる…みたいな工夫が欲しかった。逆に後半の見せ場付近では、油断すると顔が根岸季衣になってしまうという意外かつ致命的な失態も披露。少々残念だ。

 それに比べ輝きを放ったのは、さくやに同行する弟を演じた子役・山内秀一。あの「虹色定期便」で主役を張ったという彼は文句なしにキュート。ざんばら頭に皿を載せた河童というハンデがあるにも関わらず安藤よりずっと女っぽい色香を放っているのだ。この子にはずっと陰毛が生えてほしくないと思わせる何かがある。かつて美少年と騒がれた黒田勇樹が図らずもバカ殿にしか見えないちょんまげ姿で出てくるのとは対照的に明るい未来を感じさせる山内くんだ。

 この山内くんよりもさらにまばゆい輝きで安藤を食ったのが、妖怪どもの大将である巨大土蜘蛛を演じた松坂慶子。ビジュアル系かつ歌舞伎チックな大仰メイクによって見事な化け物に変身。これが実に秀逸な出来で、こいつになら食われてもいいと思えたほど。紅白歌合戦の小林幸子に対抗できるのは松坂しかいないだろう。現実では日清のラーメン屋さんとして美人女優の名を完全に捨てた彼女だが、厚化粧がハマる時代劇ではまだまだイケることを証明した。マジで妖怪かも。(高)

なんだか18歳にしてすでに老成しちゃってるような…

安藤希 NOZOMI ANDO 

ヤマハ、タカラ、明治乳業などのCMで人気を得た元チャイドル。本作が初の主演映画。『ガメラ』に続き、和風特撮がお好きなようで。いつも眠たそうな目にはちょっと斉藤由貴感が漂ってないすか。


素敵なパリジェンヌといえどミュージカルでは滑稽なだけ

ジャンヌと素敵な男の子 JEANNE ET LE GARCON FORMIDABLE

●発売元/アルシネテラン●98分●発売中●税抜16000円●カラー●R18指定

 タモリがよく言うように、ミュージカルってなんかマヌケで恥ずかしいですよね。いきなり歌い出していきなり素に戻るあの居心地の悪さは、常識的な日本人には到底受け入れられないものでしょう。で、そんなミュージカルを、洒脱で知られるフランス人がやるとどうなるか。意外にすごく洗練された感じで映るのかなぁと思いきや、やっぱりかなりマヌケで恥ずかしかったですわ、という映画。

 主演はヴィルジニー・ルドワイヤン。『ザ・ビーチ』でディカプリオの心を奪うセクシーな恋人を演じた人ですが、本作ではあまりセクシーじゃないです。本人の色気がどうのというよりはミュージカル仕立てからくる当然の弊害と言えるでしょう。次々に男をとっかえてセックス三昧の日々を送るうちに、やっと運命の人と思える男と出会うが、ジャン・アレジをもっと中東風味で煮込んだような顔の彼がエイズに感染して入院、自分から逃げるように退院して死んじゃって、あぁ呆然。結局、ヤリまくってばかりじゃいかんということでしょう。「瀕死の恋人を愛では救えない」という重いテーマが、「指は10本、ペニスは1本がいい」と歌うライトで滑稽なミュージカル仕立てとバランスをとるためだけに担ぎ出されたような一編です。(高)


魔境のジャングルでカイヤのボディを見せられてもなあ…

インアマゾン  AMAZON

●発売元/シネマファスト●94分●10月5日発売●カラー●税抜16000円/DVD4700円

 アマゾン奥地に墜落した飛行機の生存者6名が繰り広げるサバイバル・パニック・アドベンチャー。なのだが、生存者以上に監督がパニックを起こしたらしく、「彼らの運命はいったいどうなる?」といった緊迫感は皆無だ。最もスリリングと言えたのは、最後にスタッフロールが流れ出した瞬間。「エッ、これで終わり?」というやり場のない思いに動悸が激しくなることは必至。観る者を右往左往させ、魔境からの出口が見つからずに右往左往する生存者が味わったような絶望気分を供するという意味では非常によくできた、出口のない映画だと言える。肌露出サービスを忘れないカイヤ似のスチュワーデス、額に「キ」印を書き込まれた異常に老け顔の少年など、登場人物はそれなりに魅力的な点がなきにしもあらずだが、せっかく人跡未踏の秘境が舞台なのに、出てくる猛獣がちっこい黒ブタだけというのはいかがなものか。…やっぱダメでしょう。(高)

▲半裸でもOKとは軟弱なジャングルで。  


ノースリーブ以外に見どころがないサイコ・スリラーだ!

隣人は闇に微笑む THE PERFECT TENANT

●発売元/大栄●92分●10月13日発売●税抜16000円●カラー●出演/リンダ・パール

 今年の夏は特に腕をモロ出しにして街を闊歩する女子が多かった気がしません? なんか、いい時代を生きてますよねぇ我々…ってな個人的感慨はおいといて、年増にしては奇跡的にノースリーブが似合うと断言できる女優さんが主人公を務めた、とても最高とは言えないサイコ・スリラーです…。邦題は『隣人は静かに笑う』を意識したことが見え見え。普通に見えた隣人が実は邪悪な殺人者だった、というよくある設定です。少女にセクハラした父親が告発されて自殺。20年後、精神病院から出てきた息子が、成人した少女宅の隣にやってきて復讐を狙うも、返り討ちにあって死去してめでたしめでたしと。以上です。冒頭から字数稼ぎしているのが見え見えですが、ズバリ言って他に書くことナッシングです。92分間観賞した結果、筆者がいいと思ったのは主人公のノースリーブ姿だけでした。たぶん誰が観てもそうだと思います。無論監督も含む。(高)

▲犯人の服には袖があります。ホッ。


フェラチオの指示に男らしいアメリカンスピリットを見よ

レストラン RESTAURANT

●発売元/ファインアーツ●108分●発売中●税抜16000円●監督/エリック・ブロス

 レストランで働きながら歌手や脚本家や俳優といった夢を追う若者群像を描いた青春ドラマ。ヒッキーこと宇多田ヒカルが敬愛するローリン・ヒルも出演ということで、結構ヒキは強いかも。ただ、筆者のようにそっち系の事情に疎い人だと、もう一人登場する黒人女性歌手の方がローリンだと思って「こんなに泉ピン子に似てたっけな」と訝しく感じる恐れはあり。青春映画らしく「10年後、君はどこにいるかな?」のような正統派の文句が多いが、「(性器を)なめてもくれない男と結婚するとはな」といったエロ本読者向けのセリフにも富む。特に素晴らしいのは、街娼にフェラチオさせる際の「上は長く、脇は短くな」という的確な指示。発言者がジェームズ・ディーン似なこともあいまって、憧れの念を強く持った。夢よりもむしろ人種差別とヤク中に焦点が当たっている点、想像で言えばリアルなアメリカを鋭く描き出すのに成功している。(高)

▲黒人女性への愛と差別に悩む主人公


ホンダのCM女優のカツラビデオが完成

氷の接吻 EYE OF THE BEHOLDER

●発売元/SPE●105分●発売中●カラー●税抜16000円.DVD4700円●監督/ステファン・エリオット●出演/ユアン・マクレガー、アシュレイ・ジャッド

 「ホンダフル・ライフ!」と能天気さを発揮したホンダのCMで筆者にも顔はおなじみだったアシュレイ・ジャッドと、子鹿のような瞳が母性本能をくすぐるらしいユアン・マクレガーが共演したサスペンス・スリラー。連続殺人鬼の女を秘密諜報部員の男が追ううちに魅力の虜になるストーリーが、現実的というよりは妄想的に描かれる。

 「奥様は魔女」ライクな設定と顔に占める耳のデカさと素晴らしい脚線美が印象的なあのCMを見た限りでは、駆け出しの若手アイドルが日本で荒稼ぎしているのだろうぐらいに思っていたのだが、アシュレイさん、実はもう若手とは言えない域。勿論美人だが、男を次々手玉にとる魔性の女との設定上ヌードや濡れ場もある本作では「ホントにあのCMの本人?」と疑念を抱くことしばしば。結構着痩せするタイプかも。

 対して、川平慈英チックな風貌に定評あるユアンさん演じるは、人づき合いが苦手なパソコンおたくで、妻子に逃げられた衝撃から立ち直れない諜報部員。温度感知センサーを外から設置して室内の男女のセックスを確認するなど、必要以上にハイテクメカを駆使するが、公衆の面前で堂々と極秘ファイルを閲覧するといった秘密諜報部員にあるまじき軽率さは目立ち気味だ。

 サンフランシスコ、デスバレー、シカゴ、アラスカ…。アメリカを縦横に移動しながら、アシュレイさんはカツラと化粧で千変万化。恐らく監督はアメリカ各地をバックにアシュレイさんの様々な美貌クリップをこそ撮りたかったんだろう、と思える本作の最大の見せ場は、得意のピーピングメカでアシュレイさんの入浴を感知したユアンさんが、隣の部屋の浴室で隣人を想像しながら壁に頬摺りして恍惚とした表情を浮かべるシーン。ストーカーならではの倒錯感がよく出ており、全編を通して最も苦笑できる名場面となった。

 最後、アシュレイさんはアラスカで古めの車を運転して事故る。これがエアバッグを装備したホンダ車だったら命は助かったのでは…と唇を噛む人は多いはず。LIFE(命)IS HONDA。(高)

注目! アシュレイ・ジャッドAshley Judd

この人、5年ぐらい前なら最高に美しかったのでは

ホンダCMの若々しいイメージとは裏腹に、脂ののりきった32歳。そのクールでセクシーな美貌から「第二のシャロン・ストーン」と呼ばれたことも。本作では化粧とカツラに力が注がれているが、化粧がはげて血だらけになったラストシーンの彼女が最も美しく映った。

▲邦題には『氷の微笑』への便乗魂が窺える。原題のEYEはユアン演じる諜報部員のコードネームでもある。
▲美女を追う仕事っていいよね
▲バレンチノほかが衣装を提供
▲ユアンって結構ロンパリ気味


もしもピアノが弾けたなら…←× もしも電車に乗っていたら…←○

スライディング・ドア SLIDING DOORS

●発売元/パイオニアLDC●99分●税抜16000円/DVD2980円●出演/グウィネス・パルトロウ他

 勝負の世界では禁物の「たられば」がここでは命。会社をクビになった女性が帰りの電車に乗れた場合&乗れなかった場合の2通りの人生を同時進行で見せる「もしも話」だ。藤子Fマンガとかでありがちな設定じゃんと思われそうだが、その通り。誰もが一度は考える単純な着想である。ところがどっこい、これが佳作。甘甘ラブロマンスに収まらない人生のもの哀しさ&厳しさが漂う。何はともあれ主役のパルトロウが抜群。アメリカ人だが「北欧」って感じ。「人は巨乳のみにて生くるにあらず」という認識を持たざるを得ないクールスリムビューティー感が白眉。ネオ国粋主義を標榜する筆者に「白人こそ真の人間なり」という誤った差別意識が芽生えたほど。序盤の「男社会で長居してペニスが生えると困る」でもたげた予感が、中盤の「昼は仕事、夜は家で彼にフェラサービス」で確信へと変わった。彼女は貧乳系白人女性界で一際輝く巨星だ。(高)

●↑99年3月号掲載分


梨本サンも保証した盗撮界リアルドラマ

パパラッチ Paparazzi

●発売元/K2●111分●税抜16000円●監督/アラン・ベルベリアン●出演/パトリック・ティムシット、ヴァンサン・ランドン他

 豪邸に住む有名ジャーナリストの密会を建設中のビル現場から、有名レーサーの極秘リハビリを医師に変装した白衣の隙間から、有名ボクサーの船上エロ行為を対岸の草むらから…。スキャンダルを嗅ぎつけ、手段を選ばずスクープ写真を狙うことで有名人からゴキブリ扱いされる一方、野次馬根性の一般視聴者からは支持されるカメラマンたち。ダイアナの事故死で一躍クローズアップされた彼らパパラッチの実態をリアルに描いたフランス映画だ。

 コメディーとされており、パッケージもそんな印象だが、内容は結構重い。リアルな描写ゆえか、必然的にパパラッチという存在の危うさや切なさがぐぐっと引き立つ。彼らほどではなくても他人をネタにする職業の人は結構多いわけで、これをみて笑えるのは生粋の野次馬根性者に限られるはずだ。

 仕事をサボってサッカー観戦している写真が雑誌に掲載されたせいで会社をクビになったさえない中年男・フランク(ティムシット)が抗議をしようと出版社に乗り込むが、百戦錬磨のパパラッチ・ミシェル(ランドン)に出会って自分もその世界に…という「ミイラ取りがミイラに」型のストーリー。変装やスターのゴミ漁りは茶飯事、スクープのためなら知り合いも裏切る一流パパラッチの仕事ぶりを前にすると、付け焼き刃の道徳心など出る幕なし。

 巨大なズームレンズをかまえてクールに標的を狙う姿はさしずめゴルゴ13。殺し屋と違って直接人を傷つけはしないが、間接的には被写体をスポイルする自分の仕事に嫌気がさしてくるミシェルと、一介の地味な警備員だったのにミシャルに影響されていつしかパパラッチ業にはまるフランクの対比は実に効果的。最後、二人の顔がそれまでと全くの別人のように見えたのは演出力と演技力の勝利って感じだ。

 ただ、スクープ写真を撮るためのハウトゥー披露には熱が入っているが、パパラッチにも当然あるはずの使命感ややりがいがあまり見えてこないのは残念。もともとそんなものがあったらできない仕事ってことか。…クールね。(高)

■パトリック・ティムシットPATRICK TIMSIT パンチョ伊東と高木ブーを足してイラン人に変換したようなルックスが特徴(ヅラは不使用)。有名なコメディー俳優(らしい)。本作中で見せたヘンなダンスシーンにその片鱗がうかがえる。ルイ14世統治下のパリを描いた映画「女優マルキーズ」では、当時の喜劇俳優グロ・ルネを演じている。ちなみにこれはあのソフィー・マルソー(!)の夫役。
●↑99年3月号掲載分


乳離れを軸にしたアメリカ流実写版「笑ウせぇるすまん」

ボディ・クッキング −母体蘇生− BON APPETIT MAMA

●M3 Pictures●監督/ジョナサン・ワックス●出演/スティーブ・ブシェーミ他

 「ボディ・クッキング」と聞けばつい「オ、女体盛り?」と色めき立つのが益荒男の礼儀だが、当然それはお門違い。副題の通り死んだ母親を蘇らせるホラーコメディーである。

 母の死で落ち込むマザコンな主人公を、その名も「ハッピーピープル社」のセールスマンが訪れ、千ドルで母の命を買えと押しの強い営業。詳細不明の技術を駆使して蘇生させるが、生き返った母親は冷蔵庫に入ったりゴキブリを食べたりと奇行の連続。ついにチェーンソー殺人まで犯し、息子もたまらず墓に埋め直す…という話。

 金で蘇ったのはあくまでも「母体」であって「母親」ではないという点がどうやら重要。死人は返らないんだから息子は早く乳離れして生を謳歌せよ、それが一番の供養だ、みたいなテーマを描きつつ、実は物心二元論や脳死問題も射程に入っているのかも(違うかも)。単なる「もしも話」を人間本質の深みへと結びつけるアプローチは、いわばアメリカ&実写版「笑ウせぇるすまん」。あれほどブレイクはしないと思うが。

 唯一「笑ウせぇるすまん」に勝っているのは、主人公の家の隣にいる美女の存在。気弱な男を誘惑する西洋女性っぽいセクシーさを存分にふりまいている。ただ、意外にも巨乳ではない。これも乳離れの意?(高)

●↑99年2月号掲載分


京唄子はサマンサを越せるか?

ルーシー・ショー VOL.1 The Lucy Show

●発売元/東芝EMI●90分●税込2940円●発売中●出演/ルシル・ボール、ゲイル・ゴードン、ジョン・ウェイン他

 パルコのCM起用等で去年再注目されたサマンサの「奥様は魔女」と同様、観客の爆笑レスポンスを多用する形式のアメリカ有名TVドタバタコメディーシリーズ(3編収録)。毎回有名ゲストを招く構成で、この巻にはジョン・ウェインも登場する豪華さ。番組の当時の隆盛ぶりがうかがえる。

 サマンサは魔女で主婦だったが、ルーシーは人間で独身で銀行副頭取の秘書。がさつな感じは室井滋を思わせ、何かとギャーギャー騒ぐ様は京唄子を思わせ、光をよく反射しそうな顔の白さは鈴木その子を思わせる。間違いなく女性よりも男性が嫌いそうなタイプと言えるだが、老女に変装した姿の方が通常よりずっと若々しく見えるという離れ業の披露には正直に嘆息をもらすべきだ。

 プロの「笑い屋」と思われる中年女性の爆笑音声は当時のTVコメディに小気味よいテンポを生み出した名脇役だが、ここでは爆笑とオリジナル英語セリフの音量レベルが大きすぎて、日本語吹き替えがよく聞きとれないのがどうにも残念。勿論、同時通訳を聞き分ける練習にはうってつけの教材だ。(高)


●↑99年2月号掲載分


傑作の予感は漂うスタイリッシュな犯罪映画

ファイヤーワークス This world,then the FIREWORKS

●発売元/東映ビデオ●100分●税抜00000円●2月12日発売●監督/マイケル・オブロウィッツ●出演/ビリー・ゼーン、ジーナ・ガーション、シェリル・リー他

 あのタランティーノやあのキングも絶賛したというジム・トンプスンの原作を、あの「タイタニック」であのディカプリオの恋敵を演じたビリー・ゼーンや、あの「ツイン・ピークス」のあのローラ・パーマー役で一世を風靡したシェリル・リー他が演じる。と、「あの」を6行で6回も使ったことから伝わるかもしれないが、結構イケてる要素の多い一作だ。オープニングのグラフィックや画面全体から漂うニュアンスもなんとなく上質。スタイリッシュと言って過言ではない。

 が、鑑賞後の印象はあまり強くない。「もしや傑作では」という当初の予感とは裏腹に、鑑賞後に残ったのは「むしろ原作の方が傑作では」という実感だ(読んだことないが)。そこには、筆者がスタイリッシュとは無縁の人間だというもっともな理由とともに、シェリル・リーがシンディ・ローパーor老魔女に見えて今一つ話に集中できなかったというもっともでない理由もつけ加えておきたい。

 話としては、幼少時に父親が愛人の夫を射殺するのを目撃してトラウマを抱える双子の兄妹が、お堅い婦人警官の屋敷を詐欺的に手に入れようとするというもの。兄は象皮病の妻子を持つ新聞記者あがりの詐欺師で、妹は富豪の前夫と慰謝料でもめつつ水兵専門に商売する娼婦。しかも二人は近親相姦の関係というかなりの強者(そして母親はエリマキトカゲ似で、ひいき目に見ても久本雅美似)。これじゃ最初から勝負は決まってるようなものと見せつつ実はあながちそうでもない展開が見どころか。そう考えるとリーの老魔女っぽさも効いてくるのだが。

 その他の見どころとしては、食料品を非課税にして腸の運動に累進課税しようと兄が突発的に訴える税制改革案、その名も「便秘の豊饒」。ちなみに「ファイヤーワークス」には花火のほか「才気のひらめき」「感情の激発」という意味もある。やはりスタイリッシュだ。(高)

▲「あの」タランティーノが「キャラクターの真実を描き切る点が凄い!」と絶賛したらしいっすよ。原作者を。

●↑99年1月号掲載分


子供には楽しめない世紀末パニック虚編

ディープ・ハザード MEMORIAL DAY

●発売元/IMPACT●94分●税抜15800円●発売中●監督/ワース・キーター●出演/ジェフ・スピークスマン、ブルース・ウェイツ、スティファニー・ニズニック他

 謎のテロリスト集団(その名もRED5)が衛星レーザー砲タロンで原子力潜水艦やスペースシャトルや宇宙ステーションを爆破して世界に宣戦布告するが、一味の洗脳が解けたヒーローが美しいヒロインと力を合わせて数々の困難を乗り越えて戦った結果、地球を救いました、めでたしめでたし、というお話。

 とここまで読んだだけで充分推測できるように、これは夢ある大人のメルヘン映画。「大人の」といってもそれは「大人が観て楽しめる」という意味ではなく、大人向けに大人が作って大人たちが活躍するという意味なのがポイント。まあ、これでギャハハと笑える人は器の大きな「大人」だと言える、という意味でもいいが。一方、子供なら楽しめるのかというとそんなことはないのもまたポイント。現代っ子は目が肥えてますからね。

 何事にも泰然と構えられる大人ではない普通の大人にとっては、とにかく観ていて「なにやってんだ、キミらは?」とつっこみたくなることの連続。勧善懲悪ものの王道を踏まえてか、大して有能でもない主人公の無理矢理な洗脳スカウティングなど、悪の一味のやることなすこと全てが自ら失敗を狙っている感じたっぷり。でも、バルタン星人やプロフェッサー・ギルの方がもうちょっとちゃんと考えて行動していたと思うぞ。

 設定や展開やセットのショボさに目くじらをたてるのは大人げないと思える大人の鑑賞者はキャスティングの妙を味わおう。宇宙猿人ゴリのイメージか、悪の一味の二人にはどちらもサル顔の役者があてられているのだが、チンパンジーとオラウータンに細かく顔をわけているのがポイントだ。一方の主人公はゴルフの丸山を西洋化した感じ。顔だけでなく身のこなしの重さまで、鑑賞者の期待に充分こたえてくれる。自分から会いに行っておいて「オレと一緒にいるとキミの身が危ない」と女に告げる時の真顔っぷりなど、子供には理解できない魅力を見いだすことが可能。そのためにも鑑賞者は「大人」でなければならないのだ。(高)

▲主人公と敵の首領がいちいちシェイクスピアを引用したがるのもやはり大人向け映画の証しと言えるだろう。
●↑99年1月号掲載分


終末ブームを見込んだ戦略的な邦題づけ

グランド・クロス ICE

●発売元/プライム・ウェイブ●90分●税抜16、000円●発売中●●監督/ジャン・デ・セゴンザック●出演/グラント・ショー、エバ・ラルー、ウド・キアー 他

 グランド・クロスとは惑星が地球を中心に十字架状に並ぶ現象のこと。だが本編中、この現象に言及したセリフはどうやら出てこない。ノストラダムスの予言では1999年7月に空から恐怖の大王が降ってくるとされ、今年は世紀末ブームの再燃が期待される、というあたりをおそらく見込んだ戦略的な邦題付けだ。

 狙い通り世紀末ファンにヒットした暁には担当者の功績を称えるべきだが、内容を端的に示す意味では原題の「ICE」の方を称えるべき。太陽黒点の異常膨張で地球が氷河期に突入という話のため、一番目立つのは雪氷なのだ。一応人間の主人公は刑事で、政府の避難用潜水艦を天文学者(故・景山民夫似)と目指すというストーリーはあるが、どの人間にもほぼ魅力がない。しいていえば刑事の恋人は胸がデカいが、本当の主人公は人間の都市機能を麻痺させ、市民をパニックに陥らせ、大統領の飛行機を墜落させ…と大活躍した雪氷だと言えるだろう。寒い冬には雪氷が活躍する映画が観たいね、という人にはおあつらえむきの一本。

 ただ、やりたい放題の活躍を見せる雪氷も、演技力は大したものではない。人の髪についたときとか、質感表現の演技があまり上手とは言えないのだ。触ってもいかにも溶けなさそうな場面も目立つ。雪国の視聴者には「このヘボ役者め」と思われるかも。やはり邦題も「ICE」の方がクールだったことは確かだ。(高)

●↑98年12月号掲載分


射殺犯本人をも凌ぐイヤ〜な顔での好演

ベルサーチマーダー THE VERSACE MURDER

●発売元/グランドスラム●93分●税抜16、000円●発売中●監督/メナハム・ゴーラン●出演/フランコ・ネロ、スティーブン・バウアー、シャーン・パデュー他

 世界的に有名なファッション・デザイナーであり、日本のワイドショー的にはサッチーこと野村沙知代が夫に着せたがることでも知られていたジャンニ・ベルサーチ。この映画は、彼が97年にアンドリュー・クナナンというゲイの連続殺人犯に射殺された事件をFBIの捜査資料をもとに映像化したものであり、それ以上でもそれ以下でもそれ未満でもない。

 交友があると勝手に思いこんでいたベルサーチから冷たくあしらわれて逆ギレしたクナナンが、自分のゲイ仲間や行きずりの人々を殺した末にベルサーチを射殺し、最後は自分の頭を打ち抜くまでをなぞるトーンは、全編を通して淡々。記録映画を思わせるこの淡々さが、かえってこの犯人の救いのないしょうもなさを伝えることに成功している感じ。

 ナイナイの岡村を最も悪い方向にフィリピン化した顔を持つ犯人役のショーン・パデューは、その意味では実に好演。実際のクナナンが兼ね備えていたと思われる虚栄心やうぬぼれや甘えや怠慢や身勝手さといった要素を増幅して表現している感あり。単に顔の面だけ見れば、ネット上で公開されているクナナン本人の写真よりもオエオエ度が高い。こいつのせいでゲイ全体のイメージが下がってしまうのではないかと心配になるほど素晴らしくイヤな感じの出来だったと思う。

 蛇足だが、ベルサーチ役のフランコ・ネロは結構本物と似ている。「あれっ、ベルサーチってまーだー生きてたの?」と言いたくなるほどかも。合掌。(高)
●↑98年12月号掲載分


オヤッ、ミック・ジャガーがスカートを?

 乱気流 グランドコントロール GROUND CONTROL

●発売元/タキ●97分●税抜16、000円/DVD3800円●発売中●カラー●監督/リチャード・ハワード●出演/キーファー・サザーランド、ケリー・マクギリス 他

 乱気流&グランドコントロール。ほほう身長2mを超す登場人物たちが活躍するパニック映画か、意味なくスゴそう…と英語にうるさい人なら思いがちだが、「GRAND=大型の」ではなく「GROUND=地上の」。じゃあ「グラウンド」と書けば。ってな言葉尻情報はさておき。

 以前旅客機を墜落させた管制官が、悪夢に悩みながらも緊急事態を救う映画。管制モニタ上に展開される航空機の軌跡は複雑でまるで蜘蛛の巣。こんなとこにもインターネットが張り巡らされていた

かとの勘違いも可能なほど。ケチって部品を数十年も替えないなどあまりにひどい描かれ方で実際の空港からの苦情が気になるが、アメリカ全土で1日20万便をたった3000人で管理するという航空管制官の大変さはひしと伝わってくる。

 だがそれ以上にひしひし伝わってくるのは、管制塔を仕切る女性チーフ(ケリー・マクギリス)の顔のおっかなさ。口紅をつけたミック・ジャガーがスカートをはいて外人女性特有のオーバーな表情を繰り返す様子を想像できれば充分。疲労困憊の管制官たちを般若の形相で睡魔から救う意味では優秀な上司と言えるが、管制官でない我々には刺激が強すぎるかもしれない。他のキャストでは、トム・クルーズを約6割下品にした感じの男性エリート管制官、普段はそうでもないが眼鏡をかけると魅力が80%UP(従来比)する新米女性管制官に大好感。(高)

●↑98年11月号掲載分


中年男コンビのサバイバルごっこツアー

ザ・ワイルド THE EDGE

●発売元/20世紀FOXホームエンタテイメント●118分●税抜17、000円/DVD2500円●12月4日発売●監督/リー・タマホリ●出演/アンソニー・ホプキンス、アレック・ボールドウィン他

 博識で人間不信の億万長者(ホプキンス)と、その妻と肉体関係があるらしいカメラマン(ボールドウィン)らの乗った自家用機が、渡り鳥の大群と衝突し墜落、九死に一生を得た一行が極寒の原生林からの脱出を図るまでを描いた映画。

 「彼らに残された装備はマッチ7本とナイフ1本だけ」の「観る者の神経を激しくしめつける緊迫のサスペンス・アクション」という狙いとは裏腹に、実際の画面からは「中年男性たちののどかなサバイバルごっこツアー」といった趣がほんわかと漂う。厳しい条件が揃っている割に、悲愴感がまるでなし。極寒の地なのに全身びしょ濡れになってもすぐ乾くし、あんまり腹へらないみたいだし、巨大人食い熊を木の棒1本で倒しちゃうし、監督が裏で一行のツアーをかなりサポートしているみたいなのでそれも当然か。

 息づまるサスペンスでなくても、妻をめぐる二人の人間模様をきちんと描いてみるやり方もあったと思うが、それもなし。妻関係の葛藤以外はホプキンスが常に落ちつき払っていて弱みのないできた人物のため、危機を通して成長していく醍醐味みたいなものがないのだった。

 かといって見どころがないかというとそんなこともない。人間界のアカデミー賞俳優・ホプキンスと「熊界のジョン・ウェイン」ことバート(ギャラは1日2万ドル)の迫真の演技合戦は、確かに本作の見どころの一つ。熊界で公開されれば人気は間違いなしかも。あ、無惨に殺される役だからそれもやはり無理か。(高)
●↑98年11月号掲載分


黒木瞳が裸体でなくドーナツでイカせる

SADA 戯作・阿部定の生涯

●発売元/松竹●132分●税抜16、000円/DVD5800円●発売中●カラー●監督/大林宣彦●出演/黒木瞳、片岡鶴太郎、椎名桔平、嶋田久作、ベンガル、小林桂樹 他

 男のイチモツ斬りで有名な阿部定と「失楽園」の黒木瞳。「失楽園」はもともと阿部定事件をモチーフにしているわけだし、むんむんのエロス大作を期待させるにふさわしい組み合わせには、心と股間の両方がピクッときた男子も多かろう。

 しかし今作では、黒木の素敵な裸体はほとんど見られない。なんと乳頭露出さえもない。「戯作」という副題が示すように、全編を通して流れるのはエロスとはほど遠いはずのコミカルトーン。ドタバタ感を導入し、大林監督は意図的にエロエロ感をはぎとったのだ。そのためか、やはり公開時の評判は今一つだったらしい。「駄作だ」「幼稚な演出だ」「大林は大人の女の色香を描けない」などなど。原作者が試写を観てあまりの変わりように激怒したとも言われた。確かに滑稽さだけが際立つ駄シーンも存在する。主題歌の題名が「定」にかけた「サバダバダ」というのも、ちょっとな…という感じ。

 だが、これは駄作ではない。ピクッとくる名場面・名セリフが多いのだ。仰向けの男に乗った黒木が「首を絞めるとイチモツがピクッとして大きくなっていい」みたいなことをのたまうシーン、パトロンが射精後に「へんな話だが、おまえはちょっとクサイ」とこぼすシーン、「おい、定、そのドーナツで輪投げして遊ばねぇか。俺(のいきり立つイチモツ)が上手に受けとめてやらぁ」という、わが国の輪投げ史に残るような益荒男感あふるる名セリフなどなど。中でも一番ピクッ、どころかビクビクンときたのは、黒木の指フェラ。男が不在で淋しくてたまらず、ドーナツの穴に入れた中指をしゃぶる。無論クローズアイ。それまで何度も繰り返されたドーナツ食い場面がここで活きるとは。この瞬間が永遠に続いてほしいと願いながら筆者が素早くパンツをおろしたことは正直に告白しておく。美人なら顔だけでイケた高校生時代のたぎる情熱を思い出させてくれる一作だ。滑稽を下敷きにした性描写もあり得ることを果敢に提示した一作だ。ベルリン映画祭国際批評家賞はダテじゃない。(高)

▲黒木瞳様は14歳の役まで熱演。さすがに無理はあるが、なんだか新しいタイプの興奮を感じた。女優だね。

●↑98年10月号掲載分


「アクションに次ぐアクション!」…その通り!

デストラクション 制御不能 THE RAGE

●発売元/日本ヘラルド●95分●税抜16、000円●発売中●監督/シドニー・J・フューリー●出演/ロイ・シャイダー、ゲイリー・ビジー 他

 友達が女の子を紹介してくれるとします。その時「そうねぇ、藤原紀香と稲森いずみと田中麗奈を足して本上まなみで割ったようなタイプかな」などと言われたとしたら、あまり期待しない方がいいですね。友達が全体像を言わずに無理して部分部分を拾う他なかった事情を推して知るべしです。そこですかさず映画の話ですが、資料には『「羊たちの沈黙」と「セブン」に「Xファイル」と「ミレニアム」を足して「リーサル・ウェポン」とセガールの「沈黙」シリーズで割ったような作品だ!』とありました。と書くとイヤミな感じでしょうか。すいません。

 これは極悪連続猟奇殺人グループをFBIのはみだしエージェントがやっつけるアクション映画です。主役の男性はロレンツォ・ラマス。帽子を被るとトラボルタに似ています。タバコ好きですがかなりのポイ捨て派なので緒形拳が見たら怒るでしょう。ヒロインの心理分析官はクリスティン・クローク。上唇も下唇も肉厚です。もっと下の唇がどうかは不明です(←反省済み)。この2人の活躍をロイ・シャイダー演じる悪徳上司が邪魔しつつ話は進行しますが、監督の興味はアクションにのみ注がれていますから、話など気にせず「息をのむカーチェイス!」を口を開けて眺めることです。AVでからみだけ見て他は早送りする人にはお似合いの一本かも。と書くとイヤミな感じでしょうか。すいません。(高)
●↑98年10月号掲載分


「愛の水中花」感のない松坂慶子なんて…

卓球温泉

●発売元/大映●110分●税抜16、000円●10月17日発売●カラー●監督/山川元●出演/松坂慶子、牧瀬里穂、蟹江敬三、ベンガル、山中聡 他

 中年サラリーマンと社交ダンスのかけあわせでヒットした「Shall weダンス?」のプロデュースチームが、今度は中年主婦と卓球のかけあわせによるハートウォーミング・コメディーに挑戦。柳の下のドジョウを狙うその志やよしだが、鑑賞後の言葉はせいぜい「ふ〜ん」。

 まず、松坂慶子演じる主人公に魅力がない。日常に疑問を抱いて家出、さびれた温泉で卓球がらみの町おこしに奮闘する主婦という役柄だが、代表的美人女優だったはずの松坂に華がない。「愛の水中花」の頃のクールかつシャープかつ妖艶な魅力はどこに? 45歳だし仕方ないともいえるが、イヤ〜ンなのは本人がその辺に気づいてないこと。「私は美人女優……そりゃ歳とって太ったけどまだまだイケてるわ」と信じているためか、華がないというだけに収まらぬもの悲しさが漂うのだ。

 この悲哀は共演の牧瀬里穂にも通じる。昔は鋭利なアゴさえかわいかったのに、今ではさしずめ「キーキー言って皆から嫌われる学級委員(趣味は告げ口)」。松坂に家出を促すラジオDJを演じているが好感が持てるのは「南かなえのゴロゴロアフタヌーン」という番組名だけ。内田有紀とともに今後の身の振りが気になる元美少女である。

 だが今一つ感を女優陣に押しつけるのは酷。一番の敗因は卓球をコミュニケーション手段としか捉えなかった姿勢にあると言いたい。最大の山場たる卓球大会シーン。松坂は夫、牧瀬は幼なじみの男と、ラリーをどれだけ続けられるかのゲームを行うが、両チーム譲らず、感激した実力者の一声により結局両者優勝の判定。万雷の拍手の中、皆うちとけて幕。打ち合うピンポン玉は無論、人生上の心のやりとりの意。一方がミスしたら一方がカバーするのが真の夫婦だと言わんばかりの展開にはうんざり感もひとしお。この決着のつけ方は、勝利を目指して努力する全ての競技者に対する侮辱ではないか。勝利へのこだわりがなければいくら「温泉卓球」だって盛り上がらない。「卓球温泉」も盛り上がらない。(高)

▲昔は名前からして既に美女っぽかった松坂慶子。特訓してあの天才卓球少女・愛ちゃんとも対戦したそうです。

●↑98年9月号掲載分


マジ果汁100%の「サーフィン無宿」諢

イン・ゴッズ・ハンズ IN GODS HANDS

●発売元/SPE●97分●税抜4、980円/DVD3800円●10月3日発売●監督/ザルマン・キング●出演/パトリック・シェーン・ドリアン、マット・ジョージ 他 

 地球人の5人に1人は中国人であるというとてつもなさを活かした伝説があります。12億だかの人口を誇る中国人が海岸に集結して一斉にジャンプすると、着地の衝撃ですげーデカい津波が日本まで押し寄せてくる、というものです。普通の人であれば微笑して軽く流すような駄ジョークです。でも、このジョークを真顔で受け取り、中国政府に12億人ジャンプの実現を迫っちゃう人が万が一いるとしたら、それはビッグウェイブの誘惑にとりつかれたサーファーに違いないでしょう……これは、そんな無理矢理な想像だって似合わなくもない、非常に深遠な感じのするサーフィン映画です。

 「ビッグ・ウェンズデー」をはじめとする今までのサーフィン映画と違うのは、本物のトップ・サーファーが演じていること。つまりスタントなし。全て出演者自らの本生ライディングというアプローチが売り。世界選手権3位の実績を持つ主演のシェーン・ドリアンさんほか、見る人が見れば凄いメンツが揃っているはずです。サーフィンに縁がなくたって、凄い人がやってると思えば何となく凄いものに見えるという効果が期待できます。

 内容は「サーフィン無宿」。世界最高のサーファーである主人公が、伝説のビッグ・ウェイブを求めて仲間と世界を渡り歩くお話。途中、仲間が現地の女に声をかけて軟禁されたり熱病に倒れたりした後、ハワイでついに伝説の大波がやってきて、仲間の一人が波にやられて溺死して、それでも主人公はまた波を求めて旅に出る……マジ度100%です。全編を通して少しでも滑稽味のある場面といえば、軟禁された主人公たちが脱走する時に一人が白ブリーフ姿になる程度。あとはひたすら「神の手に抱かれる」という題に沿った求道者の世界。そういうのはどうも身体がむずがゆくなって苦手だという俗人は「孫の手に掻かれ」ていた方がいいかもしれません。背中を。(高)

▲X-JAPANのYOSHIKIが曲を提供しているらしいがどれがその曲なのかは素人耳には全く見当がつかず。

●↑98年9月号掲載分


この犬っぷりなら犬将軍・吉宗も納得!

ディディエ DIDIER

●発売元/日本ヘラルド●104分●税抜16、000円●発売中●監督・脚本・主演/アラン・シャバ●出演/ジャン=ピエール・バクリ、エリエット君 他

 犬が好きな人やサッカーが好きな人やフランスが好きな人には勿論だが、自分は犬の真似をするのが大好きだという珍しいタイプの人にもぜひお勧めしたい好編。ディディエというラブラドール・レトリバーが突如人間に変身、人間技とは思えない運動能力を活かしてプロサッカーチームの試合に出場し活躍するという、なんとも夢のあるストーリーだ。

 ジャック・ニコルソンとプラティニをモーフィングしたような飼い主の顔もなかなかよいし、フランスリーグの名門パリ・サンジェルマン(元鹿島・レオナルドも在籍していた)の選手がいっぱい出演しているのも見どころの一つだが、なんといっても白眉なのはアラン・シャバというおっさんの犬真似。もうこれだけで一見の価値あり。さすがにこの人、前世では犬だったと言われるだけのことはあり、なんとなくピョコピョコしたり、小刻みに方向転換したり、飼い主には少し卑屈とも言える目つきをしたり、犬畜生ならではの動き表現は完璧だ。犬将軍・徳川吉宗が見たら「生類憐れみの令」を適用することは間違いない。

 W杯以降も中田の移籍などでサッカーへの注目が意外にとぎれない昨今、結構この映画は話題になるとみた。なってほしい。そうすると続編製作の期待も出てくるが、そのときはぜひ野人・岡野を共演させてほしい。「犬より速い」と言われる日本人と犬そのものであるディディエとの対決がぜひ見たい。(高)

●↑98年9月号掲載分


驚愕のエロ忍法「乳波動」&祐子の鼻の穴

くノ一忍法帖 柳生外伝 江戸花地獄編

●発売元/キングレコード●74分●税抜15、800円●発売中●監督・脚本・出演/小沢仁志●出演/森山祐子、田口トモロヲ、白鳥靖代、麿赤兒 他

 男の精気を吸い取る「忍法簡潤らし」、交わると死んでも離れなくなる「忍法天女貝」など、よくわからないがスゴそうなことでは右に出る者のないエロ忍法の数々を生んできた好シリーズの最新作。過去には墨田ユキや水野美紀も出演していたが、今作の主役は「ゼイラム」で有名な森山祐子。出色だ。とても「お笑いマンガ道場」育ちとは思えぬクール・ビューティーぶり。特に日本人離れした鼻穴。極太明朝の読点「、」の形をしているのだ。黒に赤タスキの忍者衣裳(なぜか寺沢武一デザイン)との相性も抜群。忍者姿など今では滑稽千万なはずだが、彼女の忍者姿だけは真剣な意味で現代にも通じると思った。イメクラとか。公表ウェスト68の数字は少し気になるが。

 その森山が見せたのは残念ながら髪を回すだけの「忍法髪吹雪」。今作では、性交直後の処女の血を刀に塗り振って飛ばすと血が刀と同様に敵を切る「忍法紅孔雀」の鉄臭い感じもいいが、両乳首から発した青い稲光が敵味方問わず襲う「忍法乳波動」が一番か。開闢以来初と思われる「乳」と「波動」の出会いにはただ感激。大股開きの局部から何か発射する大忍法(次作「会津雪地獄編」に収録)が見られなかったのは残念だが……。

 忘れがちな見どころとしては坂本龍一の濡れ場。といっても本人が出ているのではなく、小沢仁志が白塗りで盲人に扮した時の顔がそっくりというだけ。(高)

●↑98年8月号掲載分


伊藤つかさは出ない近未来少女人形物語

F・I・S・H  〜世紀末人形伝説〜 THE FIGURE SHADE DOLLS

●発売元/ヒロ・インターナショナル●74分●税抜14、800円/DVD3230円●発売中●監督/関顕嗣●出演/高橋美夕紀、三輪明日美、川村千里、金沢文子、藤木直人(本作で初主演!)

 グラビアアイドルたちがこぞってダッチワイフの真似をする、男にとってはグッとくる設定の映画。南極2号のように無表情で口をポカンと開けているといやらしくて嬉しいが、舞台は21世紀。少女人形(by伊藤つかさ)も進化し、遺伝子工学を駆使して開発された援助交際人形F.I.S.H.は口を自由に閉じることができる。「オ客サマノオ名前ヲ登録シテクダサイ」と抑揚のないロボ声でしゃべるし、乳をもむと「アン。アン。アン」とドラえもんの歌風に声をあげるのだ。

 実際には生きている(←当然)女優たちがいぢらしく無機的な芝居をしているのを見るのは実に楽しい。「本当は乳もまれて気持ちいいんだろうが!」的な男らしい(?)サディスティックな気分になれる。特にいいのはアングラなクラブで行われるF.I.S.H.のオークション場面。次々と人形が登場、意味なくパソコンを叩く男たちが落札していく。トイレに置かれた人形(大原かおり!)が手洗いセッケンを置くための台だったり、九州女仕立ての女王様人形が「とってもよかとよ」と自己紹介したりと小技もよし。

 ただ、そういった擬物的世界観が楽しめるのも序盤まで。中盤以降は、人間の心を持っているらしい主人公F.I.S.H.と人形改造屋の素敵な男とのヒューマン・ドラマに。特に謎解きもせず余韻を含ませて終わるぐらいなら、あえてストーリー性を排除し、名作「家畜人ヤプー」のように世界観提示を徹底するアプローチもあったのではないかと思う。

 各少女人形の性能を比べると、新人で主演を務めた高橋は魔性の女になる前の葉月里緒菜といしだ壱成の若チンにしゃぶりつく前のとよた真帆を重ねた感じでよいが人形としての性能は未知。庵野「ラブ&ポップ」で主演した三輪は姉と共演で楽しそうだがこれも性能説明はなし。金沢はかわいいので欲しいが「オハヨ」の言い方にメカっぽい工夫が足りず。乳が雪見だいふくを思わせる川村は一人で揉まれ役を担当して最もけなげ。なので自分が買うなら川村人形かな。(高)

▲この人形は空気を入れなくても使えるので便利です。そういや坂木優子も少し出てたけど顔質が落ちた気が。
●↑98年8月号掲載分


岡田真澄は出ないミスコン・サスペンス

妬む女 CROWNED AND DANGEROUS

●発売元/SPE●88分●税抜11、800円●発売中●カラー●監督/クリストファー・レイチ●出演/ヤスミン・ブリース、ジル・クレイバーグ 他

 舞台はミスコン。常連美女とその母の嫉妬がライバルの殺人を引き起こすまでを描いたサスペンス。日本でミスコンといえば「性の商品化」や「司会・岡田真澄」が連想されがちだが、この作品は両者にはあえてふれていない。まあ当然か。

 主人公のダニエルは、乳がでかい。ブルネットだが髪のボリュームもゴージャス。10年後にはデブ化が確実視されるタイプであることを差し引けばなかなかの美女(その意味では、母親役がガリガリ系女優なのはキャスティングに難あり)。

 主人公をおさえてミスの座を奪うシャーナはシャープな顔の金髪女。本作ではミス・マディソン郡に選ばれるが、ミス・アゴワレに選ばれても当然の見事なアゴの持ち主だ。彼女は本作のジャケットでもなぜか主役を差し置きメイン扱い(写真参照)。パッケージまで一貫したトータル演出なのかもしれないが、スタッフにアゴワレ好きがいるだけなのかも。

 全体にTV番組的な匂いがする本作だが、話は結構おもしろい。殺人後のミス授賞式を頭に持ってきた構成も入りやすい。ミス役の水着女が多数登場するので、ガイジン好きの多くの日本男性には難なく受け入れられる一本だ。ただ、シャーナが水上スキーで砂浜に激突しケガをするシーンは失笑。衝撃で砂に全身の跡がつくのだが、その跡が非常にドリフっぽいのだ。これはこのミスコンドラマに紛れ込んだ唯一のミス(失敗)かも!(高)

●↑98年7月号掲載分


主題歌はジ・アルフィー! …うれしい?

銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー

●発売元/東映ビデオ●55分●税抜11、000円/DVD4500円●8月7日レンタル開始●監督/宇田鋼之介●原作・総設定/松本零士●声/野沢雅子 池田昌子 他

 17年ぶりに復活した999。かつては大ブームを巻き起こしたはずだが本作の劇場公開時はほぼ話題にならず。宣伝が地味だったせいもあるが観れば内容的にも納得。これは1999年(スリーナイン)に公開される次回作の予告版なのだ。そこ理解しとかないとドッチラケは確実。

 地球で反乱分子として処刑されかけた鉄郎が999に救出され、メーテルと新しい旅に出る。本作がなぞるのはここまで。これだけ。「1999年 宇宙の中心へ」という思わせぶりなキメゼリフを残して999は発車してしまいましたとさ。

 おそらくファンが観れば、メーテルが前よりタレ目だ、ハーロックの声が変わったのはいただけない、 999のあの煙描写はファンへの冒涜だ、などとそれなりに楽しめ、次回作への期待心がいやがおうにも高まる仕組みなのかもしれない。

 しかし筆者のような一般素人が楽しめる仕掛けは数少ない。鉄郎の超ロンゲスタイルと自省のない正義感に閉口、新キャラ・ミーくんの目の違和感に苦笑、敵の聖母騎士・ヘルマザリアが鉄郎に吐いたセリフ「その顔と体格では大したことはできまい」の「顔と体格」を「ちんぽ」に置き換えて生じるマゾヒスティックな陶酔。無理矢理見繕ってこの程度だろう。

 たぶん今作はファンだけのために作られた一本。一般を無視したこの作品作りが影響してか配給収入は予定を大幅に下回り、大切な次回作製作にも黄信号が灯っているらしい。この失態にはさすがのメーテルもあきれはじメーテル?(高) 

●↑98年7月号掲載分


ディズニーらしいにぶい切れ味のコメディー

ロケットマン ROCKETMAN

●発売元/ブエナビスタ●94分●税抜16、000円●発売中●監督/スチュアート・ジラード●出演/ハーランド・ウィリアムズ ジェシカ・ランディ 他

 常識レスの宇宙オタクが火星飛行船に乗り込むはめになり、持ち前の非常識さからハプニングを起こしつつ帰還するまでを、切れ味にぶいディズニーらしいコメディータッチで描いた一本。それ以上でも以下でもないが、ペプシが2001年宇宙への旅を景品にする時代になったことを思えば、実に時勢を捉えた作品だ。

 時勢には乗ったかもしれないが、笑いの勢いには乗れず。全体にぬるい印象が漂うのは主人公フレッドのバカっぷりと所属組織NASAの描き方が今一つ中途半端なためだろう。この作品で笑わせるためには両者間に大きなギャップがなければならないが、最終的にフレッドの活躍が乗組員を助ける話のためか、彼はバカに徹しきれない。一方、宇宙酔いに滅法弱い人間を補欠要員にしておくなど、 NASAは結構マヌケ。これではいかん。

 キャストでは紅一点役(ジェシカ・ランディ)が不満。笑えないコメディーであれば女優をセクシーにして最大限の映画魅力を確保してほしいのが人情だが(ジェシカという名には個人的にセクシー臭を感じるが)、残念なことに魅力は微小。サル語を話す設定のため、ワイルドな顔をして奇声を発するシーンはあるが、いかんせんそれだけ。セクシーと思うにはかなりの想像力が必要だった。そのかわり彼女の助手役を演じたレイヴンちゃんは全編を通して人間離れした名演技を披露。秀逸なチンパンジーだ。(高)
●↑98年7月号掲載分


ピリッとしなかったハイテク・スパイス

トラブルボーダー MASTERMINDS

●発売元/SPE●104分●税抜15、300円●発売中●監督/ロジャー・クリスチャン●出演/ビンセント・カーセイサー、パトリック・スチュワート他

 あるところに天才ハッカー少年・オジーがいました。色白で美形でIZAMよりは百倍以上女装が似合いそうな彼ですが、家庭ではひねくれぼうず。父の後妻&その連れ子である義妹と折り合いがついてないのです(後妻はまだ30代中盤でまぁ美人でいつもミニスカなのでひねくれる理由に説得力なし)。ひねくれが高じて小学校時代には化学室を爆破したこともあるようです。物騒ですね。しかしより物騒なことが起こります。義妹が通う小学校が重兵器で武装したテロリストに占拠されるのです。犯人は金持ちの子弟を人質に身代金を要求、校内に紛れ込んだオジーは抜きん出たパソコン知識を武器に一人きりの抵抗を始めます…。

 とくれば何となく見えてくるように、ベースは「ダイ・ハード」と「ホーム・アローン」。ここに現代らしくパソコンというハイテク・スパイスをふりかけたのでしょう。でも「ホーム・アローン」よりは主人公が大粒、「ダイ・ハード」よりはアクションが小粒。オジーの家庭は「雨降って地固まる」ですが、作品は「二兎を追う者一兎を得ず」ってところです。

 大事なスパイスのはずのパソコンも実は全然効いてません。犯人たちがコンピュータを使いこなしてないのが原因です。コンピュータ制御しているドアロックが開かないと銃で破壊しちゃうぐらいです。表計算ソフトなのに電卓で計算して入力しているおバカ部長って感じ。隠し部屋とか抜け道がたくさんある古い校舎をコンピュータで完全制御しようってのがそもそも無理でした。「主人公に花を持たせるためやむなくパソコンを持ち込んだんだな」と、最後は肥えだめに落ちる犯人に同情を寄せてしまうことでしょう。

 プールに爆薬をしかけたりボイラー室に細工したり感電装置を作ったりと途中からは主人公も天才ハッカー少年というよりは「なんでも屋」的な印象の方が強くなります。犬猿の仲だった校長とこの事件で和解できたオジーは、自分の能力を活かし、この小学校の用務員さんとして活躍するべきだと思いました。(高)

▲主人公は菅野美穂似(似てない?そうすか)。みるからに無能顔の警部、継母の膝上12cmミニスカも見どころ。 

●↑98年6月号掲載分 


ゴールドRとリアルゴールドは違います

新・湾岸ミッドナイト�

●発売元/アネック●75分●税抜16、000円●発売中●カラー●監督/花堂純次●出演/並川孝太、三瀬真美子、本田博太郎、ウガンダ・トラ 他

 車好きなら黙っててもみるだろうが、それ以外の奴はいくら大声で叫んでもまずみないだろう作品。走り屋やその予備軍やそのOBからは絶大な支持を誇る楠みちはる作同名マンガ映像版の新作だ。

 湾岸に君臨する「ゴールドR」こと金色のGTRに主人公・公平が挑んだところ、事故って同乗の親友が大怪我。自責の念から車を手放したが、死んだ父の愛車と同じS30Z(フェアレディの初期型)と偶然出会い、名チューナーのおっさんとも出会い、再び走りの道へ…(あとはパート�をみないとわからない)。

 車関係以外での見どころを何とかして挙げれば、女、景色、鉄道、博太郎の4つ。女はシェイプUPガールズの三瀬。健康やら運動やらの特徴を捨ててなりふりかまわぬ生き残りモードに突入した女のやる気を味わいたい(怪我した親友の妹役が一貫したへなちょこ演技で三瀬を食ってしまった感もあるが)。景色は「アクアライン初の空撮」をうたった夜景。もぐらなどでは百年かかっても見られない人類と鳥と羽つき昆虫だけの景色を味わいたい。鉄道は東武東上線。S30Zを追って東武練馬から上板橋にかけての線路沿いを主人公が走るシーンを板橋区民になったつもりで喜ばしく味わいたい。博太郎は言わずもがなの本田博太郎。主人公が死んだ父を回想するシーンでモノクロ映像だけなので、赤とか青とか色を識別できないお犬様にもお勧めだ。(高)

●↑98年6月号掲載分 


2種類の害虫を駆除する連続殺人犯の話

ザ・クリーナー DOUBLE TAP

●発売元/キング●91分●税抜15、800円●発売中●カラー●監督/グレッグ・ヤイタンス●出演/ヘザー・ロックレア、スティーブン・レイ 他

 自分の娘が麻薬組織にレイプされた挙げ句殺されたら、その様子を克明に映したビデオが送られてきたら、そのビデオに「パパ、助けて」と泣き叫ぶ娘の最後の姿が映ってたらどうする? そんな重苦しい問題を考えざるを得ない、陽気な気分にはなれないこと受け合いの一本だ。

 主人公は麻薬組織の摘発のために潜入捜査を試みるFBIの金髪女捜査官キャサリン。捜査を進めるうち、麻薬組織のボスたちが頭に2発の弾痕(原題の由来?)を残して殺され、現場にはウサギの足が置かれるという不気味な事件が続発。一人の害虫駆除業の男が殺し屋の容疑者としてあがり、おとりとして近づいたキャサリンも事件に巻き込まれていく(タイトルは害虫駆除と悪者駆除をかけた邦題の方がわかりやすいのでは)。

 敵が捕らえた主人公を理由なく逃がしたために後でみすみす死ぬはめになったり、害虫駆除業の男が説明なしにいきなり不動産業についていたりとストーリー展開には疑問がわく部分もあるが、映像的には連続したシーンを細切れにして意図的に不連続に見せる手法が多用されており、なんとはなしに効果的。

 全編を通じて重苦しいため、誰もそんなことは期待してないと思うが、燃えるようなセックスシーンはない。一場面だけキャサリンより格段コケティッシュな商売女(推測)のボディーが楽しめる覗き見シーンがあるが、一番燃えるシーンは火だるまになった男が殴りかかってくるところだとつけ加えておく。(高)
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結構失敗が多い1ミリアイのスナイパー

ゴルゴ13〜QUEEN BEE〜 GOLGO 13 〜QUEEN BEE〜

●発売元/BMGジャパン●60分●税抜12、800円/DVD5800円●発売中●カラー●原作/さいとう・たかを●監督/出崎統●声/玄田哲章 勝生真沙子 有本欽隆他

 身長182cm体重80kg。血液型A型。国籍・年齢・本名など全て不明。常人には真似しがたい特異な形状の眉、目の下に必ず入る不気味な斜め線、思いきり見開いても推定1ミリの隙間しかないシャープすぎる目。人となりからすればどう転んでも好人物とは言えないゴルゴだが、仕事の発注はユ68年の連載開始以来途切れたことがない。それは勿論、スナイパーとしての能力がズバ抜けて優秀だから、のはずである。しかし、連載30周年記念で15年ぶりに作られたアニメである今作での彼に、その優秀さは感じられない。なにせ彼は今回ターゲットの狙撃に6回も失敗しているのだ。

 依頼主はアメリカ合衆国次期大統領候補ロバートの腹心で腹黒男でもあるトーマス。標的は麻薬シンジケート「クイーン・ビー」のリーダーでセクシー女でもあるソニア(尻の張りはいま一つ)。ロバートを脅迫する彼女を殺せという依頼を「戻ってこいパンプキン・ジョー」というまぬけな暗号で受諾したゴルゴだが、その後は失敗の連続。ソニアとバーで知り合ってホテルでセックス(正常位)した後で銃を向けるが撃てず失敗、ソニアの船を襲撃するが部下が楯となり失敗(計2回)、ソニアの本拠に潜入し物見台から狙うが別勢力の襲撃に邪魔されて撃てず失敗、戦闘中背後から照準を合わせるが自分が別の奴に狙われて撃てず失敗、ロバートを狙うソニアをわざわざ飛行船から狙うが決心がつかず失敗。プロの殺し屋とは思えぬていたらくだ。特に6回目の失敗では父娘の情にほだされて撃てないという致命的な情けなさ。原作では冷徹無比な狙撃遂行が取り柄なのに。

 愛砲・アーマライトM16は湿り気味だが、ゴルゴの下半身に付属のマグナムは爆発力を誇示。ジャングルでのセックスでは百戦錬磨女のソニアがあまりの快感で思わず宇宙空間を漂ってしまったほどだ。シンジケートの統率を図る意味でソニアが部下の男を日替わりで呼びつけてセックスする際のフェラチオ場面(推定2ストローク)とともに、本編の見どころの一つである。(高)

●↑98年5月号掲載分


過疎の村もいいなぁと思わせるセーラー服

萌の朱雀 MOE NO SUZAKU

●発売元/バンダイビジュアル●95分●税抜16、000円●発売中●カラー●監督・脚本/河瀬直美●撮影/田村正毅●出演/國村隼 尾野真千子 他

 去年のカンヌ映画祭で新人監督賞を受賞し、一躍注目を集めた作品。当時27歳の監督の作風はひたすらしっとり、ひとえに静謐、一途に地味。出演するプロ俳優は一人だけで他は全て現地の人というキャスト、過疎化が進む山村に住む家族が離散してゆく様子を淡々と描き出すストーリーと、眠たい映画と判断したくなる要素を多分に含む作品。頭がしゃんとした状態で観ないと危険だ。そうして観れば内容は大方の予想に違わない。家族っていったい何なのぅ、といった辺りを美しい映像で考えさせてくれるはずだ。

 特筆すべきは一家の娘みちる(尾野)。純真でけなげでいじらしくていとおしくて美形。いいなぁ若いって、と溜息付きで素直に思える。顔をすりすりしたくなるタイプだ。過疎の山村にセーラー服という組み合わせが抜群に映えている。都会の雑踏で見るセーラー服のような猥雑さ、安っぽさ、はすっぱな感じがまるでない。セーラー服はかくあるべし。みちるが一緒ならという条件付きではあるが、田舎の山村っていいなぁと素直に思える。

 説明が極度に少ないし、方言ということもあってかセリフが聞き取れないしで、人物の設定などがわかりにくいのが難点。よほどのキレ者でないと家族構成がどうなってるのかは理解できないだろう。字幕で観たに違いないカンヌ人から高い評価を受けたのはそういった意味でも理解できる。題はすかしすぎの感あり。(高)

●↑98年5月号掲載分 


ウーピーって毎日鼻毛切ってんのかな?

ゴースト オブ ミシシッピー GHOST OF MISSISSIPPI

●発売元/東和ビデオ●130分●税抜16、000円●6月5日発売●監督/ロブ・ライナー●出演/アレック・ボールドウィン ウーピー・ゴールドバーグ

 黒人公民権運動家が殺されます。差別論者の白人が捕まりますが、不平等な陪審員判決で審理無効となり釈放されます。30年後、被害者の妻が立ち上がります。共鳴した若き検事補が堂々と闘います。南部という土地柄、30年という時間柄、2人は苦労しますが、最後は勝利します。

 人種問題ものであり主人公が検事であることを考えれば、判決が有罪と出るのは当然。こういう映画の場合、興味は法廷の進行につきます。主人公がどんな論陣を張るのか、相手はどう返すのか、といった辺りを楽しみたい性質の映画です。

 ですが、あまり楽しめませんね。相手の2人の弁護士が全然キレ者じゃないんです。顔も冴えないし言うことも平板。しかも、彼らが唯一突っ込んで攻勢を見せたのは、それまで一度も存在に触れられてなかった、ストーリー上「ぽっと出」の証人だけ。無論実際問題としては差別論者が勝っては困りますが、このドキドキ感のなさでは、とても法廷サスペンスとは言えません。2時間10分観た感想が「結局陪審制がおかしいんじゃないの」という、テーマとずれたものになってしまうのもいたしかたないのでは。

 そうした目で観れば、ジェームズ・ウッズの差別野郎ぶりもなるほど素敵ですが、見どころはやはりウーピー(の鼻穴)。大した芝居はせずともなんとなく「なるほど、そうだよな」と、顔中心の深いところに吸い込まれるように思ってしまうものです。いつか北島御大と意味もなく深い感じの競演を見たいものです。(高)
●↑98年5月号掲載分


せんだみつお似の神父様が悪魔と闘う

ビースト 悪魔の黙示録 EL DLA DELA BESTA

●発売元/東映ビデオ●105分●税抜16、000円●発売中●カラー●監督/アレックス・デ・ラ・イグレシア●出演/アレックス・ベリアルトゥア 他

 しかるべき人が観れば、「スペインのタランティーノ」と言われる監督の傑作世紀末アクション・ホラーであり、オカルト趣味を下敷きにしたキッチュなコメディ映画となろう。が、しかるべからざる人が観た場合、これはどういうつもりで観たらいいのか迷う、観る者を不安にさせてやまない映画となろう。

 主役は神父。パートナーは「ヘビーだ」が口癖のヘビメタ男とTVのインチキ予言者。この3人が、処女の血を飲んだりするいかにもな儀式によって悪魔を実感し、反キリスト誕生を阻止して人類を救済せんと奮闘する。

 そんな辛気なストーリーに、ウサギを包丁で潰す場面の克明な表現、繰り返されるテロ描写、一貫して重い人物の表情などがからまるもんだから、「これ、シリアス?」という雰囲気が形成されるわけだ(キリスト教に疎いと自負がある人は特にそう思う筈)。

 一方で、冴えない神父がせんだみつお似だったり、予言者がジャンボマックス似だったり、悪魔を呼ぶ儀式でキノコでなくLSDを使ったりするもんだから、「やっぱギャグ?」ともなるわけだ。

 その辺のミックスによる不安感の増大こそが、この映画への興味を最後までもたせる要因と言えるかも。ただ、終盤に現れる悪魔を観れば、これがシリアス映画でないことは明白となる。「ひょうきん族」のハリボテ並なのである。いわばブラックデビルの質感なのである。(高)

●↑98年4月号掲載分


カタツムリの抱擁シーンに勃起&感涙

ミクロコスモス MICROCOSMOS

●発売元/パイオニアLDC●73分●税抜16、000円/DVD4700円●発売中●カラー●監督・撮影/クロード・ニュリザニー マリー・プレンヌー●字幕/椎名誠

 これは、すばらしい映画ではありません。すんんんんんんばらしい映画です。マジです。もう他はどうでもいいって感じです。これを観ないで自殺する奴らはみんなどうしようもないドバカですね。

 端的に言えば、ただの昆虫映画です。それが抜群にいいんです。数十種類の昆虫を超アップで撮影したのを集めただけです。西村雅彦のお笑いナレーション入りバージョンもあるようですが、字幕版をみた者には言葉はむしろ不要です。

 あまりに圧倒的な映像に、思わず笑いました。涙も出たし震えもきた。正直いうと勃起もしちゃった。大人の私はその程度でしたが、ちょっと敏感なこどもだったら、泡吹いて倒れるかもしれません。ピカチュウよりも刺激的だと思う。

 ブラインドのように一斉に角度を変える蜘蛛の巣、グミみたいに弾力に溢れた夜露とからむアリ、進路の取り方に神秘を感じさせる毛虫、と見る者をミクロコスモスに引き込む映像の連続また連続。圧巻はカタツムリ同士の抱擁。2匹がぬめぬめした淫猥なボディーをふにふになすりあって強く密着し合いながら、最後ガクッと傾くの。もう完全にイッちゃってるんです。すごいです。モザイク入れなくていいの?って感じですよ。ミクロイドSとかドラえもんのスモールライトとかコロポックルとかじゃなくても、ミクロの世界に入っていけるんです!

 てなこと書いても、不毛。言葉はまるで無力です。ビデオで観て聞いて、自分が生物であることを誇りましょう。(高)

●↑98年4月号掲載分


元SMAP・森くんは将来柴俊夫に

陽炎4 KAGERO 4

●発売元/バンダイビジュアル●90分●税抜16、000円●発売中●カラー●監督/井上昭●出演/高島礼子 柴俊夫 本田博太郎 中村敦夫 沢木麻美

 背中に菩薩の入れ墨を背負った女胴師・不知火おりんが活躍する陽炎シリーズの第4弾。高島礼子になってからは3作目となる。もちろん時代は昭和初期。四国は土佐が舞台。組を渡り歩いて抗争に巻き込まれた流れ者おりん、大いに立ち回る、といういつもながらの展開だ。

 今回の見どころはおおむね三つ。

 一つ目は、オートレーサー・森且行が老けるとこういう顔になるに違いないと思わせる柴俊夫(失楽園でも活躍)と高島のからみ。もちろん露出は最低限に抑制されていますが、クールなおりん様が「ああん」という顔をするだけでもよしとする度量の広さをみせましょう。

 二つ目は、「北京原人」での活躍により本誌ではアイドルと認められた感のある本田博太郎の見事な無駄死にっぷり。いったい何のために存在したのだかわからないことこの上ない役どころを例のごとく一本調子に熱演しています。

 三つ目は、賭博決戦の立会人に呼ばれたスペシャルゲスト・中村敦夫のセリフ回し。確かに口元では「ぎょーぶ」と言ってるのに存在感だけで結果的に「勝負」と聞かせるというハイテクニックを堪能できます。

 シリーズを通して漂う安心感・予定調和感は今作でも全開。のどけき春の日、ぽかぽかした縁側でせんべいでも食いながらおじいちゃんと一緒に観たい一本です。惜しむらくは、前作のあいだもものようなAV世代に訴求する女優起用がなかったこと。これにはおじいちゃんもガッカリかも。(高)
●↑98年4月号掲載分


日本男にはわからぬ人間キャラのかわいさ

ウォレスとグルミット、危機一髪!  A Close Shave

●発売元/ソニー・ミュージックエンタテインメント●31分●税抜3、689円/DVD3300円●発売中●カラー●監督/ニック・パーク●撮影/デイブ・アレックス・リデット

 町のとぼけた発明家・ウォレスと、しっかり者の犬・グルミットがあれこれなんだかんだと活躍するクレイ・アニメシリーズの第3弾。アカデミー賞のアニメーション部門で最優秀賞を2度受賞したという名シリーズだから、世間的には高い評価を受けているんだろうが、どうも素直な目では見られない気分でいっぱい。

 だってさー、かわいくないよ、これ。グルミットはまぁスヌーピーみたいでかわいいと言ってもいいけど、問題は人間キャラ。なんすかこりゃ。ハクション大魔王の壺みたいな輪郭に、とってつけたような(というか、とってつけた)丸々とデカい鼻、顔の横幅を大きくはみだした巨大な口。松本零士が描く情けない男性のずっこけ顔にちょっと近いかも。

 ま、男のウォレスはそれでもまだ許せなくもないですよ。主人公だし。でもどうしても許せないのが、ウォレスが一目惚れする毛糸屋の女主人・ウェンドレン。当然同じパーツ類を使用してるから、基本はウォレスと相似形。なんだけど、無理矢理女性化した弊害が如実です。ブサイクの極みです。一応この人、ヒロインなんでね。もう少し美人でいてくれないと困る。なんか特別な人物像が設定されてんのかと思っちゃうんですよ。わざわざヘンな髪型してるってことはこの女結構な変わり者?とか、ウォレスと同じ顔してるってことは近親相姦問題を絡ませてるの?とか、こんなにブスでおばさんってことはウォレスもしかしてゲテもの好きのフケ専なのか?とか。

 「機関車トーマス」の例もあるし、こどもはもしかしたらブキミなもの見たさという一点で好きなのかもしれませんが、気弱な大人の日本人男性はそっぽむくんじゃないすかね。いくら欽ちゃんが「私たちのふるさとは?」って問いかけても「地球です」とは照れて言えないのが日本男ですからね。ちなみに欽ちゃんは日本語吹替版ではウォレス役です。(高)

▲他にデビュー作『チーズ・ホリデー』と第2作『ペンギンに気をつけろ!』のシリーズビデオもインストアナウ。 

●↑98年3月号掲載分


# #延々続くどーでもいい男のどーでもいい議論�/FONT>

アメリカン・バッファロー AMERICAN BUFFALO

●発売元/徳間ジャパンコミュニケーションズ●87分●税抜16、800円●発売中●カラー●監督/マイケル・コレント●出演/ダスティン・ホフマン 

 常時勿体ぶった言い回し、どーでもいいことでいちいち大声でわめく、ハッタリだけで具体策は皆無、傲慢で横暴で不遜、自分を有能と勘違いできる、思った通りにならないと物に八つ当たりする、短足……それがダスティン・ホフマン。

 小人なのにボスになりたがる、緻密さのかけらもない、すぐ信念を曲げる、他人を信用してない、行動力に欠ける、デブ……それがデニス・フランツ。  そんな2人の男がアメリカン・バッファローと呼ばれる希少な硬貨を盗む計画をめぐって延々延々(中略)延々延々部屋で議論するだけだから、観ている方はもううんざり&ぐったり。気分がこうイライラクサクサモワンモワンしてくるのがわかる。もちろん議論は全て不毛&徒労。一人では何もできないくせに自分の権利と意地を主張しあうだけのどーでもいい人間が喋るのを聞くのが我慢できないほど不快だということは教えてくれる。

 そういった人間のおろかしくやりきれない部分をリアルに描きあげた見事な心理劇である、と言うことも可能だろうが、観劇後に漂う圧倒的なもやもや感の前には全ての前向きな言葉が効力を失う。場の雰囲気を役者と共有できる生の舞台だったら少し話は別なのかもしれないが。

 人間がこんなにしょうもない矮小な存在だとは言いたくない気持ちになるのは、観ている自分が一児の親だからか。(高) ●↑98年3月号掲載分


# #疲労者に限り落涙も可能なヒーロー喜劇

ご存知! ふんどし頭巾 FUNDOSHI ZUKIN
●発売元/松竹●99分●税抜15000円●2月25日発売●カラー●監督/小松隆志●企画・原作/秋元康●出演/内藤剛志 坂井真紀 菅野美穂 財津一郎

 汚職、不倫、セクハラといった現代社会の悪に立ち向かう正義の味方、それがふんどし頭巾(内藤)。小児用ブリーフをかぶり前あきから目を出す先輩・パンツマンに影響されてこの道に入った彼は、勿論頭巾をふんどしとして利用するのではない。ふんどしを頭巾として使うのである。頭巾化にあたっては「ふ」という文字をロゴ風に書き込み、古いものも一工夫で十分使えるようになるということを示唆。さすが「常に時代を的確に読み、柔軟な発想でヒットを飛ばし続ける秋元康」の企画だけあり、時代の要請たるリサイクルの視点も取り入れているのだ。そしてふんどしには赤フンでなく白フンを採用。ふんどし頭巾が赤ずきんちゃんになってしまうのを恐れたのだ。

 そんな的外れな指摘も決して不似合いでない軽映画であり、うちの2歳児が一瞥して「ヘンなの」と一喝したマヌケ映画ではあるものの、マイ眼孔から多少の塩分を含んだ透明な液体が2回発したという事実は残念だが告白せねばならない。

 一つはパンツマンが屋台で自分の対人能力のなさを語るくだり。知人と二人でいるときに「何かしゃべらなきゃ」と焦るものの結局無言で通してしまう男の悲哀がリアルに語られており、グッときた。

 もう一つは坂井真紀の主人公慰め場面。会社ではお茶くみを押しつけられてもイヤと言えず、家庭では妻子に敬語を使うという、見ててムカつくダメ社員(=ふんどし頭巾)を励ますだけだし、坂井もかわいく見えない(石井苗子の方が映りがいいぐらい)のだが、それでもほろっ。  しかしこれは勿論ふつうの人が感動できる映画ではない。無理して言うなら、自分の疲労度を計るための映画だ。こんなので涙がにじむ人はかなり日常生活に疲弊していると言えるだろう。そういう少数派はとりあえず腹いっぱいメシ食って寝るべし。そうでない多数派は、内藤がつきあいの長いハンディカムを駆使して悪に立ち向かうシーンを見てほほうとニヤつくべし。エンドロールにはしっかり入ってるよ。「協力・SONY」。(高)  ▲財津一郎の中年英語はいつ見ても「ビューーティフル」。他に蛭子能収、岸部一徳、内田春菊、寺田農も出演。 

●↑98年2月号掲載�/FONT>ェ#


#坂上忍がビジュアル系を走らせた30歳映画

30-thirty
●発売元/パイオニアLDC●89分●税抜15、000円/DVD3800円●2月21日発売●カラー●監督・原作/坂上忍●出演/HAKUEI 小島聖 阿部寛 佐藤浩市 他

 今作が初監督の坂上忍、がんばった。TVで麻雀やってるだけじゃなかった。でも一番がんばったのは主演のペニシリンのヴォーカル。「愛に・気づいてくだ・さ・い」と叫んでるだけじゃなかった。  とにかくよく走った。ラスト間際の11分45秒間は延々主人公が走るだけ。その間BGMはほとんどなし。激しい息づかいだけが響く。カメラも実直にそれを追う。走ったシーンを細切れにつなげるなんて小細工はなし。愚直に長時間実際に走らせて撮ってる感じ。手元の集計では、ランニング場面のワンカット最長は3分5秒。3分5秒も今をときめくビジュアル系が走る(しかも登り坂)のを見られるって、そうめったにないんじゃないか。

 ただ走ってるだけと言えばそれまでだが、これが実は結構いい。というかかなりいい。寝ながら見てたけど、思わず居ずまいを正した。正直に言うと「がんばれ」って叫んじゃってたね、心の中で。出だしからずっと「初監督ならではのねらいすぎ感」みたいのが漂ってるのは苦手だが、この11分45秒で救われた感強し。

 死体になった阿部寛の腹が明らかに大きく波打ってたり、役柄上かわいくないといけないはずの小島聖が全然かわいく見えなかったりもするが、もうこのランニング場面があるからなんでも許す意向。30歳という「青春」に正面から取り組んだ好編とでも言いたいところさ。「ケッ、がんばりゃそれでいいのか。30代はそれほど甘くないんだよバーロー」とひねくれる奴もいようが、そんな奴ほどハマるんじゃないか。そのいい例がおれ。(高)
●↑98年2月号掲載�/FONT>ェ#


#武田久美子の白衣あります(貝殻はなし�/FONT>

ダブルキャスト W CAST

●発売元/大映●79分●税抜16、000円●2月13日発売●カラー●監督/横井健司●原作/田中光二●出演/武田久美子 真木蔵人 井田州彦 三上剛仙 �/FONT>シ

 武田久美子と聞けばあの伝説の貝殻水着を連想する男子が多いだろうが、今作にそういう画期的な艶姿はない。凡庸な濡れ場が一度あって両乳房(乳首含む)が拝めるだけ。久美子の女医姿ってだけで興奮しなさいよね、なんたってアタシは武田久美子だからねフン、という感じ。その辺の女の矜持をエロスに昇華できる希有なベテラン鑑賞者にはお奨めだ。

 久美子は精神科医。当然白衣。連続殺人事件の捜査で知り合った刑事が実は多重人格者で実はその事件の犯人で、さらに実は行方不明だったかつての久美子の恋人。で、久美子がそいつから殺されそうになったりした後、オナニーにふける母を実の父が惨殺するのを目撃したという幼年期の悲しい経験が明らかになり、最後はそいつが父親を殺してジ・エンド。

 妻のオナニーを目撃しただけで殺してしまった父親には「そんなことで一生を棒にふるなよ」と言いたい。妻のオナニーを認めてやる一方で自分の自由オナニー権を勝ち取るような冷徹な戦略が親父にあればこんな悲劇は起こらなかったかも…と思うと胸が痛む。一方、武田久美子の声が、落ちついた女子マラソン解説で定評のある増田明美に似ていると気づいてがっくりきたおれには「ドンマイ」と言いたい。ダイナマイトなイメージに反し155cmと案外小柄な久美子と、小柄さでは有名だった明美を切り離して考えられる強さがおれにあればもっとこの作品も楽しめたかも…と思うと胸が痛む。  ボディー露出の点では平凡、多重人格者の殺人話としても平凡、サスペンスとしても平凡な今作で、一つ非凡と思えるシーンを挙げよと言われれば、犯人が女性性器を表す名詞を大声で連呼しながら腰を激しく前後させて椅子を犯そうとした場面を迷わず挙げたい。あまりのすがすがしさに打たれ、そこだけ3度繰り返し鑑賞した。自分も口に出してみた。バカらしさだけが後に残った。(高) ▲ポニーテールがよく似合った「東大生のアイドル」時代もありました。今じゃ「セクシー」が枕言葉の29歳。 

●↑98年1月号掲載�/FONT>ェ#


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